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INNOCENCE  作者: ねこさん


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新たな旅の始まり

夏って暑いし、冬は寒いですよね

外でも、エアコンに足生やして、歩いて付いてきてくれたらなぁ

そんなわけで、趣味で始めた記念すべき第1話をどうぞ!

それはもう何年も昔、この世界に恋におちた美しい天使と勇敢な勇者がいました、彼らは仲間達と共に魔王を倒し、世界に平和をもらたしたのです

しかし、その平和もまた束の間、魔王の残党達によって勇者は殺され、天使は動かぬ石となってしまいました、死に別れた勇者と天使、彼らはもう永遠に会えないのだろうか...


ここは昔とうに滅んだであろう国の地、

まだ日も登ってない薄暗い頃、そこを一人歩く少年がいた、彼はパンを齧りながら、壊れた家や崩れた瓦礫の場所を興味深そうに回っている

そんな彼の名はソラ

ここから少し離れたところにある、ピスフリという村に住んでいる

歳は17であり、身長は少し高め。

格好は白いシャツに灰色のズボンを履き、首に小さなカバンを下げ、腰には剣を携えている。

性格は明るく、好奇心旺盛で、探検などが趣味である。

それゆえに、わざわざ早朝からこの場所にやってきたのだ


「昔はよく栄えてたって聞くのに、今じゃこんなのになってるなんてな...」


この荒れ果てた景色を見ながら、ソラはどこか寂しげな表情を浮かべる

辺りの建物は壊れ、かつて道路だったであろう場所も分かりにくくなってしまっている

この国も数百年前はよく栄えていたがある日を境に滅んだそうだ、それが戦争なのかある種の災害なのかはよく分かっていない

栄枯盛衰という言葉はあるが、やっぱりこのような光景を見ると落ち込んでしまう。


「とりあえず城の方にも行ってみるか」


前の方を見ると、ツタなどが伸び、ところどころ崩れた大きな古城がある

かつてはもっと荘厳な雰囲気があっただろうが、今じゃお化けなんかが出てきそうだ


「別の入り口を探さないと」


門は閉まってるので、試しに城の周りを歩いていると、ちょうど空いている窓の部分にツタが生えていて、そこをつたってなんとか入ることが出来た。

中に入ると、城内は中々広かったが、瓦礫が落ちていたり、ところどころ床が抜けていたり、絨毯だったであろう物も黒く汚れている

色んな部屋を見て回るが、どこも蜘蛛の巣を張っていたり埃を被っていたりでかなり汚い。これが綺麗だった時代に来たかったものだ。


「お城だし宝物庫とか隠し部屋とかあるかな、さすがにもう誰かしらが持って行ってると思うけど」


そう言いながら通路を歩いていると、城の中庭に出る、そこでは綺麗な花々がわずかに差し込む日に照らされ咲いていた、その花々を憩いの場所だと言うように蝶が数匹ほど飛んでいる、綺麗だと思いながら辺りを見回していると、ふと目に止まるものがあった


