26話『初めての授業』
魔王様視点になります。
魔王ベリアルが編入してから1日がたった。
私は、初めて入学した学園にこころが浮き立つ思いだった。
こんな状況で楽しむのはどうかとも思う。
だが、私は学園という学び所にくるのは初体験なのだ。
魔族領以外の人間達の生活にも興味があった。
寮という宿泊施設に生徒たち全員で住み、衣食住と勉学を共にする。
なんとすばらしい場所なんだ。
魔族領ヴェルマは階級制で学び所なんてなかった。
魔族達は、産まれつき頭がいい。
寿命も人間より高く500年ほど生きる。
生活のうえで、家族や周辺にいる者たちが子供にいろいろ教えるのだ。
階級制度。子竜、<中竜、<上竜、<竜魔王 の階級だ。
魔力の強さでランク付けされる。
産まれた瞬間から、みんな階級は子竜階級だ。
魔王の子供であってもかわらない。
生まれてから10年経つと魔力測定を行い、階級を与えられる。
子竜級と中竜級は平民だ。
上竜級だと国を支える重鎮として城で育成される。
竜魔王級だけは別だ。魔王は1人だけ。
どんなに魔力が高くとも、星霊シェイドに気に入られなければ王になれない。
もちろん、私は100年間魔王としていろいろ学んだ。
外交するための他国のマナーも習熟済みである。
隣国のドルステンも同じで星霊ノームに気に入られなければ
王位につけない。他の国もほぼ同じであろう。
パナストレイだけは、複数星霊が加護している。
たしか、原初の星霊とかいう規格外が国全体を守護しているとか。
だが、国皇に付くはずだった星霊の一柱がエレノア姫に憑いてしまったので
あそこの国の事情はわからぬ。
閑話休題。
貴族という身分制度はあるが、私には関係ないな。
ヴォルステイン家の後ろ盾があるので下手な絡みや詮索は無いだろう。
ヴェルマの王子という身分も申し分ない。実際は王だが。
私がエミリア嬢の近くにいてもなんらおかしくない理由だ。
よくやった、ジェバース。
教員に案内された教室に入り、自己紹介とやらをするらしい。
好奇な目線に見つめられながらも、あいさつをすませる。
今日の最初の基礎学科の授業は歴史の授業だという。
「席は親しいものと一緒がいいだろう」という教員のはからいで
エミリア嬢の隣だ。勉学に集中するエミリア嬢は可憐だ。
とてもいい眺めだった。ついつい、じっと眺めていると不快な視線を感じた。
エミリア嬢の斜め後ろの席からだ。
金の髪にブルーサファイアの色の瞳をもつ女のような男だった。
授業が終わり、休憩の時間になった。
「ベリアル様、授業中、私をずっと見つめるのはよしてください」
エミリア嬢は少し疲れていた。
どうしたのだろう?授業でわからないところでもあったのだろうか?
「どうしたエミリア嬢? わからない場所があれば
存分に聞いてくれてもかまわない」
エミリア嬢はさらに疲れた表情を一瞬浮かべたが、
キッと目じりを上げてまっすぐに見つめてきた。
(なんとも、可憐だ。泣きそうな表情に見えるのがまた、可愛らしいな。)
私は、見惚れてしまった。この魔力反応は怒っているのだろうか?
私に怒っているのだろうか? うれしく感じる自分に戸惑う。
「違います!授業中、ベリアル様の視線を感じて、集中できないと
申しているのです!」
そういうことか。
だが、その目線は私だけではなかったぞ。なんて教えてはあげない。
そんな怒った表情も可憐だと思う。
最近のエミリア嬢は変わったからな。
思い詰めていた気質が最近はやわらかく、前向きだ。
「わかった。次の授業ではエミリア嬢を見つめすぎないようにしよう」
「わかっていただけたのなら、結構です」
エミリア嬢は、ほっとしていた。
「エミリア」
そんなやり取りをしていると、私達に声をかける人物がいた。
先ほどの不快な視線の男だ。
やつの隣には、ピンク色の髪の少女がピッタリと張り付いている。
これが、ナナリーであり、リリーナか。
エミリア嬢は一瞬驚いた表情をしたが、すぐに落ち着きを取り戻している。
魔力の反応で言うなら呆れ?落胆のほうだろうか。
「何でしょうか。殿下」
「その男とは、どういった関係だい?」
ん???
何を言っているんだこいつ? という魔力反応が教室全体から感じた。
エミリア嬢も困惑顔だ。
「どういったと言いますか……。
政務室に彼のことを書いた書類が届いていたはずですが?
まさか殿下、お読みになっておられないのですか?」
「う……き、今日は、まだ政務室に行っていないんだ。
あとで行く予定だったからね」
「さようでございますか」
エミリア嬢は呆れ顔をしていた。
彼の魔力反応的に、行く予定自体なかったのかもしれないな。
「彼は、ヴェルマ国の王子で留学生です。
ヴェルステイン家預かりになりました。
今日から一緒に勉学に励む仲間です」
仲間……というエミリア嬢の言葉に頬が緩んだ。
男は、安心した表情でエミリアに言い聞かせた。
「そ、そうなんだ……。だけど、エミリア。
君の婚約者は僕であることを忘れないでくれ。
他の男と、必要以上に仲良くしてはいけないよ」
この男は何を言っているんだろう? 今の自分の姿が見えていないのか?
自分のことは棚に上げて、そんな事をエミリア嬢に言う資格はないというのに。
どうにも、こいつを見ているとイライラしてしまうな。
「…………わかっておりますわ。」
エミリア嬢も怒りに震えている。
教室全体が「お前が言うな」という微妙な魔力反応になった。
だが、そんなこと気にせずに、私に声をかける少女がいた。
魔力反応が媚びていて気持ち悪い。
「もー。喧嘩はよくないですよ。エド様。
初めまして、ヴェルマの王子様ぁ。
私の名前は、ナナリー・ランゲスって言います~。
お名前を教えてもらってもいいですかぁ?」
(はぁ?!)
場が……凍りついた気がした。
次あたり、プチざまぁ を入れる予定です。




