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適当男の転生軍師  作者: TUBOT
学園編
34/132

デイナの案内で学校を見回る。フェリエが不埒な事を考える

「こちらがエントランスホール。いろんな場所に行くにはここを通らないといけません」

 デイナが言う。デイナはこれから寮に向かうらしい。

「ここの学園の寮は特殊なルールで生徒をを分けています」

 魔法学院は本人の性質によって生徒を分けている。攻撃型かそれとも補助型かと、いった感じに適正に合わせた部屋に向かうらしい。

 フェリエは攻撃型になりシィは俺に合わせて同じ型の部屋に入ることになるだろう。「なんですの? 私とロドム様は一緒にはなれないのですか?」

 フェリエが言ってくる。こういう時のフェリエはかわいい。俺の腕を取りうるうるした目で俺の事を見つめてくる。

 見た目は俺よりも年上に見えるが、やはりこういう行動をとられると、『フェリエはやっぱり十歳の女の子なのだな』などと思えてくる。

「このメイドとい同じ部屋なんて許せませんわ!」

 そう言ってシィに向けて行ったフェリエ。

「フェリエ様。学校の中では静かに」

 そうデイナに言われる。

「どうにしろ女子と男子が同室なんてありえません。男子部屋と女子部屋は分かれていますよ」

 俺とシィが一緒の部屋に通される事はないらしい。

 そこまで言っても不満そうなフェリエ、ジトリとした目で俺の事を見た。

「それはそれで心配ですわね。他の同室の者がロドム様に手を出さないとは限りませんわ」

 そう言われ俺はケツの部分が恐怖で締まっていく。

「男性同士ですよ?」

 シィが言う。フェリエは首を横に振った。

「信用できませんわ。ロドム様は女の子にも見えるくらい綺麗な顔立ちをしていますもの。そういう男に目をつけられる事だって……」

 俺のケツがそれでさらに締まった。まだ十歳のフェリエがそんな情報をどこから仕入れてきたのだろうか?

 いずれフェリエの家の者にフェリエが普段どんな本を読んでいるか、聞いてみる必要があるようである。

 この世界にも薄い本があるなどと言う、最悪の事実が明るみに出る事はないと信じたい。

「次はグラウンドです」

 デイナがそう言う。そう言われ俺たちはデイナについて学校の外に向かっていった。


「ここは魔法の演習場です。いま魔法の訓練をしている人がいるでしょう?」

 デイナが指さす先にはこの学校の生徒が遠くにある的に向けて魔法を放っているのが見えた。

「ここを使えるのは中等部以上の生徒だけです。今日から入学の初等部のロドム様は一人でここを使うことはできません」

「一人で? 誰かと一緒なら使ってもいいということですか?」

 俺はデイナにそう聞く。

「誰かといっても誰でもいいというわけではありません。教師が付き添うか、それとも中等部以上の生徒が一緒にいるかです。教師が生徒のためにわざわざ腰を上げる事はそうそう無いので、中等部以上の先輩に付き添ってもらうのが一番多いですね」

 中等部以上の友人を作るべきという事だ。

 俺の魔力は同年代と比べてたしかに高いだろうがそれでも満足はしていない。俺はもっと魔力を上げなければならない。

 それは将来フェリエに尻に敷かれないためだという、悲しくて切実な理由がある。

 軍師としての勉強もしなければならない。ほかの科目はいくつ落としてもいいから、軍師として必要な教科では一番になれと親から言われている。

 学校にやってきても気の休まる時はないのだろう。

「教室に向かいましょう。授業などはやっていないので好きに見回ることができると思います」

 デイナは教室の中を歩いて行った。


「基本教室。特殊な施設が必要ない授業はここでやります」

 デイナがそう言うと俺は周囲を見回した。

 階段で机の位置が調節されており階段状になった机は、黒板から遠くになるにつれて高い位置になっている。

 この机にはなにかの彫刻がなされており高価な机と椅子なのかと思う。

「ここで忘れ物をするとみんなのさらし者になりますよ。この前テストをここに忘れた生徒がいてその生徒は『一桁君』なんてあだ名をつけられていました」

 一桁君?

 テスト用紙を見てそう言われたのだったらその生徒の成績がなんとなく察することができる。

「気を付ける事にしますね」

 俺はそう言う。特に人に見られて後ろめたい物は無いが人に見られるのは気持ちのいいものじゃない。

「ロドム様。何か人に見られたら困る物でもあるのでしょうか?」

 フェリエが言ってくる。

 いやらしい子だな。そんな事を聞いてくるなんて。

「フェリエ様こそ人に見られたらいけないものが部屋にゴロゴロしているではありま……」

 シィがそこまで言ったところフェリエはシィに食ってっかかった。すぐさまシィの目の前にまで行き、シィの事を見下ろしながら言う。

「言ってないですわよね? 特にロドム様には?」

「さすがにあんな事は言えません。洒落にならなすぎです」

 シィが言う。顔がニヤついているのを見るととてつもなく恥ずかしいものでもあるようだ。

 目が語っている『あんなものロドム様に見られたら生きていけないでしょうからね』と。

 俺は人の秘密を家探しするような趣味はない。この事は特に気に留めないでおこう。

「特別教室には鍵がかけられているので中に入る事はできません。機会があったら見る事も出来るでしょう」

 そう言いデイナは教室の外に歩いていく。

「次は食堂と購買です」

 そう言うデイナは先に歩いて行った。


「ここは食堂です。ここではバイキング形式で好きな料理を取って食べることができます」

 今は人がいない食堂、食堂の奥の厨房では調理師達が忙しそうにして今日の夕食を作っていた。

「ここだけの話ですけど」

 そう言い、デイナはフェリエとシィに顔を近づけて耳打ちをした。

「ここでは数量限定でデザートが出されます。あまりにおいしくてすぐに無くなってしまうので並ばないと食べることができないんです」

 そのため、食堂が明く前から女子が長蛇の列を作るらしい。

「この事は一部の人しか知りません。混雑を避けて遅くやってくる男子なんてデザートの事を知らない事も多いです」

 デイナがそう言う。

「どれくらい前から待つのですの?」

 フェリエが聞いた。

「二時間以上前にこの食堂に並んでいないと買えません。今でもすでに並んでいる子もいますよ」

 そう言い、デイナが食堂の入り口を見るといくらか並んでいる生徒の姿があった。

「あ! デイナ! どうしたの? 今日は部屋に行ってもいなかったかと思えば、見た事のない子達と一緒にいるじゃん」

 その生徒がデイナに声をかけてくる。

「ごめん。ディラッチェ様の親戚の子の出迎えをしなきゃならなくなったの」

 そう答えるデイナ。

「なら、私があなたの分まで食べてあげよう。今日はバニラムースのケーキだからね」

 そう答えるデイナの友人。

「失礼しました。これから教職員室に向かいます」

 そう言いデイナは次の場所に向かっていった。

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