「なんだこれ...人?」


それは庭の中央に置かれた天使像であり、首には綺麗な石がはめ込まれた首飾りをぶら下げている

羽の部分などの細かい部分もしっかりと作れており、顔もかなり綺麗だ

しかし、彼女の表情はとても物悲しそうで、まるで誰かに石にでも変えられたかのようだ

あまり芸術品には興味ないが、なぜだか不思議と見惚れてしまう


「綺麗な石像だな。こんなのがあるなんて、っておわ?!」


その場にある瓦礫に躓いて転んでしまい、その天使像を押し倒しキスをしてしまう

口元をさすりながら痛そうにその場から離れた瞬間、不思議なことが起こった

なんとその天使像の部分がみるみるうちに色を塗り直すかのように石の部分が消えていくのだ

いつのまにか石の像なのではなく、美しい女性の姿がそこにあった


「あれ、ここは...?」


まるで、そよ風が透き通っていくような声だ

彼女はゆっくりと目を開けこちらを見つめてきた。

だがそれと同時に、何かを思い出したのか彼女は大粒の涙を流し始めた

天使の像にキスをしたら動き出し、それがいきなり泣き出すというのだ

あまりの出来事の連続で頭がついて来ないが、とにかく彼女の元に駆け寄る


「大丈夫?えっと急にキスなんかしてごめん…」


その声が聞こえたのか泣きじゃくりながらこちらを見上げる


「リディウス...?」


そう呟くなり、まるで何か大切なものを見つけたかのように彼を抱きしめた

しかし、再び顔を見直すとガッカリしたように腕を離し、恥ずかしさからか頬を赤らめた


「ごめんなさい...急にこんなこと」


「いいよ、気にしてないから」


こんな美少女に抱きしめられるなんてむしろご褒美だ。こちらとしてもありがたいと彼は思った。

しかし彼女は以前として悲しそうな表情をしている


「よかったらこれ食べる?」


彼は食べかけのパンを半分ちぎり、彼女に差し出す。

もちろん、彼が口をつけてない部分だ。

少し彼女は戸惑ったが、こくりと頷きパンを受け取ると一口かじった


「美味しい...」


そうして隣に座り、彼女がパンを食べ終わるのを見届けた後、彼は口を開いた。


「名前は、なんて言うの?」


「エリティア…親しい人からは、エティと呼ばれていたわ」

彼女は静かに自己紹介を済まし、彼にも名を尋ねる


「俺…?ソラって言うんだ」


彼はそう言うと、ニコッと彼女に笑顔を向ける

彼女の顔には涙の跡があったが、少しだけ表情が和んだように見えた。


「それ、本物なの?」


彼は興味深そうに、彼女の背中に生えた羽を指差す


「えぇ、本物よ。綺麗かしら?」


彼女はそう言って、少し羽を動かしてみる。

鳥の羽ばたきのように、小さく風を切る音がした。


「すごい…!君は、天使なんだ!」


彼は昔、本で読んだことがある。

この世には三つの世界があり、一つは地上にある人間などが住む世界。二つ目は天使などが住まう天界に、三つ目は魔族や魔物が蔓延る魔界があると。

しかし彼は天使も魔族も見たことがなく、正直半信半疑だったが、ここで遂に本物を拝むことができた。


「でも、なんでここにいるの?」


一番の疑問はそこだ。

天使である彼女は、天界にいる筈だ。

それがなぜ、こんな滅びた国の城なんかにいるのだろうか。 


「それは…その…」


彼女は俯き、とても物悲しそうな表情を浮かべる。

彼女に何があったのか分からなかったが、まだ心の整理が付いていないと、彼は理解した。

そんな彼女を少し慰めようと、彼はカバンの中からある物を取り出す。


「はいこれ、食べようよ」


彼がカバンから袋を取り出し、中を開けると、そこには厚みのあるハムがあった。

彼はそのハムを、一緒に入ってあったナイフで切り取って彼女に渡した。

そうしてそのハムを食べながら、彼女はまた口を開いた。


「ありがとう、少し落ち着いたわ」


彼女は優しい口調で言い、彼に微笑みかける。


「えっ…あっ、どういたしまして」


その笑顔に見惚れたのか、彼は少しぎこちない言葉を返した。


「あなたは、この近くに住んでいるのかしら?」


「うん、ピスフリ村ってところに住んでるよ」


しかし、彼女はその村の名に首を傾げる。

おそらく、その名は知らなかったのだろう。


