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アフリカ ジンバブエ保護地区
世界で一番地獄に近い場所はジンバブエ刑務所だと誰もが言う。
汗がダラダラと身体から湧き出る。
拭いても拭っても汗は止まらない。
暑さだけのせいではなかった。
ニカウ・ダガウは、ついに当たりを引いてしまった。
だがニカウにとってはその当たりは最悪のハズレであった。
ニカウは一級戦士だった。
一級戦士とは一度も戦った事のないノーヒューマンの事。
一級戦士は、神に愛された男。とも呼ばれた。
最初は2人に1人が当たりを引き、当たりを引いた者は戦いに向かう。
二回目は3分の1の確率…3人に1人が戦いへ。
三回目は4人に1人が戦いを。
一回ハズレを引く度に1人ずつハズレが増えていく。
9回目は10人に1人が当たりを引き、その一人が戦いに参加する。
そして10回目からは再び元の確率に戻り、2人に1人が当たりを引く事になる。
その繰り返しを5回…45回連続で当たりを一度も引かなかった者は一級市民となる。
一級市民は、死ぬまで戦いに参加する事はなく、スタジアムの整理や、敗者の片付けなどをする平穏な日々を過ごせる。
その平穏な生活が[当たり]かどうかは分からない。