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INNOCENCE  作者: ねこさん


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4/4

初めての協力戦

人は頑張らないといけない時があるけど、その度に一本の鎖が心に巻かれちゃう。少しならいいけど、放っておくと沢山できて、心が締め付けられてしまう。

だから、定期的にリフレッシュして、鎖を取ってしまわないと。人生ゆるーく行きましょうぜ。d( ̄  ̄)

そんなわけで、第4話始まりまーす。

「なるほど、武器ね…」


広場の方にみんなで集まり、ソラとアスは自分達の武器のことについて話していた。 

最悪素手などで戦えないこともないのだが、別に武闘家を目指していた訳じゃないので、そこまで体術には詳しくない。  


「生半可な物じゃダメだよ、俺に関しては魔法剣を使うんだから、それに耐えられる剣じゃないと。」


特にソラの魔法剣は、ただ魔力を剣に纏わせるという行為よりも強力な威力を生み出すのだが、その反面で武器の耐久値を大きく削ってしまい、すぐに壊れてしまう。

アスは魔法剣を使えず、ただ剣に魔力を纏わせているだけなのだが、それでもただの鉄の剣には負荷が大きい。

それに加えて年季も入ってるので、そろそろ買い替え時なのだ。 

二人の話を聞いていたレイナは、自身の金髪の髪を弄りながら、悩ましそうに口元へ指を当てる。


「でも、魔素加工のされてる武器は、結構値が張るのよね…」


「だから、早くギルドに行かないとな…依頼でとっとと金を稼ぐか、報酬の武器を貰うのもアリだな」


そんな訳で、彼らはこの街のギルド支部へと足を運んだ。建物の中は様々な声で賑わっており、依頼を受けようと受付嬢と話す者や、建物内にある酒場で、冒険者達が酒樽を片手に世間話に話を咲かしていたりもする。


「いらっしゃいませ、ご用件をどうぞ」


近づいてきたソラ達に対し、カウンターの台を挟んで立つ優しそうな眼鏡のお姉さんは、にっこりと笑ってこちらに微笑んでくれた。


「どうも、俺たち冒険者になりたいんです。はい、四人全員です!」


ソラの後ろに立つ3人にも目を配り、未来有望な若手がまた現れたと、その受付嬢は満足そうに頷いていた。


「ライセンス登録ですね。では…この書状は?」


ソラ達を冒険者にする何らかの手続きを進めようとした彼女は、ソラからある一枚の黒い封筒を差し出された。

その特別な封筒の裏には"ギルド以外での開封を禁ずる"とも記されている。中にある紙には長ったらしい文章と共に、右下の端には赤色の判子で押した、特徴的なマークがある。


「父さんが書いた物らしくて、ギルドに着いたらこれを渡せって爺ちゃんも言ってたから。」


受付嬢は最初は何気なく紙の内容をよく読み流していたが、途中で顔色を変え、眼鏡を付けたり外したりしながら、その文を読み終えた。


「ギルドマスターからの書状…!まさか、この方々を特例で最初からBランクに?…いや、その前に、あなたがギルドマスターの息子様?!」


その驚きの声に周りの冒険者達から注目されるが、受付嬢はなんでも無いと皆に取り繕い、ソラ達の方に目を向ける。


「ひとまず、応接室にお越しください。すぐにここの支部長を呼んで参りますので!」


そうして、四人はこの建物の奥にある応接室へと通され、ソファに座って待っていると、先程の受付嬢と共に、ここのギルド支部のリーダーである年若い男が入ってきた。男はソラ達の向かい側にあるソファにテーブルを挟んで座り、自分達の長である息子を、興味深そうに眺めていた。


「君たちが、ソラ君とその仲間のみんなだね。僕の名前はロイ、気軽に呼んでくれて構わない。」


男は受付嬢から預かった書状を眺め、そこに書かれてるのが確実にカエルム本人の直筆とマークであることを確かめた。


「あぁ、確かにギルドマスターの文字とマークだ。まさかあの人に子供が居るなんてびっくりだよ。いや、今はこの話は置いて、ともかく君たちのライセンス登録についてだ。ただその前に、この手紙にも書かれていたんだけど、ちゃんと実力があるかのテストもしないとね。」


男はそう言って、まだ何も映ってない写真と共に、クエストの内容について書かれた紙を差し出す。


「ここにも書いてあることだけど、この街から西の方にあるゴーストビレッジ。これを君たちのパーティで解決してきて欲しい。もちろん報酬も出すよ。君たちの要求に沿って、出来る限りの物を出そうと思う。受けてくれるかい?」


