表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(旧)闇夜に踊る  作者: 東雲飛鶴
二章 相棒は、シスターベロニカ
34/134

11(挿絵あり)

挿絵(By みてみん)

「一人、喰われたか」


 その黒い生物は、上半身がカエル、下半身がサルのような姿をしていて、二本足で直立していた。大きな口の中に、人間を丸ごと突っ込んでボリボリと咀嚼している。腹のあたりから音が聞こえるから、本来の歯や顎は口の奥にあると思われる。彼の悲鳴も聞こえなかったのは、一瞬で頭部を喰われてしまったからだろう。


「マズい……これで仕留めなければ――――」


 次に喰われるのは自分だ。シスターベロニカに戦慄が走った。

 十数年前、左手、左足を生きながらにして喰われた恐怖がよみがえる。彼女はその結果、義手と義足を着けることになってしまった。もう、かつてのように異界獣と対峙することは出来ない。造りモノの手足では、現役だった頃の機敏な動きが出来ないのだ。それはすなわち、ハンターとしての死を意味している。その彼女に教団での二度目の生を与えたのが、他ならぬ勝利の存在だった。

 彼女が銃に装填したものは、主に大物に使う対異界獣用グレネード弾だ。弾頭の特殊金属が異界獣の外皮を裂き、内部で爆散して対象を破壊する。

 対異界獣戦において、通常兵器が効かないのは外皮だけ、そしてそれを破壊出来る武器は、同じ異界獣の素材を使った武器と、教団で精製される希少金属だけなのだ。


 幸いまだ化け物は、今宵のディナーを楽しんでいる。警官の腰のあたりまでカエル口の中に収まったころ、ベロニカは銃の狙いを定めた。

『サンキュー、お前はよくやった』

 そう心の中で警官に声をかけると、彼女は引き金を引いた。

 鈍い発射音と共に打ち出された弾は、食いかけの警官の足とともに化け物と、焦げたパトカーを吹き飛ばした。


「危ない!!」

 次の瞬間、勝利の呼びかけと同時にベロニカの体はふわりと宙を舞った。

 ベロニカは脇を抱きかかえられ、勝利と共にゲート脇の警備室の屋根に飛び乗った。すると目の前に強い光が瞬いた。

「うッ」ベロニカは思わず手のひらで目を覆った。

 さっきまで彼女のいた場所に、稲妻が落ちたように見える。

「ふう。間に合って良かった」安堵の表情を浮かべて勝利が言った。「上から見たらアレが帯電してたんだ。やっぱ電気を食うみたいだね」

「遅いぞ。もう二人犠牲者が出ている」

 ベロニカは口では咎めているが、さすがは我が息子だと内心褒めていた。

「ごめん、冷凍車を見た時点で気付くべきだった」

 そこまで言うと、勝利は再びベロニカを抱いて警備室の屋根から飛び降りた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