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(旧)闇夜に踊る  作者: 東雲飛鶴
二章 相棒は、シスターベロニカ
30/134

7(挿絵あり)

挿絵(By みてみん)

【7】


「ふう、到着してしまったぞ。あいつ、どこにいるんだ?」

 変電所前まで来た勝利は、黄色いテープで封鎖されたゲートの前で周囲を伺っていた。

 複数の血の臭いがする。

 だが、嗅覚の鋭い勝利には、それらが古いものだということも分かっていた。

「……にしても、図面で見ると案外ゲートに近いな。普段は人がいない施設だから、あえて移さなかったってわけか……。ま、教団だって電気スキーな獣がいるだなんて知らなかったんだから、今回はしゃーないってことで」

 一人でぶつぶつ呟くと、彼は敷地の中に向かって合掌した。

 教団はあくまで某一神教を信仰している体でやっているだけで、実際は教団の誰もが信じてなんかいない。何故ならば、この世には神が複数存在しているのを知ってるからだ。

(……ッ!?)

 ふいに背後を車が通り過ぎた。音からすると、トラックのようだ。

(おかしい、まだ封鎖が出来ていないのか? いや、確か教会の車で来たときには警察官がいたはずだ。じゃあ、なんで……?)

 バッ、と振り向くと、冷凍車らしきトラックが遠ざかっていく。後部の荷室ドアに大きく魚の絵が描いてあった。恐らく水産関係の車なのだろう。

(まあいい、向こうで注意してもらおう。ダメならダメで運がなかったと――)


「こちら勝利、民間のトラックがそちらに行った。外に誘導してくれ」

『こちら工場前、了解しました、勝利さん。至急手配します』


 無線で連絡すると、工場で待機中のシスターから返答があった。

 勝利は武器を用意すると、ゲートの上をひらりと飛び越えて変電所の敷地内に入った。場内のマップは事前に頭に入っている。彼は迷わず被害のあった場所まで走っていった。


 耐電用スーツは日頃使っている装備よりも動きづらいのが難点だ。せめてコートの方に耐電能力でもあれば良かったのだが、ワンオフの試作品なので仕方がない。

 彼の着ている耐電用スーツは、万一のことを考えて教団開発部の研究者が個人的かつ試験的に造ったものだった。勝利はその丈夫さを買われて、日頃から開発部の人柱として研究に協力しているのだが、今回はたまたまそれが役立ったというわけだ。

 外見はというと、イマドキの黒っぽい、実写化されたアメコミヒーローでも思い浮かべれば大体似たようなものだ。撮影用衣装はラバー等を型抜きしたものが多いが、勝利の装備は本物だ。通気性に関して大きな問題を残しているが、今回こういった事例が発生した

以上、本採用に向けて一層の研究が進められるだろう。


(……で、また俺は実験台になる、と)

 勝利はため息をついた。


 彼の超人的な丈夫さ故に、マッド級研究者がひしめく教団開発部のトンデモ発明に、日常的に付き合わされるのだから、勝利が毒づくのもムリはない。彼の教団での仕事は、特級ハンターとして異界獣の駆除を行う他に、新兵器や新装備をテストするための人身御供も含まれているのだ。


「金……もらっても、いんじゃね? 俺」

 ぶつくさ言いながら、勝利は愛用の銃の安全装置を外した。

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