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今井君は疲れている。  作者: なわたり
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プロローグ ~今井君は疲れている~

どうも初めまして。なわたりと申します。

 初投稿で緊張しまくっております。少しでも多くの方に読んでいただければ幸いです。

 平坦な内容になりがちな日常系でどれだけ物語に立体性を持たせるか考えた末、今井君が疲れているという結果になりました(笑)。

 一週間に二回は更新する予定です。しかしながら私は学生の身。。。融通が利かないことで知人に有名なので至らないことがあるかもしれません。暖かい目で見守ってもらえたらうれしいです。


7月9日


「今井君、午後どっかで遊ばん? 塾確かないやろ?」

 

 ギラギラな真夏の日差しがカーテン越しでも伝わってくる教室の隅。二人して名前も覚えていないクラスメイトの机に座って、向かい合ってたわいもない話をしていた。


 今日僕は日直だった。担任のところに持っていく提出物の山があるにも関わらず、今井君と話をしていたらすっかり忘れていた。そろそろ職員室に行こうと思ったときに、僕は彼に尋ねた。 


 開けた窓から入ってくる爽やかな風でカーテンが揺れて、時々外が見える。雲一つない夏の空が広がっていて、彼は遠くを見るように途切れ途切れに表れる青を眺めていた。どうやら考え込んでいるらしい。


 期末考査が午前中で終わり、そろそろ正午をまわる。ほかのクラスメイトは皆下校していて、教室には二人っきり。僕は女性と付き合った事がない。異性とならこの場面にどぎまぎするかもしれない。


 しかし相手はこの背の高い美形男子。僕に男の趣味はないが、よくつるんでいるのでクラスの女子には何回かホモだと勘違いされたことはある。それは今井も同じだ。哀しい奴めモテるだろうに。


 どのくらい待っただろうか。汗で下着がべっとりと肌について気持ち悪い。外界からの情報として僕の脳に伝わってくるのはその気持ち悪さと、時々吹く涼しい風と、そっぽを向くイケメン。絵になってやがる。


 イケメンも額に汗を浮かべている。基本的に寡黙な男ではあるが、この暑さの中でさえ彼は深々と考えているのか。遊ぶか遊ばないの二択だろうが。それともこの暑さですでに失神してるのか。ただでさえ色白の彼の顔が急に病人のように見えてきた。


 確認しようと彼の肩を叩こうとしたとき、彼はそっぽを向いたままようやく口を開いた。


「今日はやめとくよ。疲れてるから」


「え……。疲れてるって」


 僕が質問しようとしたら、彼は立ち上がって床に置いてたバッグを肩に掛けた。


「ちょっと待てよ!」


 僕は彼を呼び止めようとした。疲れてるという何処か危ない回答と、急に帰ろうとしたことに腹が立った。


 彼はドアに向かって歩いている。僕が後ろから手を伸ばして意地で止めようとした。すると彼は、歩いたまま、「日直だろ。職員室に用があるんだろ」と言った。すっかり忘れていた。僕はその場で立ち止まり、彼は教室から出ていった。


 教室には僕と彼の制服の柔軟剤の香りだけが残った。そこに風が吹いて彼がいた証拠を完全にさらっていった。さっきまで僕らを蝕んでいた熱気はどこに行ったのか、僕は肌寒ささえ覚えた。


 急に優しいフォローをされて心中は穏やかでなかった。その優しさは、いつもの今井そのものだった。


 彼が言った『疲れている』は肉体的なものか精神的なものか、全く見当がつかない。いつもは表情が穏やかな分、何を考えているかはよくわかる。五分前に話している時だってころころと表情が変わっていた。 

 

 どうやら根が深そうだ……。

 

 そして改めて僕は思う。



――今井君は、疲れている。

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