「私も話をしたいのは山々なんだけど…ちょっと、まだ心に余裕がなくて。しばらくは、ここに一人でいたいの」


膝の上で手を握り、彼女は呟く。

彼は少し迷ったが、遠慮がちに聞いてみることにする。


「分かった。でもよかったら、明日も会いに来ていい?」


「もちろん、いいわよ」


その言葉に、彼女はまた微笑みながら、首を縦に振ってくれた。

翌日、彼女は一人寂しく蝶と戯れていた時。

ソラは何やら本を持ち、エリティアのいる中庭へと走ってきた。


「エリティア、君ってあのリディウスを知ってるの?!」


「えっと、知ってるけれど…どうしたのかしら?」

彼の興奮した様子に、彼女は首を傾げる。


「やっぱりそうだ。勇者リディウス!数百年前にいた魔王を、仲間と共に打ち破った伝説の人!」


そんな彼の言葉に対し、彼女は口を手で覆う。

そのまま彼は熱く語り続ける。


「その仲間に、恋人でありそのパーティの一人であった天使がいたって言うけど…君だよね?」


それを聞いた彼女は、信じられないという風に口を開く。


「数百年…そんなに経ってるの?」


彼女はその事実を認識すると、ふらっとしたように膝をついた。


「君は魔王の残党によって石に変えられたんだよね、だから…」


しかし、その言葉に彼女は首を振る


「私を石にしたのは…リディウスよ。あの時は、そうして貰うしかなかったの」


彼の頭には、その言葉に対する困惑と衝撃が重くのしかかってきた。

彼女は俯きながらも、なぜリディウスがそうしてくれたのかと続ける。


「魔法においての誓約って分かるかしら?

最愛の人を石にし、自分は死ぬという二重の縛りで…彼は私を守ってくれたの。おそらく他の誰にも石化が解けず、リディウス以外は触れられない…そのおかげで私は無事で済んだ…」


「勇者を殺したやつは、誰なの?」


彼女は握り拳を作りながら言う。


「分からないわ…けど、黒い仮面を付けていて、とても強い奴だったのは覚えてる」


こうして伝説の詳細を聞かせると、事実はかなり違っていたようだ。


「でも不思議なのはこの状況、なぜあなたがそれを解けたのか…思い付くとして、数百年も経って魔法の効果が薄まっていた。なんて、理由くらいかしら…」


言われてみれば、それは確かな疑問である。大体そういう縛りを設けた魔法は、それをかけた本人にしか解けない筈なのに、赤の他人のソラが、キスという変な手段であっさりと解除している。


「自分も分かんないや、石化の解き方なんて師匠からも習ってないし。でもよかった、だってあの伝説の勇者の一味の一人を助けられたんだよ!」


彼は自信満々に腕を広げながら、高らかに告げた。そして持っていた本を広げて彼女の隣に腰を下ろす。


「教えてよ、一体君がどんな旅を歩んできたのか」


何はともあれ、彼の明るい言葉に彼女も元気つけられていく。


「分かったわ、教えてあげる」


その日から彼女と語らう日々が続いた。本でしか知らなかった物語の裏にある面白い話、当時の彼女達がどう思っていたかなど、彼は聞いていて飽きず、気がつけば一週間も経とうとしていた。

まだ薄暗い早朝、彼はピクニックで使うようなバスケットにパンやソーセージなどの食べ物を入れて、エリティアに会いに行こうと、家を出ていた。


「ソラ?最近は早いね」


彼が振り返ると、そこにはシスターの服を着こなし、年相応に可愛いと言った子が立っていた。


「またお散歩?それにしては、最近同じ時間に起きるね」


この子の名前はレイナ、彼の幼馴染の一人であり、小さい頃から一緒に育ってきた。

赤ん坊の頃に親を亡くし、そこを村にある教会に拾われて、見習いのシスターとして今日まで生きてきた。


「うん、またちょっと出掛けてくる。アスはどうしてる?」


彼はもう一人の幼馴染、アスという人物について、彼女に聞く。


「私には分かんない。たぶん、師匠さんと一緒に修行中じゃないかな」


「分かった。んじゃ行ってくる」


そんな少しの問答を交わして、彼は一目散に村の外へ出発した。

彼はエリティアから今日はどんな話を聞こうかと、鼻歌混じりで歩いており、ちょうどお日様が大地に顔を覗かせたタイミングで、彼は廃城の近くまでたどり着いた。しかし今回はなぜか、あの可愛い白羽の子が、城の外で彼を待ってくれていた。


