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回避出来た令嬢は?  作者: 明月 えま
第4章・帝国編
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本日は短めとなります。

『サクヤ?なぜサクヤなんだい?」

そう尋ねた私に、幼い妹はキョトンとした顔で言った。


『だって、皆、私をサクヤって呼んでいたもの。』


あれから20年になる。夢見の視力は、早い者は12歳で全盲になった記録が残っている。

妹の力が夢見とわかり、家族全員が強い衝撃を受けた。


何とか、普通に暮らしてほしかった。

年が離れていて可愛かったのもある。だが、何より、政争の具にしたくなかった。


利発な子だった。

色々と教えたら、もっと、沢山の事を覚えただろう。


だが、我々がさせなかった。

夢を見ないように、刺激を与えないような単調な生活。いつしか。小さかった妹は少女となり、今は立派な女性となった。本来ならば、もっと早く嫁ぐものだ。


嫁に出してもいいと思うような男も一定数いた。どうか?と尋ねたが、このままがいいと言っていたのは妹だった。まさか自分の終わりに向かう夢を見ていたなんて。



妹は、このままだと、片手も生きられないと言った。


5年も生きられないと。


誰か嘘だと言ってくれ。


だが、今まで妹の夢見の助言はことごとく当たった。

どうして、外してくれないんだ。


どうして。


ずっと、わがままも言わず、過ごしてきた妹。

ずっと、このまま一族で守っていこうと思っていた。


初めて、自分の意思を表明した妹。遥か南方のリレイラに連れていけと言った妹。たった1つの助かる道だと言って、強がって笑っていた妹。


もしも、妹が生きることができるのならば。


ここに来て東のクランチャード・・・。

遥か昔、祖が東西に分かれて700年以上に及ぶ。王国や帝国の歴史よりさらに古くから、この世界を見守って来た。


神により選定され、魔素を安定化し、精霊と人間の均衡を保つ者。

人は守護者と呼び、精霊達は調停者と呼ぶ。


精霊達は長く生き、我々をその血と力で認識するが、人間は違う。

生死が早い人間は、すぐに我々クランガルドとクランチャードの存在意義を知るすべを失ってしまった。


東大陸はかなりの魔素の揺れで精霊がほとんど具現化できなくなった。緩やかに魔素が低下し、これ以上持たなくなるならば、クランガルドの者が移住せねばなるまいとまで話し合っていた矢先、魔素が安定しはじめた。誰かが、生き残りがいて、術を使っているのは明白だった。


王城にいるのかと、帝国内の過激派がロイメール王国の夜会で、相手の出方を見るために麻薬を使用したのも静観していた。


もしかしたら、その時に、クランチャードの生き残りが出て来るかと思ったからだ。だが、出て来なかった。

方々手を尽くしても、実力のありそうな魔術師の所在は掴めず。どう手を尽くしても接触できなかった。


妹が夢を見て接触したことで、やっと見つけた。

見目の麗しい青年。あれが、当代クランチャード。


隠匿の術を使い、堂々と宰相の後ろにいるではないか。


妹が接触してから、精霊の目を借りて、ずっと彼を追っていた。


どうやら、既婚者ではないらしい。そして、多分、予想通り、クランチャードは既にその伝承を失っている。状況から察するに、必要最低限の力を使っているのだろう。ならば。妹はうってつけだ。

魔力がなくて術が使えなくても、その知識が彼を支えるだろう。


精霊を通して見ただけの男に、妹を嫁に出すのも複雑だが。

生きる道がこれしかないというのならば、仕方あるまい。


夢見の力に頼ろうとする馬鹿な貴族共に渡すくらいならば、さっさと嫁がせてしまえばよい。


貪欲な公爵家が、妹を嫁にと打診してきたのは昨日だ。

一刻も早く、妹を国外に逃さねば。きっと、国内にいては、妹は生きられない。


『明日、ロイメールに行く』

そう言った私に、2人の弟が、頷いた。




籠の鳥であった可愛い妹を羽ばたかせるために。

今、我々に出来る全ての事を・・・。


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黎明 ルークスタッドの後日談、連載中 不器用令嬢、騎士になる カイウスの恋愛話、主に嫁視点を書いてます。  こちらもよかったら読んで下さい。
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