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回避出来た令嬢は?  作者: 明月 えま
第4章・帝国編
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明日に向かって

最終話です。

『ねえ。ラーシャ。僕の家に来ないかい?』


急にそう言われた時、驚きで声が出なかった。

どういう意味なんだろう。


『僕もずっとここに、グラート侯爵家にいるわけにはいかなくて。そろそろ帰らないといけないと思っていたんだけれど。・・・君も、来てくれないだろうか。』


『はい。ご迷惑にならないでしょうか。』

やっとの思いで、返事をする。


タリスが困ったような顔をしている。

私は、何か、間違えただろうか。


『・・・。ごめん。僕の言い方が悪かった。やり直す。』


『はい?』


『ラーシャ、僕と結婚してくれませんか?』


驚きで、声が出ない。

『返事は、難しいのかな。ごめん。』

そう言うタリスの顔は少し悲しそうで。

でも、言葉につまってしまって。


いつも、自然の影響を受けて魔力のコントロールが悪くなって体調を崩したり、夢を見て泣いてしまう私を抱きしめてくれたその腕に手を伸ばす。


『ラーシャ?』


その声はいつも通り優しくて。


この人は、本当は私にはもったいないような人なのに。私でいいのだろうかと思う。


『おねがい、します。』


そう言った私の声は震えていて。みっともなくって。

やっぱり涙が溢れてきて。


『泣かないでよ。ラーシャ。笑って。』

そう言われて、私はこの世界で初めて嬉し泣きという体験をしたのだった。





どうやら、タリスは色々と下調べをし、友人であるロイメールの宰相閣下と話をし、一のお兄様とも連絡を取りあっていたらしい。


久しぶりに、魔石を通して聞くお兄様と妻であるアリル義姉様に祝福されて、私とタリスの結婚が周囲に認められた。


私は、宰相閣下の取り計らいで、平民の戸籍を用意してもらい、無事にタリスの妻となった。

実は、あのプロポーズ、相当勇気を出して言ったんだと後から言われて嬉しかった。

私よりずっと大人で、余裕があるように見えていたから。


ただの平民の結婚式にやたら貴族の大物が集まって、教会が驚いていたのは後々になっても笑い話になった。


本当は、貴族籍を用意しようと言われていたのだ。だが、極力他人と接触を避けている私が社交に出るのを危惧して、タリスは平民として生きていく事を選択した。


魔道具研究所を辞し、王都の一角に魔道具の専門店を開いた。

と、いっても、店番を雇って表に出る事は無く、宰相閣下からの特別な注文や騎士団・魔術師団からの特注を2階で請け負っている。

階下で売っている普通の魔道具も質が良いと人気になり、お店は繁盛している。


兄達や姉とも再会を果たした。

タリスと話し合い、魂結びの術を、一のお兄様にかけてもらった。


クランガルドの伝承を伝えることでタリスの力も安定し、最近は始祖精霊様も使役できるようになったらしい。


今でも、時折、夢を見る。

どうしてだか、タリスと一緒にいるようになって、夢を見るのは随分減った。

国に異変があるような夢は、タリスを通して、宰相閣下やお兄様に伝達してもらっている。


相変わらず、私の引きこもり具合は筋金入りで変わらない。


宰相閣下の奥様のレイローズ様とは、文通友達になった。申し訳ないが、直接会うには、彼女は沢山の人と触れ合うので多くの情報を感じ取ってしまう。直接会ったら、私は多くの夢を見る。翌日、疲れて寝込んでしまう事もあったからだ。彼女に理解してもらい、とてもありがたい。


私はもうすぐ母となる。先に結婚していたレイローズ様は、まだ19歳で。

宰相閣下が心配性らしく、母体保護の為に、20歳にならないと子は産ませないと言われているとかで。時折来る手紙に赤ちゃんが羨ましい、早く欲しいと書いてきて、生まれてくる赤ちゃんの為の洋服だとか、玩具だとか・・・まだ早くない?っていう物まで贈ってくれる。


お礼をしたいのだけれど、夢見の力で宰相閣下の力になっているから不要だと言われる。

まあ、確かに、平民なので、お礼といっても大したことが出来ないから、それでいいのかもしれない。


宰相閣下によると、光精霊のリノが居ないと全く目が見えない私を気遣って、タリスは前より片付けをするようになったらしい。


が。


書籍と紙が雑多に山積みにされた室内を見て、ため息をつく。


「もう、いい加減に片づけてくださいませ。」




部屋の隅に座って、無心に何かを書き連ねていた私の愛する人が顔をあげ、その優しい青い瞳がふわりと微笑んだ。



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黎明 ルークスタッドの後日談、連載中 不器用令嬢、騎士になる カイウスの恋愛話、主に嫁視点を書いてます。  こちらもよかったら読んで下さい。
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