「ゴーストビレッジ…聖騎士団には頼まないのですか?」


レイナの言う聖騎士団とは、教会が持つ武装勢力であると同時に、ゴーストビレッジなどの死霊がのさばる場所を浄化するために存在している。


「そうだね。でもわざわざこの辺境に聖騎士団を呼ぶのはコストが高いし、それにゴーストやゾンビなんかは昼間には出没せず、夜だとしても村を中心とした一定距離から離れることはないから、被害も出にくいんだ。だから、いっそのこと、クエストとして冒険者の誰かに解決してもらった方が良いと思っててね。」


ふむふむと頷いていたソラは、その申し出を了承することにした。


「その話乗った!だけど、ちゃんと報酬は弾んでもらうよ。」


ロイの中で、ソラという少年のどこか惹かれる程に前向きな感じは、あのギルドマスターを彷彿とさせる。

それに、笑顔を作った時なんかは父親にそっくりだ。


「じゃあ、任せることにするよ。ちょうどシスターの子も居るようだし、浄化もよろしく頼むね。それも終わったら、この魔影紙で景色を複製して、任務達成の証拠として持ってきて欲しい。やり方も今のうちに教えておくよ。」


ロイはポケットからテーブルに置かれている写真と同じものを取り出すと、目を閉じて何かを念じる。すると、彼の手に持っていた空白に、ロイの視点から見た、ソラ達とその背景が確かに写っていた。


「へぇ〜、そんな感じなんだ。よしよし、夕方には出発して、一狩り行ってくるよ。」


ソラは左右にいる3人にも目を向けるが、誰も反対はない。そんなわけで、彼らは初めてのクエストを承った。

ただ、夕方まで時間はあったので、ひとまずはあの宿屋に戻り、それぞれ体を休めることにした。


「ちゃんとレンタルで剣も貰えて良かったよ。ゾンビとかとやり合うなら、さすがに素手だと危ないもんね。」


ふかふかのベッドで横になるソラは、借りた剣をまじまじと見つめている。アスも壁際に持たれるようにして座りながら、今晩に使う剣を軽く上下に数回振った。


「しかしゾンビにゴーストか、確かゾンビは頭を潰せば良いんだったか…ゴーストは、魔法か聖水を塗った武器でやるんだったよな?」


村に居た時も、エリスの修行で何度か魔物を狩っていた事もあったのだが、アンデッドを相手にするのはこれが初めてだ。なので、表面上は二人とも余裕だが、初めての敵とやり合うのは、少し緊張してしまう。


「いっそ、精神統一しとく?」


「あぁ、俺も同じことを考えてた。」


二人は頷き合い、部屋の床にあぐらを掻くようにして座ると、両膝の上に手を広げるようにして置き、ゆっくりと目を閉じる。静かな空気が部屋の中を支配し、二人の心を徐々に落ち着かせていった。

二人がそんな風に座禅を組んでいる隣の部屋で、レイナとエリティアは、今晩向かうゴーストビレッジについて話していた。


「数百年前に魔王に滅ぼされた村の一つか…今もあいつの爪痕は、この世界に残ってるのね。」


かつてリディウス達と共に魔王の支配を終わらせたエリティアだが、全てを守り切れた訳ではない。何度か残酷な光景も目にしたこともあれば、手を伸ばしても救いきれなかった命もある。そして、今夜に自分達が行く場所も、その過去の惨劇に囚われた者達が跋扈しているのだろう。


「だから、私たちがお助けしないと。今も過去の鎖に繋がれた人がそこにいるなら、私たちはその人達に安らぎを届けてあげなくちゃ、鎮魂歌をね。」


レイナは祈るようにして手を組み、にっこりとエリティアに笑いかける。


「レイナは優しいわね。それに可愛いし、まるで一国のお姫様みたい。昔、貴方に似た人が本当に居たのよ?」


レイナは照れ臭そうに手を振りながら、金髪の毛先を指で弄っていた。彼女はその恥じらいを誤魔化すために、自分の方からも話題を出してみる。


「そういえばエリティア、あなたが付けてるそのネックレス、なんだが不思議ね…」


「そういうレイナこそ、綺麗だと思うわよ。」


そう言って、彼女達は互いのネックレスを交換する。

レイナのネックレスは極彩色の輝きを放つ宝石が付けられている。それは言葉には形容出来ない程で、この世に二つともないかもしれない。

もう一方の、エリティアのネックレスにはめ込まれた石は、黄色、白色、赤色、緑色の四つに分かれたものがくっ付いており、エリティアの髪色と同じ白い色だけが、魔力を帯びた光を放っている。


