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回避出来た令嬢は?  作者: 明月 えま
第4章・帝国編
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後日談・ラデン家の長男

これで、本当に終わり。誤字報告の速さに驚いてます。光のように早い。

(・ω・`)

ありがとうございます。相変わらずのヘッポコを、晒してしまった。

何回も見てるハズなのに!!!

更新遅くてすみません。

「やっとここまで来たなあ。」

 父親が感慨深く呟く。

「ええ。ですが、歴史の流れで見ると、短期間で確実に成果を出せたのだと思いますよ。」

 ワイングラスを片手に、優雅に椅子に座るのはこの国の宰相、リオン・グラート侯爵閣下。

「よかったじゃない?しばらくは混乱必至だけど。」

 クスクスと笑うのは、平民でありながら、稀代の魔術師であるタリス。






 この三人は、昔から仲がいい。俺はガーラント・ラデン。ラデン侯爵家長男で騎士団0団所属。騎士団長をしているカイウス・ラデンの息子だ。

 この集まりに、俺が同席を許されるようになったのは、1年ほど前から。正直、初めは父親の同窓会になぜ俺が出ないといけないんだ?と思ったが、参加してみてゾッとした。


 彼らが話している事が、国の方針となって動いている。


 一度目の参加でその事に気が付いたからだ。


 そして、俺より年少である、宰相子息リルは、俺より3年早くこの集まりに参加していたことを知る。昔から会って、まあ、仲良くしていたんだが、そんなに深く関わる事はなかった。

 参加したその日。幼いながらに、父親達3人に自分の意見を主張し、その実現方法を説明する。その頭の良さに、自分を恥じ入った。全然かなわない。俺はただ、黙って聞いているのみで、何も発言などできなかった。その時、俺はすでに19歳。リルは14歳だった。

 理路整然と述べられる考え。直感で動いている俺とは違う。


「驚いただろう?リオンも昔っからあんな奴だし、さすが、あいつの息子って感じだろう?頭じゃ敵わねえよ。俺らラデンが出来る事は、あいつらの頭ん中を実現するために、国の守りとしてどう動くかだ。だが、方針が間違っていると思ったら意見はすべきだ。お前が宰相家みたいになる必要はない。いつも言っているだろう。ラデンとして、国を支えていくのだ。お前はラデンの次期当主だからな。もっと学べ。俺らももう、若くない。じきに世代交代となるだろう。たまたま、俺らは学年が一緒で楽しくやって来たが。お前らは学年が違うからな。ただ…現状、次代の宰相となる器はいない。リルではまだ若すぎる。リオンがどこまで頑張るかだが、俺は宰相の次代はリル以外いないと思っている。本当は、同じ家での世襲は良く無いんだがな。あれ程の考察力、政治を読む能力を持つ若いのがいないのが現状だ。」

 帰りに、俺の内心を見透かしたように父親が言った。

「そう…ですね。俺は慢心していたのかもしれません。父上の騎士としての仕事は見ていましたが、国としての動きをもっと考えるべきでした。俺は、何一つ、意見を述べる事も、疑問を持つこともできず、ただ、圧倒されて聞き入るばかりでした。」

 ため息が出そうになるのを押し殺す。身体を動かしたわけではないのに、脳が疲労して、休みたいと訴える。


「ガーラント。お前、リルとやっていけそうか?」

「わかりません。かわいい弟のように思っていましたから。」

「充分だ。お前とリルの接触時間を増やす。リオンもそうだが、あいつら、勉強ばっかで身体を動かさないからな。護身術を叩き込んで、自分ぐらいはしっかり守れるように、稽古をつけに行ってやれ。」

 父の言う事に、正直、驚く。

「俺がですか?」

「ああ。遊びでいいんだよ。14歳だが、リルはリオンの子供の頃より細い。あれじゃあ、すぐに刺客にやられそうだろ。遠慮はいらんから、バキバキにしごいて来い。」

 バキバキって…。

「頭じゃ敵わねえけど、絶対に武では負けない。それがラデンだ。」

 そう言って、ニヤリと笑った父親の悪戯っ子のような笑みに、少し安堵したのだった。


 俺の母とリルの母親は、互いに侯爵夫人であるという共通点もあってか、とても仲が良い。夜会では、リルの母が年を経ても可愛らしく、流行を作り出すのが上手なのに対して、母は元からの騎士然とした態度で、静かにたたずんでいることが多い。初めは、どうしてこの二人の気が合うのかわからなかったが、実はリルの母より、俺の母の方が手先は器用だ。夜会前になると、二人でせっせと新作のドレス案を作ったりしている。案を考えるのはもっぱらリルの母で、俺の母が刺繍などをしている。

 はっきり言おう。ちぐはぐなんだ。どうみても、リルの母の方が刺繍している姿は様になっているし、きれいだ。だが、遅い。本人も、刺繍は出来るが、苦手なんだと苦笑する。対して、俺の母はデカくて、ぶっちゃけ、刺繍とかしなさそうなのに、リルの母の3倍ぐらいのスピードで針を刺していく。しかも、上手い。

