第三幕
夢を見た。
過去の夢だ。人類一万人を乗せた宇宙船が火山の総噴火から逃げようとする内容の映画を、私は何度も見に行った。
結局映画の中で噴火は未遂で終ったものの、あれば他人事ではないと思った。
そもそも地球はいずれ太陽に飲み込まれる運命にある。それまでに地球から脱出する術を編み出さなければ人類は終わってしまうだろう。
いずれなくなってしまうのに、今更環境を整えようとするのか?
手のひらに乗る茶色い粉末。
そのためにクラゲを、他の生き物を犠牲にするのか?
壊したのは人類だが、更に度し難いのは壊れていると知っても目先の欲に目がくらんでさらに壊すことも後を絶たないその愚かしさ。そしてそれは、きっと私も持っている。
冷房をつけていたのに、起きた時は嫌な汗をかいていた。
のろのろと動いて風呂場の前にある洗濯籠に汗臭い部屋着を詰め込み、シャワーを浴びた。ガスのスイッチを入れ忘れて水を長いこと浴びてしまい、結果風邪を引いた。
久しぶりに引いた風邪は辛かった。
適当にTVをつけて布団に包まる。
万年床の枕元にある白いビニール袋に手を突っ込んで、市販の解熱剤を取り出しスポーツ飲料で流し込んだ。
袋の中には風邪を引いた時に備えて買っておいた薬や飲料、ビタミンゼリーが詰め込まれていた。
備えよ常に。
私の好きな言葉だ。
誰の言葉だったかは忘れたが。
ニュースによるとまた原子力発電所が出来るようだ。
過去に一度、恐ろしい事故が起こり人が住めない場所ができてしまったはずなのに。
きっと誰かには必要なのだろう。
私がスマートフォンを手放せないように。
スマートフォンを取り出し、昨日の画像を見た。
やはり神秘的な光景だ。
砂漠に緑を招くために、クラゲを犠牲にする人間たち。
そんな人間たちが作った社会に生かされている私。
何も影響を出さない、出せない、そんな私。
どうして生まれてきたのだろう
なぜできないんだ
産まなきゃよかった
お前なんか要らない
過去の声が頭の中を響き渡る。
その声に対しての答えはいつも同じだった。
消えてしまいたい。
気がついたら日が暮れていた。
枕元にあるはずのリモコンを探した。
リモコンは中々見つからない。もがくように探す。
結局見つからずに、部屋の電気を直接つけようと背を起こした。
部屋はいつもより荒れている。もとに戻す手間を考えたらため息が出た。
無力感に苛まれながら立ち上がろうとして、身体がぴたりと止まった。
ベランダと部屋を仕切る窓は、薄くて脆い。台風が来るたび割れないか心配になる。
その窓の向こうには美しい空が映っていた。
消えてしまいたい。
そう思っていた筈なのに。
思わずスマートフォンをかざして写真を撮る。
実際とは少し違う映り方の画像を見て、ふと涙が頬を伝った。
もう一度撮る。
今度は、本物よりも美しく撮れた気がした。
きっと
きっと私は生きていても良い。
きっと私は何かを残せる。
きっとそれは美しいものだ。
水槽の中のクラゲのように、空には雲がゆっくりと流れていた。
ありがとうございました。
感想と指摘をお待ちしています。




