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EP7:一人と一人の再会:1年前

リセの矢が、獣のすぐ横をすり抜けていく。


獣はその場から動かなかった。


獣は、彼女の顔をただ見つめていた。


まるで、何かを……焼き付けようとするように。


リセの目に戸惑いが浮かぶ。


「……なぜ、避けないの?」


獣が唸る。


小さく、呻くように震えながら、地を爪で掻きむしった。


「ーーーどうして…っ!」


獣のもらしたその声は、たしかに人間のものだった。


けれど、吐き出された瞬間には、獣の唸りに飲まれて砕けていく。


真紅の獣が、吼えた。


「見るな!!」


その声は、怒りでも威嚇でもない。


あまりにも、あまりにも哀しい拒絶だった。


地面が、崩れる。


周囲の瓦礫が、赤い炎に巻かれて黒煙をあげる。


獣の影が、焼かれた世界の中でひとつに凝縮されていく。


それはまるで、自分自身を炎で包み込んで焼き尽くそうとするようだった。


「見るな……」


獣の目から、赤くもなく、黒くもなく、


色を持たない雫が流れた。


リセが、なぜか足を止めた。


震える腕で、弓を引きかけたまま、思い至った。


それは最悪の想像。


その恐ろしい思いつきにリセの体は、凍りついていた。


ーーー


真紅の獣が駆け抜ける


 足音はなく、切り裂かれた空気の波


  揺らめく真紅の輝きだけが観察者の目に焼き付けられる


  温度は後からくるのだ


   焼かれ


吹き散らされた後に…


ーーー


積み重なる瓦礫の山が、真紅の獣を覆い隠す。


それは残酷なことに、いつかの隠れ家のように殻となって。


カアレの意識は、途切れ途切れにつぎはぎされていった。


暗闇、風、炎、金色の輝き、後悔、懺悔、身を切るような熱、そして甘い香り――。


いくつもの場面と思いが、際限なく重ね合わされる。


そのほとんどが、嫌悪と、罪深い怒り。


それらが幾重にも重なって、カアレを刺し貫いていく。


「……ちがう……」


うずくまる真紅の炎が、かすかに低い唸りを漏らす。


「ちがうんだ、僕はただ……」


埋め尽くされる痛みの連続。


その合間に、ほんのわずかな、金色の光――。


リセの記憶だ。


なぜかいつも浮かんでくるのは――怒った顔だった。


・・・正面から見てくれる少女の瞳だった。


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