 そんなこんなで、楽しそうな母達。


 母と一緒にグラート家を訪れるようになった。

 父はバキバキにしごいて来いとか言ったのに、リルはちゃんと稽古を受けていた。あんなに細身なのに、意外に力もあり、すばしっこく、上手に動く。剣筋もいい。

 なんだよ、こいつ。何でも出来るじゃないか。そう思ったが、必死で向かって来る姿は嫌いじゃなかった。


 ある日、屋敷を訪れると、泣いているリルがいた。

「おい、どうした。」

 声をかけられるまで、気付きもしなかったのだろう。驚いた様子で、俺を見る。そうやって泣いていると、年相応に見える。

「…大丈夫です。」

 消え入りそうな声で返事をする。いつも通りに剣の稽古をするが、いつもと違って全くダメだった。集中力が無い。持続力が無い。キレが無い。

 ナヨナヨしたその態度にちょっとイラっとして、思いっきり、木刀で吹っ飛ばした。

 我ながら、年上なのに大人げないというか、何というか…。


 リルは2メートルほど吹っ飛んで、倒れた。


「今日は止めようぜ。」

 そう俺に言われて泣きだすリル。

「嫌です。すみません、ラント兄。もっと頑張るから、稽古つけてください。」

「…お前、何があったんだよ。」

「父上に口述論で負けただけです。」

 ぶっ、と噴き出して笑ってしまう俺。

「笑わないでください!」

 リルは怒っているが、そもそも、あの宰相と張り合おうというのが土台、無理な話だと思う。

「お前さあ、頭いいのわかるけど、急ぎすぎなんだよ。俺なんか、お前より頭悪いぜ。騎士は体力勝負だから、俺はだいぶ父に近づいてきたが、実践の経験や勘は負けている。どうやっても、負けるんだ。勝てる気がしねえ。」

「…ラント兄でも?」

「お前、俺をどう見てるんだよ。」

「強くて、ちゃんとした大人で、かっこいいです。」

 ちょっとはにかんだ様に言うリルは、やっぱり、可愛い弟分で。

「俺も、まだまだなんだよ。だから、俺なりに努力してるんだよ。父が言っていたぞ。学生の時から、リオン様に体力以外で勝てたためしがないって。だから、お前も、お前のできる範囲で頑張ればいいんだよ。」

 そう言う俺に、涙を拭いながら、

「わかりました。」

と返事する。


 それから、ますます、リルは俺になついた。





 そして、今日、父親達が祝杯を挙げているのは、西大陸にある帝国と共に、奴隷制・低民制撤廃の法が共同で法制化されたからだ。

 それはきっと、歴史に残る法案に違い無い。

 何年も何年も下準備を重ね、各国と連携を取り、奴隷商人の力を削いで、やっとこぎつけた法だ。


 法の制定と共に、日々忙しく働いている父親らの背中がとても遠く感じる。そして、その息子であることに誇りを持つ。

 それと共に、この世代の後を継いでいく力が自分たちにあるのかと考えると、自分の力不足を強く感じ、まだまだ、学ぶべきことは多いのだと痛感するのだ。


 1カ月前から、タリスの息子、レオが12歳の若さで連れて来られるようになった。

 稀代の魔術師であるタリスと帝国貴族であった母親の血を継ぎ、非常に強い力を持つが、本人は、父タリスと同じように表に出る気はないらしい。レオの上に、マーシャという娘がいるが、これまた、研究熱心で、魔術師になる気もなく平民として過ごしている。それも、かなりの美人。


 実は、マーシャは俺の初恋だった。


 ああ。もう、過去形なんで気にしないでくれ。


 ラデンの長男として誇りをもっている。現状で、平民の彼女を娶ることが出来ないとわかってた。すぐに諦めたし、今は、別に愛する女性がいる。俺は、今愛している彼女を守っていくんだと決めている。


 で、俺の気持ちを逆なでするかのように、マーシャに猛アタックしたのが、俺の2番目の弟。ラデンを継ぐ必要が無いのをいいことに、猛アタックし、貴族籍を捨ててまで結婚すると言っている。

 父親達は、本人達がそれでいいなら、好きにすれば?って感じ。


 いいんだけどよ。

 自由で、ちょっと羨ましくもあるな。


「お父様ぁー。」

 パタパタと駆ける足音と共に、廊下を走って来たのはリルの妹、メル。

 冷静沈着なリルと違って、天真爛漫を絵に描いたような娘だ。少し年の離れた8歳の妹を、リルはとても大切にしている。それは、ここにいる全員が一緒だと思う。


「綺麗な光蝶がお庭にいるの!!ねえ!早くしないと、どこかに行っちゃう!」

「それはそれは。」

 優しく笑って、宰相閣下が立ち上がる。

「ねえ、お兄様も、皆さまも早く来て!!」

 薄桃色のドレスを纏い、父親似の栗色の巻き毛がふわりと揺れる。


 メルに促されて庭に出る皆を見て、追いかけて来た侯爵夫人が苦笑していたが、叱られる事はなさそうだ。


 庭の薔薇の花の周りをヒラヒラと飛ぶ一羽の光蝶。



 光蝶を見ると、幸せが訪れると言われる。


 きっと、この今の時間はとても幸せな時間なのだろう。

 この、幸せな時間がずっと続きますように。


 大切な人たちを守るために。

 父親達のように、俺はこれからも前を見て進んでいくのだ。リルもいる。レオも加わった。俺が年長なのが心配なところもあるが、元々、騎士職は文官より世代交代は早い。俺の後は、きっと、俺の子が思いを継いでいくのだろう。


 まだ、結婚すらしていないのに、気が早いものだ。

 だが、父達を見ていると、苦労するのも悪くないな、なんて思えて。未来がとても明るく感じる。


 そんな春の日の午後だった。


皆様、ありがとうございました。


ルークスタッド後日談、黎明、のんびりと投稿してます。

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黎明 ルークスタッドの後日談、連載中 不器用令嬢、騎士になる カイウスの恋愛話、主に嫁視点を書いてます。  こちらもよかったら読んで下さい。
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