「生命石と言ってね。その人が流す魔力によって色が変わるの。そうすれば、魔力を流した人が近くにいると、その生命力によって輝くから、私以外にもリディウス達との石を4人分に砕いて、ネックレスを作ったの。戦いの際に分断することもあったから、生存確認として使ってたわ。何より、これは彼らとの永遠の絆の証でもある…」


だが、もうその石は白い輝き以外を放ってはいない。

あの城で数百年ぶりに目覚めたエリティアにとって、それがどんなに辛い事実だったか、レイナは思わず胸がきゅっと締まる。


「そんな悲しい顔をしないで、なんせ今の私には、あなた達が居るのだから。」


エリティアは部屋にあるベッドに腰を下ろすと、柔らかく安心感のある声をレイナの耳に届けていく。


「ソラに助けてもらったあの日から数日は、一人きりの時に泣いてたの。泣いて泣いて…自分の無力さを思い知って、でも過去を振り返るより、前を向かなきゃって。あの人達はもう居ないけど、せめて想いを受け継いで、進んでいかなくちゃいけないわ。もちろん、貴方達と一緒にね。」


「頼りにしてくれてるのね。なら仲間として、ちゃんと寄り添わせて。いまさらだけど、せっかく同じ女の子なんだから、仲良くしなきゃ損だし。」


そう言って、レイナは真っ白な艶のある髪に手を伸ばしきた。最初は少し戸惑っていたエリティアだったが、このような明るく距離を詰めてくる感じに、明るい笑顔を浮かべていた。


「よかったら、今度どこかの街で一緒にお茶でもしない?

この時代のスイーツが、どんな物か味わってみたいわ。」


「もちろん、美味しいもの、沢山知ってるから!」


二人の少女は笑い合い、ささやかな約束を結んでいた。

そうして時間も過ぎて日が沈めかけた頃となり、皆は外で合流して、目的の廃村まで移動していた。


「ふっふっふ、覚悟してろよオバケども!」


彼は借りた剣を高らかに上げながら、先頭を景気良く歩いていく。あの精神統一が効いたらしく、今じゃ不安も緊張のカケラも残ってない。


「レイナ、聖水の瓶は4人分持ってきてくれたか?」


「うん、忘れてないよ。はいこれ。」


アスの呼びかけに対し、レイナは細長い筒のような瓶を、皆にそれぞれ手渡した。

中には聖職者によって清められ、魔力を浴びた水が揺らいでいる。


「そういえば、エリティアってどのくらい強いんだ?

仲間として、どのくらいの戦力になるかは把握しときたい。」


その問いかけに対し、エリティアは苦笑いを浮かべながら答えを出す。


「実を言うと、"今の私は"そこまで強くないの…最低限の回復魔法と支援魔法、光の魔法を使えるくらいかしら。」


あの魔王を撃ち倒した勇者の仲間である彼女が、実際はそこまでの強さを有していない事に3人は驚いた。

だが、それでも今まで伝説の戦いを側で見てきた経験者であり、少しでも戦える実力があるというのはありがたい。


「エリティアは俺達がピンチになったら助けるくらいの感覚でいて。なんせ、まだまだ実戦での経験値が足りてないんだから。」


「じゃあ、前衛は安心して任せられるわ。期待してるからね。」


その言葉を聞いてニシッと笑うソラの顔は、この暗くなってきた中でも、確かに輝いていた。

しばらく薄暗い平原を歩き続け、みんなで楽しげな会話をしながら進んでいると小さな森が見えている。そこに足を踏み入れると、今までの何ともなかった空気感が確かに変わった。

