司令官に向かない俺
「レイティエル、流石ですわ」
フェリエが言う。レイティエルは足に数十キロの砂糖を抱えて帰ってきたのだ。ハトの姿のままそんな大荷物を抱えてくるのは無茶をやったのではないか? とも思う。
さすがのレイティエルも疲れたようで、砂糖の入った袋を、ドカンと床に下ろした。
「あなたに心配をされる必要はありません」
俺がそう考えているところに、レイティエルはそう言ってきた。
「さいでっか……」
俺はそう答える。これ以上こいつとぶつかるのも疲れるし、この石頭には何を言っても意味がないと思う。
「さて、このお使いだって、敵が見逃すかどうか?」
テルシオはレイティエルの事を見つけただろうか? 見つかっているなら、今度は対策をしないといけない。
敵の魔法使いたちの使い魔で囲まれて袋叩きにされたら、さすがの最強の使い魔もなすすべがないだろう。
レイティエルが落とされたらマズい事になる。
「砂糖を買いに行くだけですよ。そんな事くらいなら、敵も見逃すと思いますが……」
フェリエが言う。
「敵の物資の補給を止めるのは当然の事だよ」
俺はそう言うが、フェリエはピンと来ていない感じだ。
「そうなれば、補給隊を組織して、今のうちに何か食料を用意しないといけないかもしれない」
俺はそう考えた。安価で多く揃えられるものがいい。そして、タンパク質もビタミンも取れるような完全栄養食でないといけない。
「空を飛べる使い魔たちで補給隊を組織して! いまなら敵の妨害はザルだ!」
俺はメイレナに魔法を使ってもらって生徒全員に指示を出してもらう。
『空を飛ぶことのできる使い魔を持っている者は屋上に上がるように!』
そう指示を出したメイレナ。メイレナは俺の言葉の意味も意図も理解してくれている。
これが重要な事であるのを理解してくれているのだ。
「ついでにデイナとシィも、できたお菓子を持ってきて!」
肩に止まる虫にむけて言った言葉だ。俺はこの作戦がこの戦いを左右するほど重要なものになると、確信をしていた。
「よく集まっていただいきましたね。皆さん」
メイレナの前にゾロゾロとやってきた、空を飛べる使い魔を持つ生徒たち。
みんな不満げな顔をしているのを見て、おれはイラッときた。今は大事な作戦中であるのに、呼び出し一つで不機嫌になるなんて、今の状況を全くわかっていない……
「いきなりお呼びだてして申し訳ないですね、皆さん」
メイレナが、その生徒達に向けて言う。
これではまるで、つまらない用で呼び出したようではないか……実際はとても重要な作戦であるというのに……
『ロドム君……人を率いるというのはこういう事です』
とにかく、自分がどれだけ必死になっても、その熱は相手には伝わらない。こうやって、柔和に話して相手を優しく従わせるのが一番なのだ。
メイレナから、念話でそう教えられるが、俺としてはそんなまどるっこしい事は自分には向かないと心底思う。
「まずは、みんなにご褒美をあげましょう……」
そうメイレナが言うと、デイナとシィがそこに集まった十数名の生徒に一つずつクレープを渡していった。
「食べながらでいいので聞いてください……」
メイレナが柔和な顔で言う。それを見た俺は、早く本題に入れと考えながらイライラした。
「これから、あなた達の使い魔には買い物に行って欲しいのです」
俺が欲しいのは『大豆』だ。大豆はタンパク質も豊富だし、モヤシにすればビタミン源にもなる。豆腐を作ったりおからも作れるのだ。
「地味な事をするとは思わないでください。兵站が戦闘において一番重要なのは授業で教わった通りですよ」
メイレナが言う。
『地味な事をやらせて悪かったな』
俺はイラつきながらもそう考えた。
「みんな頼みましたよ」
柔和な笑みを浮かべるメイレナ。俺はそれを見てイラついていた。
さっきから、メイレナはみんなの行動は重要で責任の重いものであるとか、これが終わったら、またみんなにクレープを食べさせてあげるとか、そんなどうでもいいような話ばかりをしていたのだ。
「それではロドム=エーリッヒ君から作戦の詳細を聞いてください」
やっと、本題に入ると思い、俺は深呼吸をしながら前に出た。
「これから君らには大豆の調達をしてもらいたいです」
俺が言うと、声が上がる。
「それ、さっき聞きました」
その言葉を聞くと、俺はさらにイラついた。
『いいから黙って聞いていろ……』
そう思った俺。話を続けた。
「さっき、ボクらは砂糖を調達した。その事は敵にバレているだろう。もしかしたら、敵の妨害にあうかも知れない」
そのためフェリエの使い魔のレイティエルを彼らの使い魔のお使いに同行させて警備をする。そのため、レイティエルは荷物は持てない。
それらの事を彼らに説明すると、俺はひと呼吸おいた。
「これは重要任務だ。君らにの働きに僕らの未来がかかっている」
俺はそう言う。だが、それを分かっている様子には見えない。みんなほうけた顔をしていた。
『みんな、需要任務などと言われても、実感がわかないのですよ』
メイレナが念話でそう言ってきた。それは俺も感じている。だが反応が薄いのには、不安になる。
本当に彼らは大豆を調達してきてくれるだろうか? 途中で投げ出さないだろうか?
ついそう考えてしまう。
『あなたは司令官には向いていませんね、参謀とかの仕事をするには優秀な働きをするでしょうが……』
メイレナからもダメ出しがでるくらいだ。
俺は奥歯をかみながら言う。
「それでは、皆さん今回の作戦には全力を尽くしてください。よろしくお願いします」
これ以上言いたいこともあったが、それらの言葉を飲み込んで、俺はそう言った。
「それでは、みなさん、よろしくお願いします」
メイレナは俺の言葉が終わると、すぐに言った。今も怒りで震えている俺に対して助け舟を出してくれた感じだ。
俺は、人を率いる事がこんなに神経をすり減らすことなのだと実感した。




