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女装剤(ある女騎士の事情)  作者: 嬉々ゆう


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第78話 (コンフィの章)言えなかった“さよなら”

第78話です!


ついに再会――ですが、

それは素直な再会とはいかないようで……。


気づかれているのに、言えない。

そんなもどかしさを感じていただけたら嬉しいです。



  ••✼••三の鐘の鳴る少し前••✼••

     (午後6時前頃)


 日も沈みかけた頃、

 シェンブリィ王子たちは……



 ・⋯━☞繁華街入口付近☜━⋯・


 リアとメーべは、腰を90度に曲げて、

 まるで犬のように匂いを辿る。


 そして、しばらく歩くと、4人と妖精2人は、

 「飲み屋ベリタス」

 の、前に居た。


 このドアの向こう側に、

 コンフィが居ると思うと、

 気持ちがはやる4人と妖精2人だった。



 ・⋯━☞飲み屋ベリタス☜━⋯・


 シェンブリィ王子は、大きく深呼吸をすると、

 ドアノブに手をかけ、皆に聞く。



「……開けるよ?」


「「「うんうん!」」」


 クキッ!……カチャ……

  キィイィイィ~~~……


 ・⋯━☞飲み屋ベリタス店内☜━⋯・



「いらっしゃ……?!」


「「「「…………」」」」


「……ええ~~~と、お客さん……ですよね?」


「ああ、そうだよ」


「「「…………」」」



 パンデゥワンは、シェンブリィ王子の顔を、

 見た瞬間にシェンブリィ王子だと気づいた。

 知名度が圧倒的なのもあるのだが、

 庶民を装ったであろう服装が、

 やたらと派手派手しい。

 

 アロガンス公爵子息は、

 身分を隠すつもりは、無さそうだ。


 リア(フリージア)は、メイド姿に。

 自分の侍女の服を借りたのだ。


 メーべは、お菓子メーカーの

 キャラクターのような服装である。

 ツインテールに、両腕を挙げて、舌を出し、

 目線を斜め上にすれば完璧!


 プチリアとプチメーべは、

 パンデゥワンには微かにしか見えないので、

 まだ気づかれてはなさそうだ。


 だが、パンデゥワンは、

 シェンブリィ王子たちは、

 コンフィを連れ戻しに来たと、

 即座に理解したのだった。



「お客さんたち……

 まずは、席に座ってはどうですかね?」


「ああ、そうさせてもらうよ?」


 ゴゴゴッ……ズルズル……



 シェンブリィ王子たちは、

 テーブル席に囲むように座った。

 そして、キョロキョロと辺りを見ている。

 きっと、コンフィを探しているのだろう。


 だが、まだコンフィが出てくる時間ではない。

 コンフィの時間は、忙しくなる時間帯の、

 日本時間で夜の8時過ぎ頃からとなる。


 コンフィは、客が増えた頃を見計らって

 出てくるのが、自分なりの決め事だった。

 できることなら新しい甘味はたくさんの人に、

 見てもらいたいという気持ちがあり、

 今回も新しい甘味の、「スライム餅」を、

 みんなに披露したかったのだ。


 なので今日に限って、いつもよりも、

 コンフィの出てくるのは遅かった。



 ••✼••開店から鐘半分の刻••✼••

    (午後9時過ぎ頃)


「「「「ワイワイガヤガヤ~~~」」」」


 店内は、毎度の如く大繁盛!

 

 これも、皆がみんな、

 ピッコロ(コンフィ)に会いたいがため。

 今のピッコロは、人気アイドルのようだった。



  ・⋯━☞店の奥☜━⋯・


「そろそろ、出番でしょうか?」


「そうですわね!」


「ううむ……」


「……?」



 今日は、また新しい甘味を披露するからか、

 クロフィがいつもよりも表情が硬い。



「どうかしましたの? クロフィ」


「うん? ふぅん……ちょっとね?」


「「……?」」



 クロフィは、何か気になる事でもあるのか、

 先程からずっと難しい顔をしている。



「ねえ、どうしましたのぉ?

