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回避出来た令嬢は?  作者: 明月 えま
第4章・帝国編
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未来

家族共用PCのため、なろうにログイン、毎回IDとパスワード入力するのですが。何度会社の社員番号とパスワードを入力してエラーをだしたことか・・・。( ゜Д゜)

目的地の侯爵家に着いて、サクヤはタリスにエスコートされて馬車を降りた。そこには、笑顔で待っていた美しい女性。

「レイローズ・グラートでございます。長旅、お疲れ様です。さあ、どうぞこちらへ。」

そう言って、屋敷へ案内してくれたのは、前作悪役令嬢の取り巻き役だった女性だ。私が<砂漠の光>を大きく変えてしまったように、<夢の花>も大きく変容している。


何度か夢で見た。彼女も転生者だった事を私は知っている。断片的に見た夢で、よくはわからないが。



普通にしていても暑い。

常に気温が低い山にいた私の身体は、非常に暑さに弱いらしい。応接室に案内されたが、私の様子を見ていた彼女が急に言った。


「挨拶もまともに出来てはおりませんが、サクヤ様はお休みにならないとだめね。マリア。すぐに用意していた客間を開けて休めるようにして。サクヤ様、もう少し、歩けます?」


少し驚く。そんなに、私は様子がおかしかっただろうか。

「歩けます。」

そう言った私を見て、タリス様が驚いた様子で私を見る。

『申し訳ない。血色がいいものと思っていたのだが、もしかしてのぼせていらっしゃったのか?』

『大丈夫です。』

そう言ったが、タリス様が非常に戸惑っているのがわかる。


慣れない。緊張しすぎたのかもしれない。疲れた。


「タリスさんは、男性ですからここでお待ちになって。」

レイローズ様にピシャリと言われて、落ち込んだ様子のタリス様に声をかける余裕もなく、私はレイローズ様と使用人について行く。


「こんなにキッチリ着せられたらお辛かったでしょう?着替えますわよ。」

そう言って、2人に手際よくドレスを脱がされる。

頭がぼうっとして、羞恥心も感じられない。

緩いワンピースを着せられ、すぐにベッドに連れて行かれる。

少し、楽になった。


「果実水です。サッパリしますから、少しでいいから飲んでください。」

そう言って、グラスを手渡される。

「全く。タリスさんなら、安心かと思ってたのに、全然お世話出来ていないのね。倒れそうになっているのに気が付かないなんて、どういう事?」

私に果実水を飲ませながら、お世話するその姿がかわいらしくて、ちょっと笑ってしまった。

「大丈夫ですわ。とても気を使ってくださってましたの。責めないでくださいませ。ただ、私が思った以上に暑さに弱かっただけのようです。」

「ああ。よかった。顔色もだいぶいいと思うわ。でも、今日はお休みになって。明日、ゆっくりお話ししましょう。メイドはこのベルを鳴らして呼んでくださいね。食事はどうされます?」

「食欲はなくて・・・。」

「では、目を醒まされた時に摘めるものをサイドテーブルに用意させますわ。洗面所はあの扉。そこから湯あみもできますが、体調がまだすぐれないご様子ですので、明日お手伝いさせます。今日は我慢なさって。でも、遠慮はいらないわ。夜中でも、何かあったら遠慮せずに声をかけてくださいませ。」

そう言って、彼女は出て行った。

しばらくしてメイドが戻り、軽食や果実水など、少しずつ多くの種類の物をサイドテーブルに並べていく。


1人になった。まだ、頭はぼうっとする。


ああ。横になりたくない。

またあの夢を見るのが怖い。


そう思っているのに、身体は限界のようだ。

仕方なく、ベッドに横になる。


意識はあっという間に落ちていく。








一方そのころ、タリスはレイローズに叱責されていた。

「で?タリスさん?どうして、サクヤ様があんなになるまでほおっていましたの?あなた、リオンより力のある魔術師なのでしょう?私でさえ気がついた魔力の不安定な揺らぎに気が付かないなんて、一体全体、何をしてらしたの!!」

