27話『ヒドイン』
エミリア視点です。
このあたりから、プチざまぁ を入れていきます。
休憩時間の教室で、特大ブーメランをかましたエドワード殿下。
気まずい空気を作り出す手腕はクラスメイト全員の心を一つにしたのだった。
だが、エドワード殿下の後ろに隠れた人物が前に出てくる。
ラスボスである彼女が放った一言は、場を絶対零度にしたのだった―――。
という、あらすじを考えてしまうほど、私は動揺していたのでしょうね。
ヒドインもとい、ヒロイン、ナナリーは先ほどのエドワード殿下と私の
会話を気にもしないで、留学生のベリアル様に声をかけた。
「ぇ……わ、私は……ベリアルだ。」
面食らった魔王ベリアル様の返事はどもっている。
チラチラ助けを求める目で私を見るベリアル様がいた。
(ごめん、魔王様、助けられません!)
エドワード殿下も「え?」って顔をしている。
ナナリーの許容範囲が広すぎるよ。
ベリアル様は攻略対象じゃなかったでしょ……。
がっつきすぎなんだよなー。
なんで私こんなにイライラしてるのかな……。
「へー。ベリアルって言うんだ。
じゃあ、アル様って呼んでもいいですか?」
ナナリーが放った言葉はクラスの温度をさらに下げた。
おいいいいいいいいい。 呼び捨てた!? そして、愛称呼び!?
この子は何を考えているの?! 何も考えてないんでしょうね。
私の中の冷静な自分が分析してくれている。
5ヶ月間で学園で習った教養の授業の成果は
ナナリーを少しも成長させていなかった。
ベリアル様も驚きのあまり無表情になっている。
この場に居たくない気分も相まって、私はナナリーに声をかけた。
「ナナリー様、貴族のマナーとして初対面の異性に愛称呼びをすることの
意味を理解しておいでですか?」
ナナリーは私を一瞬睨んですぐに悲しい表情を作って言った。
「エミリア様、どうしてそんなことを言うんですか?
私はただ、お友達を作ろうとしているだけじゃないですか。
愛称だって、仲良くなる方法のひとつですよ?
変な意味なんてないです!」
今にも泣きそうだ。
そうは言うがこの場には、上流階級の貴族が多くいる。
ナナリーの隣にいる人も一応王子様だ。
何も知らない人物が、愛称で呼び合う男女を見てどう思うか?
社交界ではそんな浮いた話が囁かれるだけでもマイナスイメージだ。
最低限の貴族のマナーや常識を身に着けないと、社交界で居場所がなくなる。
この子はそれを理解しているのだろうか? 理解していないんだろうなー。
「無礼な……。」
そこで、黙っていたベリアル様がやっと声を出した。
ボソッと小声だったけど、シーンとした教室ではよく響いた。
「貴様、よくも私に対してそんな口がきけるな」
「「「「えっ?!」」」」
魔王様、怒ってらっしゃる・・・?
底冷えするほどの、心がざわめく声だった。
正直、怖かった。
そして、私の声に重なった驚きの声は4つだ。
そう。4つだ。
私、エドワード殿下、ナナリー。
そして、ナナリーの髪の毛から顔を出している小さな妖精だった。
「私は気分が悪い。失礼する。 行こう、エミリア嬢」
私はベリアル様に手を引かれて、教室を出たのだった。
次は、おまちかねのヒドイン ナナリー視点です。