辺りには不自然に霧が立ち込め、不安を煽るような澱んだ雰囲気となっている。


「なんか震えてきた、これが武者震い…?」


「んな訳あるか、怖いんだろ。」


鳥肌を立たせながらわざとらしく震えるソラに、冷静なアスのツッコミが軽く頭へと向けられた。


「あれ…見てよ、あの子誰だろ?」


ソラが暗がりの中で指差した先には、小さな女の子と、子犬の姿が見える。

ソラ達の聞いた女の子は、子犬と共に奥の暗闇へと走り去って行った。

こんな人気のない場所に、一人の幼女と犬が居るなんて、奇妙以外の言葉が思い浮かばない。


「……誘われてるのかな。用心した方が良いわね。」


レイナは無意識にアスの背に隠れながら、ゆっくりと後をついていく。


「準備しろソラ、いつでも戦えるようにな。」


アスの言葉に頷いたソラは聖水の瓶の蓋を開けた。シトシトと聖水を剣の刃に滴らせ、二人は戦いの準備を整える。

奥に進んでいくと、月明かりに照らされた広場が見えてきた。だが、そこには人の気配なんて全くない。

あるのは恐怖を引き立てる静けさと、ボロボロになった家屋などだ。さらに突然、ソラ達の耳に冷たい風と一緒にある声が響いてくる。


「クイ…ニクイ…マオウガニクイ…!」


「コワイヨ…イタイヨ…クルシイヨ!」


おそらく、この村で過去に殺された者達の怨嗟の声だろう。それが今、この廃村の来訪者であるソラ達に向けられている。


「来るぞアス、構えろ!」


気がつくと、彼らの周りをガイコツのような顔をしたゴースト達が取り囲んでおり、それに加えて、地面から呻き声をあげ、腐った足を引き摺る屍達が向かってくる。


「まずは挨拶からだな、魔炎弾《フレアボム》!」


ソラが5本の指先に小さな炎の塊を灯すと、それをゴーストやゾンビなどに投げ付け、時間差で爆発させた。

確かに威力はあるのだが、まだまだ彼らを取り囲む数は変わらない。むしろゾロゾロと湧き出てくる。


「ソラ、さっさと蹴散らすぞ!」


「合点!エリティア、レイナ、下がってなよ。」


ソラとアスは剣を構え、そのままアンデッド達を薙ぎ倒して進んでいく。二人の連携力はとても息のあったもので、互いに向けられる攻撃を防いであげつつ、的確に一体ずつ手分けして倒していく。


「もう1発、魔炎弾!」


「刃草切り(ばさぎり)!」


再度ソラが魔法を放つと同時に、アスは手に魔力を宿らせ、手刀の要領で横に風の刃を放った。

ゾンビ達の体は刃によって裂かれ、爆発で弾け飛び、ゴースト達もどんどん消失していく。


「やばっ…攻めすぎてた」


だがしかし、前方に意識を割きすぎて、後ろのレイナとエリティアの守りが疎かになっていた。


「レイナ、聖なる守り(ホーリーカーテン)!」


ゴーストのおぞましい手がレイナに届きそうになった直前、エリティアは自身とレイナを包むように、光の結界を展開させた。その中は天使であるエリティアの温かな魔力で満ちており、邪悪なモノを弾く特性によって、ゴーストやゾンビ達が触れると、小さく体ごと吹っ飛ばされている。


「エリティア、助かった…」


そのお礼を言うレイナの表情に迷いがあるのを、エリティアは見逃さなかった。


「レイナも、戦いたいの?」


どうやら図星だったようで、投げかけられた言葉にレイナはハッと驚いた様子を見せると、気まずそうに頷いた。そして前方でアンデッド共と戦うソラ達を見つめ、隣にいるエリティアにも顔を向ける。


「うん…ソラとアスは、いつもあんな風に背中合わせで戦ってる。あなたも、今もこうして私を守ってくれてるのに…私は何もできない。この先みんなでも苦戦するような敵が出てきたら、私は足手纏いになっちゃう…」


その返された言葉にエリティアは少しの間、思考を巡らせていたのだが、自分の中での答えを出して、優しく語りかける。


「エリティアは、すでに回復魔法が使えるんでしょ?

