第一話 吸血鬼の噂
告知から遅れてしまい申し訳ありません。
今作は前作の改訂版になります。
執筆もひと段落したのでこちらに本日から週一で投稿させて頂きます。
是非読んでもらえたら嬉しいです。
追記:内容変更の為修正させて頂きました。
「……見られたか。」
私は恐ろしくも美しい真紅の瞳に囚えられる。
そして彼はゆっくりと私の方へと近づいて来る。
「このまま何も知らなければ助かったのに……本当に残念だ。」
私の目の前に立つ——は何処か物憂げな表情をしていた。
***
昔々、大陸から離れた華都国と言う四季の存在する島国の遥か山奥の辺境の村に雪女が居た。
雪女はその村で魔法すら通用しない怪しげな力を使い沢山の人々を凍えさせ命を奪った。
だがそんな彼女の美貌に惚れ込みアプローチをした変わり者の男がいた。
そして雪女も次第にその男に心奪われ、やがて二人は生涯を共にする事を決めた。
そしていつしか二人の間には十三人もの子供が産まれた。
それが我が氷宮家の長い歴史の始まりだった。
***
第1章 吸血鬼の噂
朝一から沖に出る漁師達の声で目が覚める。
窓の外を見るがまだ外は薄暗い。
だがずっと寝てばかりではいられない為、まだ眠気で重い身体を無理矢理ベッドから起こす。
私こと氷宮 涼香は二年前、とある事情により元々住んでいた村を離れそして母国である華都国を出国し海を渡り大陸の玄関と呼ばれる国、貿易国家マエロンへ来ていた。
マエロンという国はドルフィネという港からの貿易で有名な貿易国であり、内陸国などの貿易で様々な方面から人を呼び繁栄してきた商業国家でもある。
故に観光目的でやってくる外国人も多くドルフィネはいつも賑わっていた。
そんな中私はこの港町でただひたすら情報を収集した。
異国である大陸で旅をするには何よりも情報が必要不可欠だからだ。
私は日が昇り町が人で賑わい始めたタイミングで宿を出た。
「よう!兄ちゃん今日も元気に情報収集かい?」
普段よく行く聞き込みスポットへ向かっている途中、声をかけてきたのは商人のアントニーだった。
「そんなところです。
だから今日もいい話は無いかと思って聞き込みをしていた所です。」
「話もいいがたまには商品の一つは買って欲しいところだ。
というわけで今日も知人のツテで良い品が手に入ったんだ一つどうだ?」
そういうアントニーの手には何やら怪しい瓶が握られていた。
またよくわからない効能の民間薬でも売りつけるつもりだろう。
「遠慮しておきます。
今はそんなにお金を持っていないので。」
「そうかい、それは残念だ。」
アントニーとは半年程前にこの町で開かれた大規模なキャラバンで知り合った。
少々胡散臭い所を除けばあらゆる情報や人脈に長けた凄腕の商人である事は間違いなかった。
「それに兄ちゃん今日はとっておきの話があるんだが聞いていくか?」
そう言ってアントニーは私に耳打ちをしてきた。
「是非聞かせてくれ、内容によっては報酬弾もう。」
「ヒューヒュー流石顔も心もイケメン様だ!器が違うねぇ!」
私はアントニーや他の商人から様々な情報を買っていた。
この町の商人は基本的に資本主義思考が強いのでタダで話だけ聞いて帰るなんて事は許されない。
なので私はいつも情報を聞く代わりにチップを払っていた。
その結果、噂話に金を落としていく変わり者としてある意味有名になった私は、自ら話しかけに行かなくとも向こうの方から声をかけて来てくれる様になったという訳だ。
だが情報とはいえ大半はこの国の貴族のやらかしやゴシップが殆どだ。
しかし稀にとんだお宝情報を持ってきてくれる為そういう時は色をつけてチップを払っていた。
「そういやこんな話を客から聞いたんだ、隣国センチュラルに住まう吸血鬼の噂。」
「吸血鬼……?」
「ああそうだ、話では日の目が隠れる曇りの日や夜中に町を徘徊しては人目のつかない場所にターゲットを連れ込んで血を啜っているらしい。」