「エリティア?!珍しいね、待っててくれたの?」


彼女もまた楽しげに微笑みを浮かべ、コクリと頷く


「ええ、それもあるけど…貴方の村がどんな場所か、見てみたかったの。あの崩れかけの静かなお城に篭ってばかりじゃいけないでしょ?」


彼もそれには賛成だった。村のみんなにも、御伽噺でしか見たことないであろう天使を、ずっと見せてやりたいと思っていたのだから。


「いいよ、行こ行こ!」


彼女を先導するようにして、彼は小走りで時折振り返りながら、綺麗に広がる草原の方へと向かう。

彼女もこの国の惨状を目に残さぬようにし、ただ彼を追いかけていく。

キリのいいところで彼はペースを落とし、ゆっくりと足並みを揃えて風になびく草を踏みしめる。そんな状況の中、彼はエリティアに対し、少し緊張気味にある質問を投げかけた。


「あのさ、リディウスとは恋人として…どこまで進んでたの?」


そう聞かれたエリティアは少しの間、凍ったように足を止めたかと思うと、白い頬を真っ赤に染めて、背中の羽をこわばらせ、目線を逸らした。


「その、手を繋いだりとかハグとか…キスもしたことないの…お互いに、ウブだったから」


その羞恥心に満ちた返答を聞いた彼は、意外という感情のほかに、心の中で良しっ!と言ってしまったが、それがなんだか自分でも嫌だった。なので、その少しの自己嫌悪を拭うために、彼はある言葉をかける


「大切にしてくれてたんだね。ちょっと恥ずかしがり屋な気もするけど…」


エリティアも頬はまだ赤いままだったが、クスクスと可笑しそうな笑いを浮かべてくれた。

ソラがこの楽しい会話が村に着くまでの間、しばらく続くだろうと思っていた時、少し遠くの方からシスターの格好をした女の子が走ってくる姿が見える。それはあのレイナで、何やらすごく慌ててるようだ。


「レイナ?!一体、どうしたんだ」


彼女はずっと止まらずに走ってきたのか、額の汗を拭って、荒い息を整えつつ、彼にその内容を話す。

彼の隣に見知らぬ羽のようなものを生やした女性がいる事も気に留めないくらいの大事なようだ。


「村が襲われてるの!ルクス帝国とかなんとか言ってて、今村の人達を広場に集めてるんだけど、私と肉屋のおじさんは何とか脱出できて、ソラやアス達に助けを呼びにきたの!」


一方その頃…普段、皆で重要な物事を決めたり、好きに集まって話をしたりする村の集会所とも言えるような外の広場で、何人かの武器を持った兵士に囲まれて、村の人達が固まっていた。男達は怯える女や子供達を守るために円陣を組むようにして、震えを堪えながら兵士達と睨み合っていた。

他にも村人達を取り囲む兵士以外にも、取り残しがいないか家の中を確認したり、村の家畜達を大きな荷車に乗せたりする兵もいる。


「ムデン様、これで全部の筈です。他は探しても見当たりそうにありません」


一人の兵士が、この集団のリーダー格であるような、帝国の紋章であるマントを付け、馬に乗った太った男へ告げる。その男は鎧越しでも分かるくらいには贅肉がありそうで、かなり肥えていそうだった。

たるんだその欲深そうな目は、まるで同じ人間である村の人達を、ただ道具としか見てないように見えた。


「ふむ…100近くか、良いではないか。こんな辺境にこれ程の人数の村があるとは。思いもしない収穫だ。では連れて行け。」


その男の指示の下、老人達を残して、若い男や女は列になって、何頭かの馬に繋いだ荷車へと乗らされていく。それに間隔をあけるようにして兵士達が武器を突きつけてるので、対抗しようにも出来ない。

