ファンクラブができるのも、大変だ
「さっきの話は、できれば聞きたくなかったな……」
レリレンが苦悩に沈む姿を見た俺は、いくらなんでもさすがに『レリレンに悪い事をしたかなぁ……』とか思ってしまう。
「あなたがそんな事を考えるのはらしくないですよ。今回の事はあなたには全面的に責任はありません」
そうシィと話し合いながら教室の扉を開けた。
教室に入ると教室の空気が固まった……
友人と話をしていたり教科書を読んで予習をしていた生徒達全員は一瞬俺の方を見る。すぐに顔をはずし会話に戻っていく。
「なーんだ……この反応……」
明らかにみんな俺の事を鬱陶しそうにして見ている。
「そのうちみんな分かってくれますよ……」
シィは言う。ただの慰めであるとはわかっているものの素直にその言葉には嬉しくなる。
「ロドム=エーリッヒ……早く席に付け……」
まだ授業が始まるまで数分あるというのに俺の後ろに立った教師が言う。
「はい……ただいま……」
一番近くにある空いている席に座った。
その隣にシィも座る。その様子を見た周囲はまた俺達の事を一度見る。
「俺が何をしたってんだ……」
俺は小さくそう言うがシィは俺の隣で口に人差し指を当てた。いわゆる『し~っ』だ。
「それでは今から授業を始める……」
まだ数分の時間があるというのに教師はそのまま授業を始めようとする。数分の事だし別にかまわないが……
教師の声で生徒達はそろって机に座った。
規律は取れているようだ。ついさっきまで駄弁っていた奴らも、授業が始まると大人しく教師の言う事を聞く。
「ロドム=エーリッヒ。昨日はお疲れだったようだがちゃんと起きてきたようだな……」
俺がここに座っているのに不満でもある感じだ。この教師は俺の事を快く思っていない。それが一発でわかる。
「教師にも敵がいるのか……」
俺は小さな声で言う。
「あの教師……いかにも女の子に縁がなさそうに見えますからね」
俺の隣のシィが言う。
「それってなんか関係あるんですかねぇ? シィさん?」
関係があるというのは俺でも分かっている。いつも俺の世話をしてくれる女の子二人がいつも俺にくっついており、他にもファンクラブまで出来上がっているのだ。周囲から疎まれる理由は十分にある。
「もてない男のひがみですね……」
「やかましい」
余計な事を言うシィに、俺は言った。
「ロドム君……女の子にはやさしくしないといかんよ……」
教師がそう言ってくる。何が気に入らなかったのか分からないが俺の事を敵視しているようだ。
もう一度言う。飽くまでワカラン。さっぱりだ。
「まったく、ああいう輩は……ロドム様が女の子を雑に扱うのを見てイラッときたんですね……」
「だから言わんでいいというのに……」
結局何をしてもああいう輩の癪に触ってしまうという事だ。
『もう、何も言わないでくんない……?』
俺は心の中でそう思った。そうするとシィはこくりと頷いた。
俺の様子を伺っている教師は俺のことを一瞥すると教卓の方に戻っていった。
『やたら、俺の事を指定してくる……』
授業の途中にやたらと俺を指差してくる教師。
「先天的なものである各自の属性の中で、地、水。火、風のエレメントタイプの属性を持つ者は全体の何割だと言われているか? ドム=エーリッヒ。いってみろ」
「大体八割だと言われています……」
俺は答える。
予習をする事はシィに思いっきり叩き込まれている。
「ちっ……そのとおりだ。ほかの属性は希少であるものの……」
『今、ちっ……って言った』
俺はそう考える。
教師の態度は完全に俺に敵対的だ。シィは何か言いたい事があるかのようにして横目で俺の事を見ていたが、俺はその視線を感じつつも無視をした。
また教師の神経を逆なでするような事を言いそうなんだもん……
授業が終わると俺は教室から出て行った。
「廊下に出ると突き刺さってきた視線から解放されてほっ……とするよね……」
「だめですよ、そんなものに尻込みしていては……こうなってしまったからにはどうしようもないです」
ん? シィはこの事に一言ある感じだぞ……
「どうすればいいと言っている?」
いろんな質問をすっとばして俺はシィにそう聞いた。シィは『そう聞かれるのを待っていた』といった感じで廊下を歩く俺の前に出て言う。
「もうこうなったら仕方ないのでこのまま突き進んでいけばいいと思います」
「ボクは『女の子を侍らせている嫌な奴』としてこれからずっとやっていった方がいいと?」
そういうワケにもいかないだろう……そう思った俺だが、シィは、俺なんかよりも現実的にこの状況を見ていた。
「いいじゃないですか。ファンクラブという形をとっていたとしても結局はただの『友達』ですよ。いいじゃないですか? ただ『友達はいっぱいいるだけ』って考えておけば……」
無理のある解釈の仕方だ……そう考えるがそれを読んでいるシィは首を横に振った。
「ですが周囲の人達はロドム様の事を完全に敵視していますよ。今の状態からただの生徒になる事なんて不可能だと思いますか?」
そうシィに言われて周りを見回す。
そこでファンクラブの一人であるという子と目が合った。
「ロドム君!」
大きな声で名前を呼ばれる。
その子は俺に向けて走り寄ってきた。
「ねぇねぇロドム君。次の授業は何? よかったら一緒にいこうか?」
そう言い俺の手を握ってくるその子。
「ロドム様……公衆の面前でそんな事をするのはいかがなものかと……」
「ついさっきまで、俺はこのままでいいって言っていたよね!?」
シィの機嫌が悪くなった理由は俺でも分かっている。俺達のやり取りを見たその子はクスリと笑った。
「シィちゃんもかわいい……」
その子はそう言ったのだ。
「自己紹介してなかったね。私はティーナ。ファンクラブ会員番号二番よ」
会員番号とは言うがまだファンクラブは数人しかいなかったはずだ。
「私が一番遅いの会員になるのがね」
のほほんとしながらいう。
「なんであなたはファンクラブの会員に?」
俺は聞いた。ティーナはうーん……と考え、すぐに言う。
「ロドム君が気に入ったからに決まってんじゃん。私の周りには、こういう子とかはいなくてさ。けっこうかっこいいよ。あと数年経ったらとかじゃなくてね」
そう言うティーナ。彼女は自分の周囲にある男子に何か不満でもあるみたいだ。




