231話『交流親善会 4』
お待たせしました!
9月中ギリギリセーフ!Σ(゜ロ゜;)
――ガチャ!
「ああ、そうだ!」
「ひゃ、はい!?」
扉が閉まったあと、
バイバイしたはずのクレス殿下が扉を再度開いて声を発した。
ちょっとビックリしちゃった。
「あー……驚かせちゃってごめんね?
今度、レリアナを連れて、君の家に謝りに行くって伝えるの忘れちゃって」
謝り?
キョトンとする私に、クレス殿下の視線はワインの染みへと向かう。
「あ、これは本当に、もうよろしいのですよ。
レリアナ様にも、『私は大丈夫、怒っておりません』とお伝えください。
それに、レリアナ様にはすでに謝ってもらいましたし」
「エミリア、正式な謝罪を行わないと、彼女のためにもならないんだ」
まぁ、あれだけ沢山の人に見られてはしょうがないけれど……。
「……わかりました。
クレス殿下も、レリアナ様をあまり怒らないであげてくださいね?」
一瞬だけ、「え?」という顔をしたクレス殿下。
きっと扉が閉まる直前に見えた表情は、
レリアナ様のことを考えていたんだろうね。
「さっき見かけたクレス殿下の表情は、
私の好きな、かわいいクレス殿下の表情ではありませんでした」
拗ねた感じで私が言うと、
困った表情でいつもの優しい表情になるクレス殿下。
「まったく、もう……敵わないなー。
仕方ない、今回はエミリアに免じて、ね」
ウインクするクレス殿下。
エドワード兄似のイケメンだから、少しだけドキリとするね。
エドワード殿下の婚約者ではなくなった私のこの行動は、
王子に対してとても失礼にあたる。
だけど、彼はこんなことでは怒らないのを私は知っている。
それだけ、私とクレス殿下は仲が良かったのだから。
このあと、クレス殿下は笑って退室していった。
私は、少しだけ安堵の息を吐いてから、ドレスルームに向かった。
待機室とドレスルームの中はまるで高級マンションの一室のようだ。
待機室だけで広さは50畳ほど。
統一感のある趣向の凝ったアンティークの家具に、
机やソファーの細部に至るまで、同じ匠の仕上がりだと分かる特徴がある。
金縁のソファーは細かいさまざまな花の刺繍の素晴らしい一品だし、
同じく机は香り木を贅沢に使われた一品となっている。
隣にあるドレスルームは、さらに広く70畳はあるんじゃないかな?
現代で言う高級な服屋を思わせるほどにぎっしりとドレスやスーツが
綺麗にハンガーラックにかかっているのを見るのは圧巻だ。
実は、ここにあるドレスやスーツ、全てヴォルステイン家のものである。
そう、私やお母様にシンシアのドレスと、
お父様、ジョシュア、ジェネス、ベリアル様のスーツだ。
待機室から、ドレスルームまで、ヴォルステイン家の貸切状態である。
さすが、侯爵家だね。アハハー。
他の貴族の待機室もみんなこんな感じなんだろうけどね。
汚れたドレスを着た私を見て、
慌てた様子でカーラとメーデが駆け寄ってきて、私の服を脱がす。
一人では絶対に着れないドレスですよ。
脱ぐのも一人では無理だもんね。
次に、ドレスルームの隣の小部屋には、簡易お風呂も備え付けてある。
簡易と言っても、高級ホテルのお風呂並だよ。
湯浴み用にお湯をはっていると言われたので、少しだけ汗を流した。
どうせ、王都邸に帰ってからもお風呂が用意されている。
ここでは汗を流すだけにとどめたよ。
待機室ではもうベリアル様が待ってくれているかもね?
クレス殿下が呼びにいってくれていると思うし……。
それでも、さすがに貴族なので湯浴みとドレスの着替えに、
新しくお化粧するとなるとかなりの時間がかかるけどね。
40分ほど経ってから、やっと私はドレスルームから出ることができた。
待機室では、退屈しているであろうベリアル様の姿が――
あれー?
ベリアル様は、なんとソファーに横になって眠っていた。
結構お疲れだったのかな?
長い足がソファーからはみ出てしまっている。
近づいて、綺麗な表情をついつい見つめてしまった。
白銀の綺麗な髪は、後ろ側で綺麗に束ねられている。
それが、肩口からサラリと褐色の頬にかかっていた。
褐色の肌に、鼻筋の通った綺麗な造りの顔。
伏せられた目元から生える長い睫毛が頬に影を作っている。
薄い唇は、肌と同じ褐色だけれど、ツヤツヤと輝いている。
唇をじーっと見つめる。
(そうだ私ってば、以前ベリアル様と――)
恥ずかしい記憶が蘇る中――
「なんだ? エミリアからはキスはしてくれないのか?」
唇を突き出すベリアル様がじれた様子で片目を開けて言い放った。
ボフーン!!