皆はそれぞれ、ヒーローが本当に来てくれるのかと、不安でしょうがなかった。


「ソラやエリスさんはまだなの…」

「クッソ…このままじゃ」


そんな風に村の者たちが連れて行かれようとしてる中、ムデンに対し、地に頭を擦り付ける、この村の村長の姿があった。


「どうかお情けを…この村の者達はどこの国にも属さず暮らす平和に暮らしてきました。金品なら幾らでも、何なら、ワシを皆の代わりに連れて行ってください。」


しかしムデンという男は、馬から降りたかと思うと、その村長の頭を無慈悲にも足で踏みつけ、下衆な笑いを浮かべていた。


「弱い者が強い者に物申すでない。此奴らはこれから、我らの帝国の支配下となり、帝国の繁栄のための人柱となるのだ。金目のものなら好きに貰って行く。それに貴様のような老ぼれの奴隷なんぞ要らん」


だが、男はふと思い出したように、自身が踏みつけにする村長にあることを尋ねる。


「この村、もしくはこの場所の近くに天使に関わるものを聞いた事はないか。教えるなら、この足を汚らしい頭から離してやろうではないか」


自分の長が痛めつけられる光景に我慢できなくなった男達が数人、抵抗しようと暴れはしたが、丸腰では歯が立たず、すぐに武器を使って抑え込められてしまった。だがそんな大人達に代わるように、一人の小さな少年がムデンの前に立った。


「村長を虐めるな!ぼっ…ボクがあい…相手だ!お前みたいな太っちょの悪人なんて、ソラにいちゃん達が居なくても…!」


「トビーくん!ソラにいちゃん達が来るまで我慢して」


そのトビーと言う少年と同じ背丈のの女の子が止めようとするが、その言葉は耳に入っていない。

勇敢で小さな少年は、その巨悪に対して立ち向かおうとしたが、激昂したムデンの鉄のグローブ越しに殴られ、近くにある岩に叩きつけられた。さらには、残酷にも幼い首筋に剣が突きつけられる。

それを見た荷車に乗せられている少年の両親が、なんとか助けようと身を乗り出すが、兵士によって取り押さえられる。


「トビー…!まだ子供だ、やめてくれ!」


「これは、見せしめだ!このクソガキのタマ一つでそれが出来るなら、安いものだろう?」


皆が諦めて目を瞑った瞬間、タッタッタと凄い速さで駆けてくる音が聞こえる。そしてその音は秒を刻むごとにに速くなり、トビーに剣を振り下ろそうとした鎧の巨体を、蹴りでぶっ飛ばした。

それはこのピンチになんとか間に合ったソラであり、トビーを守るように、側へ抱き抱える。


「うわぁぁん!ソラにぃ…ソラにいちゃん…!」


「よくやったぞトビー、さすがはこの村の切込隊長!」


緊張の糸がふっと切れ、涙を流すちびっ子に対し、彼は逃げるように促し、兵士たちに剣を向ける。


「よくやってくれたなお前ら…この村に手を出して、タダで済むと思うなよ?」


「急に訳のわからない奴が出てきたかと思えばふざけやがって、お前らやっちまえ!」


しかし、相手は剣を持ってると言ってもただの少年一人とたかを括ったのか、兵士たちは彼を取り囲んで武器を振り下ろす。しかしその瞬間、彼らの持っていた剣や槍の鋭利な部分にミシミシとヒビが入ったかと思うと、なぜかバラバラと地面に零れ落ちた。


「へぇ〜兵士さん達、いつも戦場でそんな玩具を使ってるの?」


敵の武器を目に見えない速さで使い物にならなくした彼が冗談混じりにニヤリと笑うと、そのまま剣を持ちつつ、拳や蹴りなどのステゴロだけで狼狽える兵士たちを薙ぎ倒していく。