 なんだか、ずっと変ですわよ?」


「ああ、ごめんごめん!

 なんだかねぇ……

 店長の……パンデゥワンの様子が、

 いつもと何か違うのよねぇ~~~」


「「!!……」」

 ササッ!……



 コンフィとプチコンフィは、

 そうクロフィに言われて、こっそりと、

 パンデゥワンの様子を伺った。


 ……確かに、頻繁にこちらを、

 チラチラと見ては、心配気な顔をしている。


 ……何かある。


 そう、直感したコンフィとプチコンフィ。

 そう思えたからか、パンデゥワンの様子が

 確かに変だと気づき、じっくり観察してみた。


 すると……



「「あっ……」」


「わかった? 何か合図を送ってるでしょ?」


「「……うん(汗)」」



 パンデゥワンは、しきりに腰に裏手で、

 クイッ!クイッ!と、

 「行け行け!」

 と、ジェスチャーしているように見えた。


 これは、いったい……?



「はっ! もしかして……

 誰かが来ているのでしょうか?」


「え? 誰かとは?」


「そう! やっとそこに気づいたのね!」


「「え?!」」


「来ているわよ! あの人たちが!」


「「ええっ?!」」

 パタパタッ!……



 コンフィとプチコンフィは、

 もう一度、店内を覗いて見た。

 そして、奥の入口付近のテーブルに、

 シェンブリィ王子、アロガンス公爵子息、

 フリージア、メーべの4人と、

 プチリアとプチメーべの姿も。


 アロガンス公爵子息以外は、皆変装している

 ようではあるが、めちゃくちゃ目立ってる!


 特にシェンブリィ王子は、まるでこれから、

 ディスコにでも駆け込んで、

 「ジュリ〇ナトー〇ョー!」

 とか言って、腰をクネクネさせて、

 扇子振り回して踊るのか?

 と聞きたくなるような衣装?

 キラッキラの金ピカブカブカスーツ?!

 


「シェンブリィ王子……何考えてますの?」


「とうとう脳みそが、腐り豆になったのでは?」


「きゃっはっはっはっ!

 相変わらず辛辣よねぇ~~~!

 でも、そう言いたい気持ちはわかるわ!

 あの金ピカは、ないわぁ~~~

 でも、お城の天辺に飾ったなら、

 映えるんじゃないの?」


「「…………(汗)」」



 いえいえ、クロフィもなかなかですわ。

 お城の天辺って、金のシャチホコか?!

 って、西洋風の城にシャチホコって場違いな。


 だがここで、コンフィは考え込む。

 

 それよりも、逃げなきゃ!

 ……逃げる?

 また、逃げるの?

 

 どうせ、皆のもとを離れるのなら、

 最後にキチンと、

 「さよなら」

 を言ってからに……



「……行きましょう」


「コンママ! 本気ですの?!」


「ふっ……コンママなら、そう言うと思ったわ」


「……うん!

 どうせ皆と”さよなら”をするのなら、

 ちゃんと皆に謝りたいのですわ」


「ううん……そうですわね」


「さっ! 今日は、新しい甘味の

 お披露目なのでしょう?」


「そうですわ!

 今のわたくしは、貴族でも女騎士でもなく、

 ただ甘味を愛する、一人の女ですわ!」


「「いぇい! いぇーい!!」」



 わたくしは、店に出る事を決意しました。

 このままバレてしまえば、きっと、

 「元男騎士だった事を黙っていた」

 ことを糾弾され、軽蔑されるでしょう


 でもそれは、身から出た錆……


 どうせ剥がされる錆ならば、悔いを残さずに、

 美しい刀身を最後にお見せしましょう!