「はい・・・。」

返す言葉も無い。

「なぜ、気が付かなかったのです?」

「いや・・・。気が付かなかったというより・・・。僕があまり魔力を見られるのが嫌いだから、あまりジロジロ見るのは失礼かなあと思って・・・。できるだけ見ないように・・・。」

「で?」

「えっ・・・?」

「連れて来て、どうされるおつもりでしたの?」

「普通に・・・。家に・・・。」

「家事は?」

「僕が・・・。」

「まあ、料理はそれでも良しとしましょう。では、洗濯は?サクヤ様のお着替えは?」

「あ・・・。じゃあ、母に・・・。」


氷点下ではないかと感じるほどの冷たい眼差しが僕を見ていた。

「よっっく解りましたわ!この甲斐性無し!私が許可を出すまでは、絶対にサクヤ様をあなたの家には行かせませんわ!苦労するのが目に見えておりますもの!出直してらっしゃい!ああ。何も出来ないのでしたら、サクヤ様のお部屋に結界ぐらい張って、番犬ぐらいなさいませ!私、忙しいんですの!失礼しますわ!」

怖い・・・。本当にあれ、レイちゃん・・・?なんか、物凄い勢いで怒られたんだけど。

いや、そうだよね。水の上位精霊と渡り合えるぐらいの度胸の持ち主なんだし。今更だよね。

あっ・・・。レイちゃん怒らせたって事は、僕、リオンにも怒られるんだろうか・・・。


固まっている僕に、メイドさんも容赦無い。

「奥様は、リレイラからお連れになったお子のお世話に、屋敷の仕事、夜会に向けた準備と忙しいのです。よく、ご自身でお考え下さい。」

なんて言われてしまった。


僕は用意された隣の客間で、番犬よろしく、サクヤ嬢の部屋に結界を張って、たそがれていた。


夕方、だいぶ早い時刻にリオンが来た。

「ローズに聞いたぞ。」

「ああ・・・。怒られた・・・。」

「その様子では、なぜローズが怒ったのかわかってないんだろう?」

「うん、正解。どうしてあんなに怒られたのか、わかってない。準備不足だったのはわかっているんだけど。」

「君の方が、女性の機微には敏いと思っていたのだがな。」

リオンが苦笑する。

「いや、もう、全然わかんなくて。」

「女性は結婚する時、姑と上手くいくか悩むものだろう。サクヤ嬢は、結婚もしていないのに、急に連れて来られ、君の母親に面倒を見せると言われて、心が休まるものだろうか?」

「あっ・・・。」

「変なところが抜けるんだな。」

そうかもしれない。娼館の女達は、娼館を抜けられるというだけで、喜んで出て行く。姑との仲を考えるより、まずは、あの底から這いあがる為だ。

やっぱり、僕は感覚がズレていて、おかしい。


はぁーっと、大きくため息をつく。

「ごめん・・・。僕、やっぱり向いていないかもしれない。どうしよう。」

預かってしまった相手は、貴族家のお嬢様。

「クランガルドに頼まれたのは君だ。私も協力はするが、君が預かるのだからね。ローズが随分とサクヤ嬢に肩入れしているようだが。君がしっかりすれば、すぐに出て行って構わないと言うだろう。そうだな・・・。数人、家のメイドをつけよう。サクヤ嬢に合う者がいたら、1人なら専属で連れて行っていい。後は、サクヤ嬢次第だな。」


「ありがとう。」

「ローズは、もう怒っていないぞ。むしろ、言いすぎたかもしれないと、今はオロオロしていたからな。」

「ん。大丈夫。ありがとうって言っておいて。僕を叱ってくれる人なんて、そうそういないから。やっぱり、レイちゃんはリオンの奥さんだねぇ。」

ちょっと元気が出て来た。本当に、僕とサクヤ嬢を心配して叱ってくれる人達。それは、当たり障りなく言う言葉より、もっと力を使うことで。


「サクヤ嬢を預かった以上、彼女は今、君しか頼れない状態だと、もっと自覚を持つべきだな。変な遠慮をするものではない。」


リオンの言葉が、心に響いた。











キラリ、キラリと光る光の中、急に足元が抜け落ちて、転落する感覚


『きゃあっ!』


夢を見て悲鳴を上げる。


夢・・・?違う。これは、ただのイメージだ。夢見の夢ではない。


目を開けても真っ暗だ。ああ。そうか。私、東大陸まで来てしまった。

光精霊のリノは、ピアスの中の魔石に籠って休んでいるようだ。


呼べば、起きてくれるだろう。でも、まあ、必要はないか。


心臓がバクバクする。

ああ。多分、このベッドが柔らかくて。フワフワすぎて、落ちるような錯覚を覚えたのだろう。


そう、思っていた時だった。ガチャリとドアが開く。

誰?