「なんだそれ、本当にそんなのがいるのか?」
「隣国の客人から聞いた話だ、真偽なんてそんなものは知らん。
だがどうやらここ最近マエロンにも度々吸血鬼の仕業であろう変死体がいくつか見つかっている様でな、少しばかりこっちの方でも噂になってるみたいだ。」
今日の情報はどうやら隣国の噂話だった。
噂はどうでもいいが、近隣の国の情報は今後の為にとても役立つ有益なものだ。
聞いておくに越した事はないと思い私はアントニーに続きを話す様促した。
どうやらアントニーの話によるとその吸血鬼の正体はとある著名人ではないかという噂があるそうだ。
その人物の名はヴァーミリアンという著名な政治家らしく、センチュラルでは実質的に彼が政界を牛耳っている様で、その政治力は国を跨いで尚名を轟かせる程のエリートらしい。
ただそこまでの著名人にも関わらず、ヴァーミリアンは徹底して記者やメディアに一切姿や顔を公開しないらしい。
それ故に彼にはいくつもの噂が民衆の間でまことしやかに囁かれているらしい。
その一端が先程アントニーから聞かされた吸血鬼の噂だそうだ。
「そんな出鱈目な噂を流されてそのヴァーミリアンという政治家も不本意なものだな。」
「しょうがない、人はいつだって得体の知れないものを納得の出来る型に押し込めて安心したがる生き物だからな。
ほらそんなことよりチップ弾んでくれるんだろ?」
「……呆れた。」
私はアントニーにチップを支払いその場を後にした。
そしてその日はいくつかのスポットをまわり様々な情報を収集し宿舎に戻った。
宿舎に帰り着き部屋に戻る頃にはもう日は傾き空には星が浮かんでいた。
「センチュラルか……。」
宿舎の窓辺から星々を見上げる。
私はこの半年で沢山の人達と出会いそして旅の魅力に目覚めてしまった。
吸血鬼の話はおまけ程度に聞いていたが、今度はその時話に出てきたセンチュラルという国に私は興味を持ち好奇心が抑えられなくなっていた。
(明日センチュラルという国についてもっと調べてみよう。)
折角旅をするのなら自分の気になった土地を自由気ままに旅したいから。
そうして私は疲れもありベッドに潜るとすぐに寝付く事ができた。
***
翌日、私はセンチュラルについて調べ始めた。
ただ今までの経験から調べ事をする上で必ず守っている点がある。
それは出身を明かさない事だ。
私の生まれた村は長年人目につかぬ様にひっそりと暮らし繁栄してきた。
それ故に万が一私の身元を探られた時に私について話してしまう者が居ては折角逃げてきたのに居場所が割れてしまう為できるだけ口外しないように努めている。
そしてここまで数日かけて様々な人達から隣国センチュラルについて尋ねて回りおおよその概要が明らかになった。
中央国家センチュラル、この大陸の中央に位置する国で現在大陸で唯一の民主主義国家。
そしてその国の政治家の一人が昨日アントニーから聞いたヴァーミリアンという人物らしい。
その国は周辺を他の四カ国に囲まれている故に永世中立を掲げているらしく軍事力にも抜かりが無い。
それにも関わらず国内は安定した経済力と豊かな土地を持つ富裕国家で国内の生活水準も高くとても豊かな国らしい。
「センチュラル……見どころのありそうな国だ。」
母国である華都国とは置かれている立場も状況も全く違う。
だからこそ私はセンチュラルという国にとても強く興味を持った。
そうして私は二年もの間、細々と魔物を狩りその肉や皮を売って稼いだ路銀をはたきセンチュラルへと向かう事にした。
だけどこの時の私は知らなかった。
まさかあんな出来事に巻き込まれてしまうだなんて。
to be continued……
ここまで読んでくださりありがとうございました。
次の投稿は来週の金曜日を予定しております。
是非来週もよろしくお願いします。




