表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者少女群  作者: お休み中
第三幕 赤い鎖
21/42

「でも、味は美味しかったよね」横を歩くスミレが、両腕を伸ばしながら言った。「やっぱ、ミカゲさんは、料理が上手いなぁ」

「ああ、あのフライパンさばきは、プロ並みだったな」廊下を歩きながら、ユリは言った。最後の仕上げは、結局ミカゲがやってくれたのだった。ちなみに、あまったサラダ油は他の班にわけ、なんとかことなきを得た。「しかし、もっとノートの文字は大きく書いておくべきだったな。我ながら、情けないミスだった」

「うーん、文字の大きさ、っていう問題でもなかったと思うけど……」目を細め、汗マークを浮かべるスミレ。

「そういえば」ユリはスミレを見ながら「スミレは、この後、大浴場に行くか?」

「ん、ああ、私は後にするわ。なんか今日は色々あって疲れちゃったし」スミレは片手で肩を揉みながら言った。「あ、そうだ」と、彼女はユリを見ながら「さっき、シオンがお姉ちゃんにプレゼントがあるって言ってたよ。落ち着いたら、部屋行くって」

「ん、それは楽しみだな」微笑むユリ。

「それじゃ、また明日ね」スミレは微笑みながら、ドアのノブに手をかけた。

「ああ、また明日」ユリはスミレに手を振った。

 黙示録学園の生徒は、平日は寮住まいになる。スミレは、ユリの部屋から、五つほど離れた部屋だった。また、基本的に、一つの部屋に二人で住むことになっている。ちなみにスミレは、シオンと同じ部屋。

 転入やら調理実習やら、色々あったが、なにごともなく、一日の授業は終了した。ただ、放課後ユリは、生徒会の仕事があって残った。スミレは、街でショッピングしていて、先程廊下で一緒に。時間はもう七時。充実していると、時間が過ぎるのが早く感じる。

 ガチャリ。

 ユリは自らの部屋に入り、電気をつけ、鞄をテーブルの上に置くと、二段ベッドの一階に寝っ転がった。

「ふう……、確かに、今日はなんだか疲れたな」

「私が、その疲れを癒してやろうか?」

「ああ、頼む……。ん? ちょっと待て」ユリは目を手で覆った。「なんだ? 疲れて幻聴が聞こえたのかな? キュアの声が確かに今……」

「ふっ、寂しいやつだな。私はここにいるではないか」顔を横に向けると、確かに、そこにキュアがいた。ふむ。どうやら、幻覚ではなさそうだ。

「……えっと」真面目な表情のまま、汗マークを浮かべるユリ。「キュア、お前の部屋は、ここだったか?」

「いや、違った。だが、しかるべきルートを使い、変えてもらった」キュアは淡々と言う。「お前の以前のルームメイトは、今ミカゲと一緒の部屋だ」

「つまり、私たちは、ずっと一緒にいれるということか」ユリは口元を緩めながら言った。「本当に、実現するとはな」

「当然だ」キュアはユリの髪を片手でとぎながら「私たちは、一心同体だ。違う場所で、寝るなんて考えられない」

「そうだな」

「さて」キュアはユリの頬を触り「ご飯にする? お風呂にする? それとも私?」

「えっと……」眉間に手を当てるユリ。

「冗談だよ」キュアは、頭の下に両腕を交差するようにあてがうと、仰向けに寝っ転がった。「そうだ……、さっき、そこの窓から景色を眺めていたんだが」

「ん? ああ、いい景色だろ」ユリは言う。「この辺は、星がよく見えるからな」

「いや、私は、星は飽きるほど見ているよ」

「ああ、そうだったな」微笑むユリ。

「でも」キュアは言った。「地球から見る星も、悪くなかった。今度、一緒に、星を見に行こう」

「ああ、そうだな」

「星は……、なんで輝いているか、知っているか?」キュアはユリを見る。

「いや」軽く首を振るユリ。

「星はな……、寂しがり屋なんだよ」キュアはベッドの天井を見つめ、呟くようにして言った。「だから、ずっと信号を送ってるんだ。誰かが、見てくれているのを信じて、な」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