ならきっと、私と同じタイプのはずよ。」


それは故郷の村でエリスからも言われた事に似ており、シスターという職業柄や、癒しの術を使えるなら、光魔法にお前は適性があると予想されていた。

だが、そんな力を自分はこれっぽっちも自覚したことはない。


「なら、戦ってるところだけど…教えてくれないかしら?エリティア、私に護る力を教えて!」


レイナの教えを乞う姿に、コクリと頷いたエリティアは結界を解き、向かってくるアンデッド達に手のひらをかざす。


「この魔法はね、慈愛の心が大事なの…誰かを護りたい、寄り添いたいという純粋な心がね。あなたにもきっと、それがあるはずよ。」


エリティアは言葉と共に、眩い光を敵に放った。

その魔法に浄化されるようにして、みるみるうちに周りにいたゾンビやゴースト達が消滅していく。


「ほらレイナ、やってみて!」


ゴーストの1匹が、彼女達の魂を貪ろうと襲ってくる。

レイナは深呼吸しながら、敵に両方の手を向ける。

自分も仲間を守ってあげたい、共に肩を並べて戦いたいと、ここでしっかりと心に刻む。


「光よ…!」


その一声と共に、彼女の手のひらからエリティアと同じような光が迸る。

光に包まれた幽体は、小さな呻き声をあげながら消失し

た。

エリティアに比べれば威力は劣るが、それは確かに彼女が成長した瞬間だった。


「できた…私にもできたわ!」


その光景を剣を振るいながら見るソラとアスは満足げにニヤリと笑う。


「レイナのやつ、一皮剥けたな。」


「さぁて、俺たちもそろそろ終いにするよ!」


暗闇の中で、少年の片方の瞳に微かな虹の輝きが光る。ソラはアスの方に剣を向けると、その刃に風の魔力を纏わせてもらった。そして、天使に似た魔力を漲らせる。


「伏せろみんな!天界剣"乱風(ウィンディ)!」


アス、レイナ、エリティアは、咄嗟に身を屈めた。辺りを切り払うようにして放たれた風の斬撃が、残りのアンデッド達を根こそぎ切り払う。

全ての敵を片付けた彼はホッと一息吐き、虹色に輝かせていた右目は、剣を収めると同時に元の色に戻っていった。


「お疲れさん、よくやったよ。レイナとエリティアも、ありがとな。」


ソラと同じように剣を鞘に戻したアスは、後衛で頑張ってくれていた彼女達に振り向いた。


「ふふ、私も少しは…成長、できたかな?」


照れ臭そうなシスターは、もじもじと指先をいじっていた。


「ええ、とってもカッコよかったわ。」


レイナの言葉に頷いたエリティアは、ソラ達に側へ来るように言った。

そして、4人で任務達成の喜びを分つように、同時にハイタッチをする。


「へへっ…あっそうだった、君達が居たんだった。」


ソラが思い出したように背後を向くと、彼らをこの廃村に導いた幼い少女が、子犬と一緒に立っていた。そして何か言いたげな表情で、ソラ達に語りかける。


「ありがとう、お兄ちゃん達。私ずっと待ってたの、パパやママやみんなが殺されてから、この村には怖いお化けがたくさん現れて、犠牲になった人もいた。だから、それをやっつけてくれる人を待ってたの。」


そう語る少女と子犬の体は、うっすらと消えかかっている。この村が救われたことで、この世に未練も無くなり、成仏しようとしてるのだろうか。しかし、自分の故郷のために、こうして長い年月を待っていたとは、なんとも健気な子だ。

そんな地縛霊である少女と子犬に話しかけようと、ソラはしゃがみ、目線を合わせた。


「偉いね、今までよく頑張ったよ。」


そっと手を伸ばし、彼は純粋で濁りのない魂を撫でてやった。少女は嬉しそうに目を細め、子犬も彼の手をペロペロと舐め返してくれた。


「お兄ちゃんも、自分の故郷は好き?」


「あぁ、君と同じくらい。幽霊になっても、守ってやりたいくらいにはね。」


少女はソラの答えを聞いて満足したのか、彼の手から離れ、ゆっくりと後ろ歩きでさがり、子犬に対し手招きをする。どうやら、時間が来たようだ。


「ありがとう勇者さん達!生まれ変わっても、あなた達のこと、忘れないから…。」


その言葉と共に、少女は子犬と共に淡い光となって、月夜の中に溶けていった。

健気な二つの魂の最後を見届けた後、エリティアは小一時間かけて祈りを捧げていた。すると、村に漂っていた怪しげな霧や寒気がみるみるうちに消えていった。

そして、ソラはロイとの約束通りに、この光景を魔影紙でしっかりと複製した。

だが、もう夜は遅い。なので、報告は明日にする事にした。4人は来た道を辿って街の宿屋にまっすぐ戻ると、すぐに眠りについた。

程良い戦闘の疲れは、彼らに余計な夢を見せずに、心地よい睡眠をプレゼントしてくれた。


to be continued……


今回も読んでくださった方、初めての方もありがとうございました!

もう今年も残り少ない事に私は恐怖を覚えてますが、みなさんはどうでしょうか?

出来るだけ、年内で少しでも多く続きを書けたら良いなと思ってます。遅れちゃったらごめんなさいね。

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