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ゲームの世界に転生?  作者: まほろば
20の町からモナーク国王都
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噂と噂



何処へ行こうか悩んで、今日は黒髪のルアンでハルナツさんを訪ねた。

「良く来ましたね」

「あら、黒髪に戻したのね」

『こんにちは』

「元気そうで何よりですよ」

「本当に」

ハルナツさんは私の顔を見てホッとしてた。

不思議に思ってたら、思わぬ話が出た。

「30の町の軍の施設から、捕まっていた解放軍の1人が逃げたそうですよ」

これは罠だ。

逃げた事になってるのはカレンしか居ない。

誰を捕まえたくて情報を流したのか考えて、浮かんだのはレナルドだった。

レナルドなら引っ掛かりそうだと思った。

思っても、もう私には何も出来ない。

違う、しちゃいけないんだ。

「龍人も今は30の町に居るそうだし、危ないですから、近付かないんですよ」

『近付きません。あれからチェスター国を出てないので、そんな話も知りませんでした』

「まだチェスター国に居るんですか?もう危険は無いでしょうに何で?」

「何でなの?」

『チェスター国が楽だからですかね』

「この前冒険者ギルドの方が要らしてね。もしルアンが着たら、謝罪したいと伝えて欲しいと言って」

「私たちは伝えられないと話しましたよ」

ハルナツさんはプンプン怒ってるけど、裏を読めば私がこの村に来てるのが知られてるって事だ。

今も何処かから監視されてるかもしれない。

思わず周りを見回した。

「どうしたんです?」

「誰か探してるんですか?」

『見られてる気がして。気のせいみたいです』

「気のせいですよ」

「ここには村人しか居ませんからね」

ハルナツさんに頷きながら考えた。

カレンもグラムも30の町に居る。

そんなの私を誘き出す罠にしか思えない。

こんな罠怖すぎた。

『そろそろ時間なのでまた来ます』

村を出ようとしたら、ハルナツさんがにこにこと呼び止めて言った。

「お詫びを渡すので27の冒険者ギルドにね」

「来て欲しいそうですよ」

軍はまだ私を諦めてない。

何をさせたくて執拗に追い掛けるのか、考え出したら怖くて背筋がぞくぞくした。

『分かりました』

村を出て、その足で20の町の温泉宿へ転移して前と同じ個室を取った。

今回も1ヶ月お願いした。

どう転ぶかは分からないけれど、この一月で状況は動くだろう。

こうして軍がカレンとグラムの情報を流してるのは、軍も手詰まりだからだもの絶対動く。

私も状況が動いてから次を考えよう。

今はカレンとグラムの事より、自分の身の安全を最優先するべきだと決めた。

滞在半月が過ぎた頃、宿の客が慌てて戻ってきた。

「大変だっ!30の町に居た龍人が逃げ出した」

「何だってっ!」

「龍人は転移が出来るから、どの町に現れるか分からないと30の町に居る仲間が騒いでる」

客は商業ギルドから飛んで帰って来たと言った。

「この町に来る可能性もあるのかっ!」

「冗談じゃないぞ!」

!!

罠なのか本当なのか判断できない。

偶然昼食を食べに食堂にいたから、パニックになる泊まり客に揉みくちゃにされた。

やっと部屋に帰って来て、ベッドに寝転んだ。

グラムが自分の意思で逃亡を図ったのなら…。

復讐の標的はモナーク国だろう。

もし私がグラムなら、モナーク国の王を狙う。

でも、王が居る王都の場所は公表されてない。

なら、どうする。

私なら、軍の幹部を捕まえて連れていかせる。

どのくらいの階級から王都に入れるのか、魔方陣はどこにあるのか、疑問はいくつも浮かんだ。

不安で30の町に飛びそうになる気持ちを押さえて、じっと息を潜めた半月が経った。

明日は先払いした一月目。

もう一月滞在しようか。

悩んで、もう1ヶ月延長しようと決めて受付へ降りていこうとしたら、軍人が兵士を連れて受付けにいた。

階段の途中で足が止まる。

受付から自分が見えない位置まで階段を登り、風魔法で会話を盗み聞きした。

「この宿に体に鱗のある男と女の子供の泊まり客は居るか、居たら黙って部屋まで案内しろ」

「居ませんよ。体に鱗なんで気持ち悪い客」

宿のおかみさんの話し方は本当に気持ち悪そうで、きっぱり言い切っていた。

「そんな客が居たら、風呂場担当の使用人が私の所へ飛んできてますよ」

「客の全員が風呂に入るとは限らんだろう」

「ここは温泉宿ですよ。風呂に入らない客なんて怪しくて逆に警戒しますよ」

おかみさんの呆れてる口調に押されて、軍人は兵士を連れて出ていった。

グラムと女の子?

