ばよえ~ん
なつかしいね。
まあ、私はティーンですけど、(作者)
また、憂鬱な一日の始まりだ。
ずっと城の中にいるもんだから、時間なんてものはわからない。
でも、勇者パーティが来れば、彼らは基本朝起きて夜に寝る生活をしているのだから、「今は、少なくとも朝よりは遅い時間帯なんだな」と感じることができるってもんだ。
てなわけで、今日も玉座に座って勇者たちが来るのを待つ。
貧乏ゆすりというのは、案外血流の改善、というわけではないだろうけど、健康上のメリットがあると聞いたことがあるが、僕が貧乏ゆすりをすると、城に亀裂が入ったりするので、自分の健康を見捨ててでも、そんなことを気軽にすることはできない。
すると、珍しく切羽詰まったようなストスト、という軽くて早い足音が聞こえてきた。
そして、その音が近づいてきて、ドン、という音がして扉が勢い良く開く。
ああ、なんか安心するよ。
テンプレ勇者パーティだ!!
僕は少し反動をつけながら、「いやいやいや」と言って玉座から立ち上がり、猫背の背中を無理やり引っ張って「ようこそ!」と彼らに向けて言った。
「おい!俺達は勇者だ!」
「ああ、いいねいいね!」
なんか、こういうのを求めていた気がしてくる。
そうだよ。変なのじゃなくて、普通のでいいんだよ。
「行くぞ!!」
「ああ、そうそう。って、あれ?」
なんとも言えないっちゃ、なんとも言えないんだけど、早くない?
気のせいかな?
「えいっ、ファイヤー、アイスストーム、ダイアキュート!!」
おっと。
と言いたいのだけれども、どう頑張っても魔法だけは避けようがないので、普通に食らった。なんか、熱いのと寒いのが混ざってて、熱くなったのを冷ましてくれたんだけど、まあいいか。
そして、それに合わせて勇者とサ者がこっちに走ってくる。
神官も、呪文の詠唱を始めている。
「おい、急げ急げ」
なんか、急いでるな。
「おい、急ぐなよ!!」
まあ、どっちにせよ、きっと僕と戦うには、四対一なんかより、もっとコンパクトな方がいいと思うんだよな。
と、いうわけでがら空きですよ!!
僕は神官めがけて突っ込んだ。
なんか、足にベタベタするのがあったけれども、そんなのは気にせず、僕は神官のみぞおちに拳を入れる。
「おい、効いてないぞ!」
魔法のことか?
ていうか、今更だけど、魔法使いっているのかな?魔法なんて、痛くも痒くもないですけど。
魔法使いも同じように殴る。なんか、防御魔法みたいなの使ってたけど、そんなの関係ないですから。
で、同じように勇者とサ者も倒す。
そして、僕はしゃがんで勇者に向かって「ざぁ〜こ♡ ざこざこ♡」と言った。
「で、なんで急いでるの?」
お決まりとかも無視しやがって。
もっと、魔王と勇者の問答があってもいいはずだ。
こいつらは、僕に対する怒りというものがないのか?
人の心があるのか?
え、僕はどうかって?
こんなにあるじゃないか。今だって、心配してあげてるんだから。
「いや、その、タイムアタックっていうか、」
「なんか、そういう攻撃があるの?」
時間を止めたり、そういうAVがあると聞いたことはあるけど、見たことはないんだよな。忙しくて。
「いや、そういうのじゃなくて、どれだけ早く魔王討伐できるかっていうのを競っていて、」
「え、ちょっと待ってよ、」
僕は、一旦下を向いて考えた。
「え、僕のことそんなに嫌いなの?」
勇者パーティは、ポカンとした顔で、地面に尻をついたままこちらを見上げた。
「いや、その、そんなに僕と一緒にいたくなかったってことなの?」
と僕が言うと、勇者が「いや、そうじゃなくて」と言った。
「その、どれだけ早く倒せるかに挑戦しようと思いまして、ほら、ストップウォッチも持ってきてたんですよ、」
と言って、魔法使いが僕にストップウォッチの画面を見せてきた。
今は、一分五〇秒、五一秒とメモリが動いているところだった。
「まずは、時間かかってもいいから倒すのに挑戦しなさいよ、君たち」
僕は、この若者たちを、思う存分叱ることにした。
「そもそもさ、タイムアタックってなんなの?こっちに失礼じゃないの?」
「いや、でも、時間って大切ですし、」
「また時間の話じゃん!!」
前回したばかりなのに!!
これこそ、時間の無駄だ。
「なんで、そんなに急ぐことがあるのよ。もっとさあ、ゆっくり見ても楽しめることってあると思うよ」
勇者以外の連中は、玉座やら各々の気になるところを見回しており、勇者だけが僕の説教の犠牲となっていた。
本当に、最近の若いやつは、
「ちょっと、注目!!はい、いい?大事だから一回しか言わないから」
と、あれ、「大事だから一回しか言わない」って、もしかして時間効率を求める言葉じゃないか?
これだと、僕の考えと矛盾することになってしまう。
まずい。
勇者パーティの皆さんは、どこかを見るのをやめて、まっすぐと僕の方に目線を移している。
「あ、えっと、」
さっきまで言おうとしていた言葉以外出てこない。
「まあ、あのさ、」
「・・・どうかしましたか?」
勇者が心配そうに聞いてきたけど、こっちだって若者に心配される筋合いはないわ!!
「その、今度は早く討伐してくれるの?」
僕は、彼らに問いかける。
すると、勇者が「今度は、ちゃんとやります」と答えた。
「ちょっと、ちゃんとってどういうことなの?ちゃんと早く倒すってこと?それに、ゆっくりやるのもちゃんとって言えるの?」
僕に圧倒されたみたいで、彼らは更に縮こまって「すいません」と言った。
ちょっと、怒りすぎたかな?
「まあ、その、君たちが今度早く討伐してくれるなら、その、僕も付き合うから、ちゃちゃっと済ませてよ」
勇者パーティは混乱した。
「その、それまでの過程が大事だもんな!!」
僕は彼らにそれっぽいことを言って、彼らを帰らせることにした。
えっと、まあ今日はこんなもんですかね。
よし、と。
部屋に戻ろう。
部屋に戻ると、相変わらずセバスが、今度はベッドに潜むダニを一匹一匹手でつまんでいた。
「あ、お疲れ様です」
僕はホントに小さく「お疲れ」と彼に言った。
「あの、履歴書なんですけど、」
「そのダニ、ちゃんと外に捨ててくれよ」
セバスが頷く。そして、なにかを窺うように「あの、履歴書なんですけど、」と言うので、僕は
「じゃあ、僕今日は寝るから」と言った。
「あの、履歴書、」
「静かにしててね」
セバスが部屋から出ていった。
そして、僕は今日も死んだように目をつむるのだった。
めでたしめでたし。
まだ続くからね。
また見てね




