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EP11:一人と協力者:現在


薄曇りの午後、ハンターオフィスの一室は静かなざわめきに包まれていた。


リセは窓辺で腕を組み、来客を待っている。扉が軋んで開く音とともに、青年が姿を現した。


「こんにちは、ここがハンターオフィスですね?」


細身だが、どこか鋭い視線を持つ青年は、肩に背負った荷物を軽く揺らしながら言った。


リセは軽くうなずき、席を勧める。


「はい。あなたが新しい依頼者の方ですか?」


「ええ、名前はレオン。元商人です。…と言っても、今は放浪者みたいなものですが。」


レオンは苦笑いを浮かべた。


リセは彼の目の奥に、何か深い闇があることを感じ取った。


「何かお困りのことがあるのですか?」


レオンは息を吐いた。


「ええ、実は…家族を、あの獣に奪われてね。復讐のために旅をしていましたが、自分の限界を知って、今はただ彷徨っています。」


リセはゆっくりと身を乗り出した。


「その獣とは、あなたが狩ろうとしている相手?」


「そうです。…でも、戦うだけじゃ足りないと思い始めた。戦いは苦手だし、戦術や仲間を探すほうが自分には合っている気がする。」


レオンの声には迷いが混じっていた。


「それなら、いい場所に来ましたよ。」


リセは微笑みながら言った。


「実は、私にも狩りを教えてくれた人がいました。元は獣専任のハンターで、今は隠遁しています。」


レオンは驚いて目を見開いた。


「それは…?」


「山奥で薬草を採りながら静かに暮らしている中年の女性です。かつては彼女も、ある獣を倒せずに引退したそうです。」


リセの声は少しだけ遠い記憶を辿るように優しくなった。


「彼女は私に『狩る技術ではなく、狩られぬ意志』を教えてくれました。」


レオンは黙って頷いた。


「狩られぬ意志…それは強さの別の形ですね。」


「ええ。技術や力だけではなく、自分の心の強さも必要なんです。」


リセは目を伏せる。


「レオンさん、復讐に囚われていると、その強さを見失いがちです。私もそうでした。でも、放浪して新しい希望を見つけたあなたなら、きっと…」


レオンは小さく笑った。


「そうかもしれませんね。リセさんの話を聞いて、少しだけ前を向けそうです。」


その日、二人の間に新たな絆が生まれた。


そして、レオンはこの場所で、ただの復讐者ではなく、仲間としての新しい自分を探し始めたのだった。

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