身体がこわばる。

『サクヤ嬢。どうしました?』


その声は・・・。

ああ。タリス様。


『あの・・・。何でもないのです。申し訳ありません。』

『でも、声が・・・。』


私は、無意識に悲鳴を上げていたらしい。

夢・・・?そういえば、私、帝国を出てから、夢を見ていない・・・。


気が付くと、ゾッとした。どうして、今まで数日間、気がつかなかった?


私は、力を失った?


なぜ?どうして?今まで、夢を見ない日などなかったのに。悪夢は見たくないと思っていた。でも、こんなに長く寝て、夢見をしないなど、無かった。


『そちらに、行っても・・・?』

尋ねられても、声が、出ない。


どうしよう。怖い。私は一体、どうなってしまったのだろう。

子供の頃、夜毎、うなされては、泣きついたお兄様はここにはいない。お兄様の奥様のアリル様も、私が泣くといつも黙って聞いて、抱きしめて慰めてくださった。

ああ。私は、本当に守られていたのだ。


そして、私を生かすために、この地まで逃してくださったのに・・・。


夢・・・。夢・・・。見たくなかった夢を見ないことが、こんなにも不安になるなんて。


ふと、暗闇の中、手を取られる。

温かい、大きな手。

呪縛から解き放たれたように声が出た。

『タリス様・・・。』

『タリスでいいと言ったはずだけれど。』

守護者様と呼んでいたので、呼び捨てに慣れない。でも、それが嬉しくもある。

『タリス。』

『うん。どうした?怖い夢でも、見た?』

そう尋ねられた瞬間、涙腺が崩壊したように涙が溢れた。

手が、身体が震えているのを止められない。

どうしよう。こんな事、最近は無かったのに。子供の頃には自身の夢見の力のコントロールが出来ずにあまりにも生々しい夢を見た。最近はこんなパニックのような状態にはなっていなかったのに。


『何もしないから、ちょっと、ごめんね。』

そう言われて、抱きあげられる。軽々と持ち上げられて、膝の上に抱えられた?

そのまま、トン、トンと優しく背中を触られる。まるで、赤子に戻ったように。


魔力の循環がおかしい。自分でそう感じる。

夢を見ないのは、このせいなのだろうか。考えているうちに、意識がまた、落ちていた。





ぼんやりと、目を醒ます。

今は・・・。

『おはよう。』

急に横からかけられた言葉に驚く。

リノが起きているようで、視界が急に共有される。


まぶしい。


ベッドに横になる私の隣にタリス様が・・・。タリスが座っていた。

しかも、私、手をつないだまま。


『ごめんね、驚いた?覚えてる?』

そう言われ、夜半の出来事を思い出す。

『あの・・・。ご迷惑を・・・。』

『迷惑なんかかけてないよ。身体は大丈夫?』

『はい。』

『昨日はそのまま寝ちゃったけど、怖い夢でも見たの?』

『いいえ・・・。逆に、夢を見ていなくて・・・。』

『そう。よかったね。』


よかった・・・?


夢を見るのが、当たり前だった。その中から、最善を選んできた。


私は、そんなに驚いた顔をしていたのだろうか。


ピアスの中からリノが見ているタリスは、不思議そうな顔で、言った。


『だって、未来が見えたら怖いでしょ?』


その言葉を聞いて、涙がとめどなく溢れる。

私が泣いて、驚いた顔のタリス。


ああ。この人は、


夢見ではなく、


私という存在を受け入れてくれるのだと、気が付いた。

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黎明 ルークスタッドの後日談、連載中 不器用令嬢、騎士になる カイウスの恋愛話、主に嫁視点を書いてます。  こちらもよかったら読んで下さい。
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