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適当男の転生軍師  作者: TUBOT
学園編
54/132

男の友人が欲しい……

「まったく真面目くさっていて面白くないのよ私にも許嫁がいてさぁ……」

『まさかこのパターンは……』

 俺は頭の中で考えた。

 絶対デルクトだ……この子絶対にデルクトの許嫁だ……

 俺がそう考えているのを読んだのか? シィは思いっきり笑いを堪えていた……

「デルクト=シャレイって知ってる? この学院の生徒会長をしている奴なんだけど……」

 やっぱりか……

 俺は心の中でそう思った。

 隣にいるシィは相変わらず口を手で押さえてクスクスと笑っていた。

「何? この子? 何か面白いことでも言った?」

「気にしないでください」

 ティーナに向けてそう言った。

 身を引いたティーナは続けた。

「こうやって悪役を演じていても根の部分は優しくってさ、そういうのにキュン! ってくるのよ。ロドム君はまだ小さいし恋愛対象としては考えられないけど……」

「悪役を演じているつもりはないんですが……」

 うんざりした。シィは俺の心の中を読んでかまだクスクス笑っている。

「なははー……ロドム君はいい悪役っぷりだよ! 『こいつらを噛み殺せ!』って言葉には久々にシビれたわぁ……」

「あの言葉か……」

 そう言った事を思い出した。

「男ってのは真面目なだけじゃいけないんだよ! 暗い影があったり、エスっぽいかも……なんて感じるくらいがいいんだって!」

 ティーナは言う。

『そういうふうに見られているのか……』

 こりゃ男子連中からも嫉妬されるのは当然か……

 俺がそう考えている所ティーナは俺の手を掴んだ。

「ロドム君の次の授業は補助魔法の実践でしょう? 一緒に行こうよ」

 そう言われ俺はティーナについていった。


「いるよな……なんかそんな気はしてたよ……こうなるんじゃないか? って……」

 うんざりしてそう呟いた。当然のごとく実践の授業にはデルクトもいた。

 この学院のシステムは自分の好きな授業を選び。その講義を受けて単位を取っていく。前の世界の『大学』に近い形の授業だ。

 上の学年の生徒と一緒に授業を受ける機会もある。

 デルクトと一緒の授業を受ける機会だってある。

「むっちゃ睨んでくる……」

 デルクトの俺を見る目は冷たいものであった。間の悪い事に教師から『三人組を作る』ように指示が出たのだ。俺とシィとティーナの三人で組を作ることになる。

「男友達を作らないと……」

 俺は心底からそう思った。

「なぁに? 私達じゃ不満? 女の子に囲まれてるなんて、こんな幸せそうそう味わえないよ」

 俺の背中をドンドンと叩きながらそう言うティーナ。俺はそんなものは気にせずにデルクトの方を見た。

「もう、吹っ切れたらいいんじゃないですか? 八方美人は四面楚歌になります。友達は選んだほうがいいですよ」

「よく、十歳でそんな言葉を知っているな……」

 あとでよくよく考えたらこの世界に『四面楚歌』なんて言葉があるのに驚きだった。中国の故事成語である。この世界にも昔楚と漢の戦いがあったのだろうか?

「余計な事を考えないでください……そんな細かいことをいちいち……」

 シィが俺に向けて言う。

 そうだな……俺が考えないといけない事は山ほどある。この険悪になったデルクトとの関係を、どうやって修復すればいいかだ。

「だから、このまま突き進んでいけばいいのに……」

 シィはそう言う。

 女の子に囲まれるのは確かに悪い気分じゃないが限度がある。この圧倒的に偏った男女比の付き合いはどこかで打開をしたいところだ。

「男友達がほしい……」

 俺は言う。

「ほら……いきますよ」

 俺の事などもう無視する事に決めたようだ。シィは授業で教わった通り俺に向けて魔法を打ち出した。それは無属性の魔法だ。

「我が力の鱗片が矢となる」

 スフィアアローという名の魔法だ。これは誰でも使える魔法である。

 威力は低いしその割には使う魔力がそこそこ高い。この程度の攻撃魔法では攻撃魔法を使える事にはならない。

 この授業で習うのは魔法の正確性だ。十分に狙った先に魔法を撃つ事ができるかである。

「隅でやる事にしよう……」

 俺は二人にそう言った。シィは俺の言葉の意味がわかった感じだがティーナはわからない様子だ。

 すぐにわかるさ……

 俺はコートの隅で校舎の壁を背にしながら周りに気を配ってティーナに向けて撃つ。

「おおー……激しいね。なんだか胸が熱くなってきちゃうよ……」

 誤解を受けるような事を言わないでくれますかね……

 ティーナがケラケラ笑いながら言うのを聞いて、周囲の男子は一斉にこっちの方を見た。

「どしたの? ロドム君?」

 ティーナは俺に向けてそう言う。

 彼女は天然なのか?

 それとも、狙ってやっているのか?

 周囲の男子の神経を逆なでするような事を言う。

 学院長に釘を刺されているんだよ……騒ぎを起こさないようにって……

 俺を狙って撃ってくる奴とか出てくると思って周囲の事を警戒した。

「ロドム様人間不信になっていますよ……」

 うんざりしたような声で言うシィ。

 これくらい警戒をするくらいで丁度いい。シィは人間の嫉妬や悪意について鈍感すぎる。これくらいの事は誰でも考えることだ。

 自分の方に魔法が飛んでこないかを、警戒をしながら授業を受け続けた。

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