グラムは誰かを味方にしたのだろうか。

ごちゃごちゃ考えてたから、何でか受付へ行かないで部屋へ戻ってしまっていた。

そして、思い付いた怖い可能性に汗が出た。

もしかしたら、グラムと居るのが私だと思われてるのかもしれない。

女の子じゃないけど、この世界の人に私が幼く見えるのは自覚してるのでその可能性を否定できなかった。

どうしよう。

不安が危険を上回った。

明日、30の町へ行こう。


黒髪のままは怖すぎるので、茶髪に偽装してから30の町を訪ねた。

町の空気はピリピリしてて、2回の氾濫で壊された建物がそのままだったり居たくない町に変わっていた。

この町に、本当にグラムは居るのだろうか。

夕方まで待ってから乗り合い馬車の乗客に混ざって、前に泊まった宿に部屋を取った。

「お客さんはどちらへ行くんですか?」

『35の町のダンジョンへ行く予定です』

記憶に残りたくないからvoiceを使った。

「そうですか」

受付をした宿の主人がホッとした顔をした。

『どうしたんですか?』

「いえね、軍からのお達しで女の子の1人旅には行き先を聞けって言われたんですよ。最初の半月は着たら直ぐに知らせろだったんですが、半月過ぎたら行く先の確認をして不審な物は知らせろに変わったんです」

聞きながら背中を汗が伝った。

一月前って、私がハルナツさんを訪ねて直ぐくらいの話とかなの?

まさかハルナツさんを訪ねたその日に軍が?

でも、何故直ぐ宿屋に手配したのか不思議だった。

私が絶対30の町に来ると思ってた?

もし一月前に行動を起こしてたら…、想像しただけでも恐ろしくなった。

「何でも本線の町の宿屋は残らず言われた様ですよ」

宿屋が残らず。

それなら20の町の宿屋も?

温泉宿のおかみさんは何も言わなかった。

言わなかったから余計に、軍の探してるのはやはり私に思えて落ち着かなくなった。

やっぱり明日、20の町に戻ると決めた。

夕飯を食べに行った食堂で、思わぬ話も聞けた。

「捕まっていたのはカレンらしいぞ。カレンを取り返しに解放軍のメンバーが動いてるらしい」

「なら、龍人を逃がしたのもカレンなのか?」

「龍人の方はちっこい女の子だろ」

「もしかしたら、子供は龍人の人質じゃないよな」

「軍から逃げた龍人が子供を人質にか?子供が逃がしたよりそれの方が有り得るな」

「だよな」

「龍人に捕まってる子供を助けないと可哀想だぞ」

「軍は何してるんだよ」

「しっかり仕事しろ!」

誰が情報操作をさせているんだろう。

もしかしてクラークさん?

「カレンを目の色変えて探してる場合じゃねぇよな」

「カレンを探してるのか?そんな話聞いてないな」

「俺は聞いたぞ」

「俺も聞いたぞ。カレンは歩きで次の町に向かったが軍に見付かって森に逃げたって聞いた」

「それで山狩りしたが見付からないそうだ」

「なぁ、龍人がカレンを探してる可能性もあるのか」

「あ、その可能性もあるな」

「カレンが見付かれば、龍人も見付かるかもな」

軍?

クラークさん?

両方の情報操作が入り乱れてる感じがする。

この状況でも、チェスター国はグラムの居場所を把握してるんだろうか。

グラムだけじゃなくカレンの居場所も知ってそう。

それでもやっぱり、クラークさんに連絡する気持ちにはなれない。

どうしよう。

夜になったら、また軍の施設に行ってみよう。

もっと情報が欲しい。


夜に紛れて忍び込んだ。

変だった。

兵士の数が妙に少ない。

おかしかったから地図から調べたら、100人以上の反応があちこちに隠れてあった。

待ち伏せされてる!

