夢見の死
灰色の世界で、誰かが泣いている。
そこに横たわる白い髪の女。
灰色だから白なのか。
花に埋もれたようなその白い髪の女の周りで、沢山の人が泣いている。
その世界は何なのか。
夢か現か。
夢に一瞬で色が着く。
ああ。一のお兄様が泣いている。二の兄さまも、三の兄さまも。一の姉さままで。
美しく色づいた花に囲まれて横たわる私。
ああ。色がついてしまった。やはり。避けられないのだ。
そう。それは私の葬儀。
避けられないのならば、むしろ辛くなってしまった。
タリス。
優しいあの人にすがってしまってから、自分は弱くなった。
期待をしてしまった。期待など、してはいけなかったのだ。
大好きだと伝えたい。離れたくないと。一緒に居たいと。
でも、死んでしまうのならば、迷惑になる。
この想いは伝える事無く、ずっと墓場まで持って行くのだ。
夢を見た日の朝から、私は熱を出して寝込んでしまった。
それから2日ほど経って、ぼーっとして働かない頭のまま、椅子に座ってお茶を飲んでいた。
そこへ、タリスがやって来る。
正直、彼を見ると、苦しくてたまらない。
叶わぬ思いに蓋をするのはつらい。いっそのこと、関りが無ければ諦められるのに。
『まだ、体調がよくないみたいだね。』
心配そうに私を見つめる目。
リノとの視界の共有を解く。
辛い。
真っ暗な中で、貴方の声を聞く。
貴方が私に優しくするたびに、心が張り裂けそうになる。
『・・・ごめんなさい。』
『本当は、もうちょっと体調がよくなってから伝えたかったんだけれど。君の兄上から連絡があった事を伝えようと。』
『兄から?』
『そう。ダクロス殿。』
『一の、お兄様・・・。』
考えても、何か連絡をもらう理由が見つからない。
『帝国で、君の葬儀が執り行われた。』
『えっ?』
『帝国では、君はもう、死んだことになっている。』
何を言われているのか理解できない。
『新しい名前を君にと。君は、今日からラーシャだと、ダクロス殿から伝えられている。』
ラーシャ。それは、5歳の時に、儀式で名付けられようとしていた選択肢の名の一つだ。 家族で考えたという名前。その中でも、ラーシャは、一のお兄様が考えたのだと。なのに、選んでくれなかったと、度々からかうように笑って話した兄。
でも、私はどうしてか自分でサクヤだと名乗ってしまった。
意味が解らない。どうして、葬儀をするのか?どうやって?
『君の夢見は当たるから、嘘の葬儀を執り行ったとの事だ。嘘の葬儀を大々的に行うことで、君は公の場には出ていけなくなるが、葬儀を行う事で、君の死は免れるだろうと。君の予言が当たらぬよう、君が言っていた夢の葬儀を忠実に再現したとの事だ。』
はらはらと涙が流れ落ちる。ああ。そういう事だったのか。だから、急に夢に色がついたのか。
『社会的には居なくなってしまった妹に、新しい名前をと。』
『君は今日からラーシャとして生きていくんだ。』
もう、涙が止まらない。
リノと視界を共有しない暗闇の中で、タリスのぬくもりに包まれる。
泣きつかれて眠るまで、ずっとタリスに抱きしめられていた。