その様子を、ヒーローを村に連れ帰ったレイナと、ソラと共に連れてこられたエリティアが広場から離れた家の陰から見守っていた。


「すごいソラ、あんなに強かったの…?」


「はい、そうなんです。なんせソラは…」


レイナが初対面であるエリティアに説明しようとするが、思わず声を上げてしまう。

気絶したかと思わせて、背後からムデンがソラに不意打ちを仕掛けるのだが、興味の無い者からのアプローチを避けるようにして、最低限の動きで身を後ろの方へと躱した。


「デブでも結構動けるんだね。でも不意打ちはずるいんじゃないか?」


「小僧が…!今すぐ後悔させてやるぞ。お前の守るべき愚民どもの命でな」


別にたいしたことないはったりだとソラは思っていたが、ムデンの持つ剣にはめられていた小さな宝玉のような物から、青白い光が迸る。


「その剣、魔道具か…?」


「ふふ…死ね!」


さらにこの卑怯者は、ソラに対してではなく、この戦いを見守る、離れたところにある村人達のところに、人の頭ほどの大きさの氷塊が何粒か飛んで行った。


「魔法剣…!」


だが、その氷塊は村人達のところに到達する寸前に、ソラの声と共に全て焼き切られていた。ムデンは目を見張る。自身の魔法を一時的に剣にエンチャントさせる技、"魔法剣"。

ソラは自身の炎の呪文によって、剣をメラメラと燃え上がらせていた。

これを使えるということは、彼はかなりの実力者、又は大いなる天賦の才を授けられていることになる。

興奮冷めやらぬこの状況、その事実に追い打ちをかけることも起こる。ソラの黒かった右にある片目が、幻想的な虹色に変わっていたのだ。ムデンはそれを見て、蛇を前にした蛙のように震え出した。


「まさか、虹色の瞳…魔法剣…このガキがありえん?!ありえてたまるかぁ?!」


そのまま、男は狂乱したかのように、ソラに向かって剣を用いた多くの氷塊を乱射するが、全て向かってくるソラの前に切り裂かれていく。


その様子を思わず拳を握りながら見ていたレイナは、先程の話を思い出したように、エリティアにソラが一体どんな存在かを告げる。


「エリティアさん、ソラは…勇者。数百年ぶりに現れた、この時代の、紛れもない英雄なんです!」


エリティアの耳に入ってきた、"英雄" "勇者"という聞き慣れた言葉が、すぅーと耳に入り、目をソラという少年へと注目させる。

今こうして村の人たちの為に悪を挫こうとするその姿は、まさしく自分が心から愛し、かつて共に背中を預けて戦ってきたリディウスと重なった。


「天界剣…紅焔《フラム》!」


ソラの燃え盛る剣が光を放ち、ムデンへと十字の燃え盛る斬撃が放たれ、鎧を粉々に粉砕して地面に倒れさせた。

これは誰も疑うことのない、ソラの勝利だった。


「ソラー!凄かったよ!」


「ちょっ、エリティア?!あはは…照れるじゃんか」


エリティアは感動のあまりにじっとしてられず、戦いを終え、剣を鞘に収めたばかりのソラの手を握った。

その微笑ましい村の人たちに見られて彼は気恥ずかしいが、それでもこのように褒められるのは悪くはない。

彼がまた何かエリティアに話そうとすると、聞き覚えの威圧感のある冷静な女性と、それと同じくらいのクールな少年の声が背後から聞こえてくる。


「ソラ、遅れてすまない…って、やっぱり終わってたか」


「当然だアス。私の弟子なんだ。そのくらいのチンピラ共なぞ、瞬殺して当然だ。」


やって来たのは、レイナと共に肉屋のおやじが助けを呼びに行っていた二人。ソラのレイナと並ぶもう一人の幼馴染の少年、アス。もう一人の女性はそのアスとソラを鍛え、この村の用心棒でもあるエリスだった。


「アス、師匠!あぁ、もう片付けたから安心して」


ソラは二人に笑顔を向けながら、片手間で倒れているムデンやその部下達の手をロープで結んでいく。


「ん…?貴様、まさか天使か?」


辺りの様子を見回していたエリスは、ソラの側にいる純白の羽を生やした女性を真剣な目で見つめながら問う。

そのエリスの指摘に、村の人たちも驚きの目でエリティアを見つめていた。


To be continued……




























いかがでしたか?

よければ、感想やアドバイスなんかを言ってくれれば幸いです。

次の話も、お願いします!(不定期でやっていくから、いつになるか分からないけど)

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