.9
運動場の片隅で眠りにつく前に、誰ともなく自分が殺した時の事を話し出した。
今しか言えない内容でもあった。
平和な時。正常な時ではとても言えなかった話。
今言わなければ、二度と言えないような思い出だった。
5人のうち4人はタダシと同じだった。
虐待に耐えられず親を殺した。
違っていたのは唯一こうちゃんだった。
小さい頃から昆虫採集と標本作りが好きで、小学校1年の時には動物を殺し始めた。鳥や猫や犬を。
ある日、誰も来ない川原の藪の中で犬を殺しているのを浮浪者に見られた。
こうちゃんの手にはカマを持っていた。
逃げ出そうとする浮浪者の首めがけてカマを振り落とした。
そんな話をこうちゃんは淡々と話した。
[どんな気持ちだったの?]
誰かの問いにこうちゃんは
[分かんない。でも死ねばアリも犬も人も同じなんだと思った]
それはタダシも納得いった。
[そうなんだ。死ねばただの肉の塊なんだ]
誰もが反論しなかった。
皆も同じ気持ちだった。
死ねばただ人間の形をした肉。重たいマネキンと変わらない。
タダシはそう思った。その時、皆の気持ちと一緒になった気がした。
皆、どうやってアイツらを殺すか考えたに違いない。
[どうやって皆を殺すか?]
足立が呟いた。
誰もが反対はしなかった。
殺すのは当たり前だった。
どうやって殺すかが問題だった。