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(旧)闇夜に踊る  作者: 東雲飛鶴
一章 記憶にない少女
21/134

18(挿絵あり)

挿絵(By みてみん)

【18】

 遙香は困惑していた。なにせ、ハッキリと覚えてなかったんだから。

「ち……りょう? 確かに、怪我したはずなのに、気付いた時には治ってたけど……」

 当人も、あの晩腹に強いダメージを受けたところまでは覚えていた。その後のことは意識も切れ切れで、勝利に抱かれて口づけされたことしか記憶にない。

 次に意識が回復したのは、腹の風穴がふさがって痛みも消え失せた後のことだ。さすがに破れた服までは修復していなかったから、全てが夢だったとはならなかったのだが。

「キミが街中からずっと俺を追って来ているのは分かってた。そのうち見失って諦めるだろうとも思ってた。でも、まさかあの公園の奥まで女の子が踏み込んで来るとは思わなかったんだ。人気はないし、真っ暗だったし、そんなに切羽詰まってるなんて知らなかったし……。だから、ハルカさんが襲われたのは、俺にも責任がある」

 遙香は黙り込んでしまった。真相を聞いて恐くなったのだろうか。

 少しして、おとなしくソファに座ると、彼女はスカートの端を掴み、唇を噛んだ。

 沈黙が恐くて、先に口を開いたのは勝利だった。

「あ、あの……ごめん……ホントにゴメン……」

「うん……」

 二人して頭を垂れて、リビングがお通夜になってしまった。

「そ、それに俺らは予防してっけど、一般ピープルがあいつらに触れると、ひどい病気になることがあるんだ。だから、急いで薬を口移しで飲ませたんだ。……ホントだよ」

 これも真っ赤なウソだ。飲ませたものだって、本当は薬品などではない。もっとヒドイものだ。慣れないウソにウソを塗り重ね、しどろもどろになっていく。

「そう……」

「だ、だから、こないだのアレは、キスは事故。ただの医療行為、ノーカンだ。俺もお前もファーストキスを失ってなんかいないよ。お、OK?」

「俺も……って、ショウ君も初めてだったの?」ヘンに驚いている遙香。

「な、何か問題でも? お、おお俺が初めてかどうかなんて関係ない……じゃん。た、ただの医療行為なんだから。そ、それとも治療しない方がよかったの?」

 口をとんがらせて、いじけ半分、動揺半分に言う勝利。

(くそ~~、口移ししたとき焦ってたから感触とかちっとも覚えてない~~)

 ――実はくやしかった。

「ごっ……ごっ……」ハルカは目をうるうるさせて、何かヘンな事を言い出した。

「ごっ、ごっ?」小首をかしげる勝利。

「ごめんなさい!」

 遙香はいきなり立ち上がると、ローテーブルにバンッと両の手を付き頭を下げた。

「助けてくれたのか確信がなかったの! 気がついたらキミにキスされてて、でもまたすぐ気を失って……どさくさ紛れにあんな……あの、だから……ごめんなさい!」

「わ、分かったから、もうちょっと静かに謝罪して? コップ倒れるよッ」

 勝利は慌ててローテーブルからグラスを取り上げると、背後のキッチンカウンターに移した。また遙香が暴れてグラスが割れでもしたら大変だ。

「そんなんどうでもいいから! 命の恩人にホントひどいこと言ってごめん!」

 半泣きでダイナミック謝罪を続ける遙香。なんでこんなに大げさなんだろう?

「もういい、わかったってば、だから落ち着いてハルカさんッ」

 でも彼女は落ち着いてなんかくれなかった。

 ローテーブル越しに、勝利の胸に突然飛び込んできたのだ。


 その時、ハッキリ聞こえた。

 彼女はこう言った。


『また守ってくれてありがとう』と。


 ――また?


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