心臓がどくどくして、直ぐには動けなかった。

やっと落ち着いて宿に転移しようとしたら、見回りの兵士が近付いて来てしまったから息を潜めて通り過ぎるのを待った。

「見付かったカレンを取り戻しにあの男来るかな」

「来るんじゃねぇか。カレンにベタぼれ何だろ」

ベタぼれって、レナルドの事だ。

なら、カレン連れて森へ逃げたのは、レナルドに違いないと思えた。

「もう首輪外しても正気に戻らねぇのにな」

「しっ!万一近くに居て逃げられたらどうすんだよ」

「お前馬鹿か。いくら狂っててもあの男の事だ、好きな女は取り返しに来るさ」

レナルドなら本当に来るかもしれない。

もっと聞きたかったけど、それ以上は歩き去ってしまったから聞こえなかった。

周りを確認して、近くのテントに背を付ける形で光の結界を張った。

背を向けたテントは物置に使われているのか、人の気配はなくてしんとしていた。

その場を動かないで、気長に次の巡回を待った。

2時間後、同じ声が同じ言葉を繰り返した。

レナルドが連れ戻しに来るまで、繰り返すのかも。

騙された感じで悔しかった。

改めて魔力の高さで地図を検索したら、点滅が3つ大きなテントの隣のテントからした。

懲りずに待ち構えてるんだ。

レナルドだって警戒して忍び込むはずだから、そんな簡単には捕まらないのに。

無駄な2時間に気力が失せて、宿の部屋に転移した。

カレンがあの施設に居る公算は、無いか低い。

レナルドを誘き寄せたいから、わざと警備を緩くして誘い込むつもりなんだろう。

私は、どうしよう。

カレンとレナルドも、グラムも、そして何故私を追い掛けているのかも、何一つ解決してない。

みんな推測で、糸口が見えなかった。

こんな中途半端じゃ、20の町に行けない。

翌日、違う宿に移った。

同じ宿に連泊は怪しまれるし、もう少しヒントになる噂を聞きたかったから。

噂の大半は軍とクラークさんの化かし合いなんだけど、ホントの事も少し含まれてるからもう1日聞くつもりでいた。

「聞いたか?カレンは他の施設にいたのを連れてきたって話だぞ」

「軍めまた騙そうとしたのか」

「何でそれをお前が知ってるんだ?」

「俺も同じ馬車だったからよ。軍人は変装しても喋りですぐ分かるからな」

「確かにな」

食堂に肯定の笑いが上がった。

「カレンより龍人はどうなったんだ?一月この町の商売止めといたんだが捕まった話も聞かないし、正直来たくなかったけど来ないと金にならないし」

「まだ捕まってねぇな」

ふと、最近は冒険者より商人が増えた気がする。

今食堂に居る泊まり客も、7割は商人だった。

若い冒険者が減ったから、なおそう感じるのかも。

「龍人が逃げ出したって情報も怪しいだろ」

「俺もそう思った。今さら逃げ出せるのかよ」

「カレンじゃないが、子供に見える女を誘き寄せたいから流した軍のデマだな」

心臓がだくだくした。

やっぱり、やっぱり私を捕まえる罠だ。

「子供を捕まえてどうするんだよ」

「龍人使って、その女の子の知ってる店か何かにこっそり軍の息が掛かった男を入れて貰いたいらしい」

チェスター国を店に例えたと思えば、泊まり客の話が理解できた。

モナーク国の軍は、そこまでしてチェスター国に入って何をしたいんだろう。

「その店に何があるんだ?」

「チェスター国の魔法使いが常連らしいぞ」

嘘!

モナーク軍はまだ魔法使いを追い掛けているの?

私と魔法使いに接点が無いと何度もハルナツさんから流して貰ってるのに、まだ追ってたんだ。

「魔法使いが居ればハルツとの戦争も楽勝だからか」

「子供に頼るとか情けない話だ」

「それでも勝てれば良いんだよっ」

「お前何怒ってんだ?」

あぁ、そうか。

グラムがダメだから、違う誰かを私を使ってチェスター国に入り込ませたいんだ。

そして魔法使いと接触して、モナーク軍に取り込む作戦でも立てたに違いなかった。

もう有り得な過ぎて笑えもしない。

!!

もしクラークさんがカレンやグラムの居場所を知っているとしたら、私の居場所も?

ゾッとした。

ここまでの恐怖は初めてで、今までこの可能性を考えもしなかった自分を思わず叱った。

初めて。

初めて本気でこのゲームの世界から出たいと思った。

明日、20の町に戻ろう。

そう考えて食堂から出たら、入口に髭もじゃのレナルドの姿があった。

ぎょっとしてレナルドに背を向ける。

この前の時は全体を偽装していたから、今のこの姿から私とは分からないはず。

そう分かっても心臓はどくどくした。

レナルドはカレンを追ってるはず。

ならこの町にカレンが連れて来られたって話は、本当の情報なのかもしれない。

カレンが居るなら軍の施設だ。

レナルドが施設に気付く前にこの町を出よう。

「2人部屋を1つ。2泊で」

レナルドの声に足が動かない。

「お連れ様は?」

「夜遅くに来る」

今夜、今夜カレンを取り戻すつもりなんだ!

「そうですか」

宿の主人はレナルドの話を信用してない。

胡散臭そうに見て鍵を渡していた。

レナルドが施設に忍び込むのは今夜。

とても成功するとは思えなかった。

部屋に戻って、レナルドを検索から追う。

眠いのを堪えてじっと待ったけど、真夜中になってもレナルドは動かなかった。




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