ぎゃあああああああああああああす!!!! ※エミリア心の叫び。
「も、もももも、もう!!
べ、ベベ、ベリアル様!
い、いい、いつから、オキテイラッシャシャシャ……」
カミカミである。
顔も真っ赤で、半べそである。
手で顔を覆うけれど、耳まで真っ赤だから意味が無かったよ。チクショー!
「私は、寝ているなど一言も言っていないぞ?」
ニヤリと笑うベリアル様の表情がまぶしー!
いつものドヤ顔ありがとうございます!! じゃない!
落ち着け私、ここは感謝している場合ではないのだよ!?
「も、もう! 意地悪しないでください!」
静かにクスリと笑うベリアル様は、私の頭を撫でたあと起き上がる。
なんだか、ベリアル様、前よりも表情豊かになった気がするよ。
隣のソファーをポンポンとして座れの合図をもらったので腰掛ける。
はぁ。 とため息を一つ。
ドキドキしっぱなしで心臓に悪いからね。
落ち着かねば。
いつの間にか目の前にカモミールのハーブティーが用意されている。
用意してくれているのは、ベリアル様の新しい侍従であるカロットさんだ。
いつの間に、お茶を用意してくれたのか分からないけれど
紅茶のいい香りのおかげで少しだけ落ち着けたのでいいや。
「ありがとうございます……あ、おいしい!」
想像していたすっぱ味というか、渋味があるものだと思っていたら
予想に反して甘かった。この甘みは、はちみつかな?
それにしても、はちみつ独特の甘ったるい匂いはしなかったけれど……
不思議に思って、カロットさんに視線を向けるとニッコリと微笑まれる。
ううっ……。
魔族の皆さんってどうしてこうもイケメン美形な人ばっかりなん?
「エミリア姫。
こちらのほうが飲みやすいだろうと勝手な判断で入れさせていただきました。
はちみつは、魔族領で取れる物を香り程度に使いました。
残りは黒糖を少々です」
私の疑問をサックリ答えてくれる、何て優秀なカロットさん。
魔族の皆さんってどうしてこうも優秀な人ばっかりなん?
なるほど、砂糖とはちみつのブレンドティーか! これは流行りそう。
しかも、魔族領で取れるはちみつって珍しいのもじゃないのかな?
ベリアル様は本格的に他国との交易を始めるって言ってたから
このはちみつもその一つなのだろうね。
隣では、普通の紅茶をベリアル様も堪能していた。
「カロットは紅茶を入れるのだけは上手いからな」
「お褒めに預り、光栄です」
この後、紅茶のお変わりを2杯ほど味わってから、
私とベリアル様はパーティ会場に戻った。
戻った時も、私達というか、ベリアル様に視線がすごく集まっていた。
まるで、入場した時と同じ感じだね!
※エミリアにも視線は集まっていましたが、
エミリアはベリアル様だけに視線が集まっていたと思い込んでいます。
私とベリアル様は、ラナー様やマリエラのまつ貴賓席に戻った。
マリエラの隣にはエドワード兄の姿が。
この後、兄に私の事をかなり心配されてしまった。
また騒動を起して! って怒られたけれど、私のせいかな!?
踊っていた令嬢に髪の赤い令嬢がいなかったか聞いてみたけれど、
兄は踊っていないと言う。
ということは、私の見間違いだったって事だよね……? うーん。
このあと、国王両陛下に挨拶して私とベリアル様は先に退場した。
馬車に揺られて、会場での出来事を思い返す。
(今日だけでいろいろあったなぁ~)
揺れる馬車から外を眺めつつも、脳裏にチラつくのは、
赤い髪の令嬢とくりくりの金色の髪の男性がダンスを踊っている光景。
エドワード兄は違うって言ってたけれど
あの独特の雰囲気とかくりくりの金色の髪って兄以外にも特徴が……
あれ?クレス殿下もクリクリ金色の髪じゃね?
そういえば、クレス殿下とリーテ様は知り合いだったね。
コルトの街でのことを思い出して少しだけ自己完結したよ。
知り合い同士なんだから踊って当然だよね!
考えていた疑問が1つ解消され、私は揺れる馬車の心地よさに
いつの間にか眠りについていたのだった。
ここで話はひと段落させます。
もともと書いていたのがここまでの話だったので
一応ここまでで、白乙女編は終了です。
次の2人の乙女編の新学期~2年生編は構想、書き直し、点検などなど
終わってから投稿予定ではありますが……。
投稿予定は完全に未定です……。
半年、1年後などかかるかも……?
これまでお付き合いくださって、ありがとうございました。