 コンフィとプチコンフィとの、

 最小度合いの妖精融合を行う。

 コンフィの姿は、肉体年齢が10歳くらいに、

 身長も140㎝ほどに縮み、服装は、

 御着替えブレスレットで、

 黒のゴスロリドレス(メイド服)に。


 この時コンフィは、

 飲み屋べリタスの女給ピッコロとなるのだ。


 そしてコンフィは、

 お皿いっぱいのスライム餅を持って、

 店内へ堂々と出ていくのであった。



 ・⋯━☞店内カウンター☜━⋯・


「みんなー! やっほぉ~~~!」


「「「「?!……」」」」

 (一斉にコンフィを見る

   シェンブリィ王子たち)


「「「「いえええええ~~~い!!」」」」

「「「「ピッコロちゃ~~~ん!!」」」」

「「「「待ってましたぁ~~~!!」」」」


「待たせて、ごめんねぇ~~~

 今日は、スライム餅をご披露するわよー!」


「「「「うおおおおおおおおーーーー!!」」」」

 ドオオオオォォォォーー!


「「「「!!……(汗)」」」」



 今夜の飲み屋ベリタスは、大勢の客たちが、

 出入口の外にまで溢れるほど。

 店内では座る場所が無いほどの賑わいぶりで、

 超満員御礼感謝感激雨霰状態に!


 ピッコロ(コンフィ)が出てきた瞬間!

 まさかの、スタンディングオベーション!


 店内はまるで、推しのプロ野球チームが、

 「満塁ホームラン」

 でも打ったかのような大騒ぎに!

 客たちの歓声のあまりの大きさに、

 店内には地震のように振動が響き渡る。


 

「わぁ! すごぉーい!

 たくさん来てくれて、ありがとうー!」


「「「「うおおおおおおおおーーーー!!」」」」

 ドオオオオォォォォーー!


「みんな、おーちーつーけーー!!」

 (パンデゥワンの声もかき消される)


「「「「!!……(汗)」」」」



 しかし、ピッコロが出てきたのはいいが、

 シェンブリィ王子は、一瞬立ち上がるが、

 出てきたのはコンフィではなく、

 コンフィよりも小柄のツインテールの女の子。


 シェンブリィ王子は、目を見開き驚いたが、

 出てきたのがコンフィではないとわかると、

 ガッカリしたように、椅子に座り込む。



「「「「ヤイヤイガヤガヤワイワイガヤガヤ!」」」」


「……アンじゃない……のか……」


「ツンデレ萌女神令嬢アン様じゃないなの……」


「嘘……そんな…………」


「ううむ………………」


「「……」」


 

 シェンブリィ王子たちは、愕然とする。

 てっきり、コンフィが出てくると思っていた。

 なのに出てきたのは、見知らぬ少女だった。

 コンフィと同じ金髪碧眼だが、

 ツインテールでメイド服を着た小柄な少女。


 チビコンフィ化しているのでは?

 とも考えたが、チビコンフィ化した場合は、

 もっと肉体年齢は低かったはず。


 ……別人だ。


 シェンブリィ王子は、

 ガックリと肩を落とした。


 リアも、ヘナヘナと椅子に座り込む。


 メーべは、頭をクシャクシャと掻きむしり、

 椅子に座ると、テーブルに顔を伏せてしまう。

 

 だが、アロガンス公爵子息だけは、

 ピッコロを、妙に気にしている様子で、

 じぃーーっと、瞬きもせずに凝視していた。


 それでも、ピッコロの甘味の披露は続く。



「みんなー! コレ見てぇ~~~!」


「「「「はあーーーーーい!」」」」


「これー! なんだかわかる~~~?」


「「「「わーかーらーなーい~~~!」」」」


「あははっ! やっりぃ!

 じゃあ、ピッコロが教えてあげるー!」


「「「「教えてー! 教えてー!」」」」


「こーれーはーね~~~

 スライム餅って、いうの!

 とぉーーっても、甘くて美味しいんだからぁ!」


「「「「欲しいー! 欲しいーー!!」」」」

  「「「「うおおおおおおおおーーー!!」」」」

 ドオオオオォォォォーー!


 ピッコロの周りに客たちが押し寄せる!


「「「「うおおおおおおおおーーー!!」」」」

 ドドドドドドドド…………!

「きゃあ!!」


「こらこら! 皆、落ち着けーっての!!」


 

 しばらくは、ピッコロのスライム餅のお披露目

 が続いたのだが、シェンブリィ王子たちは、

 ただただ、呆然としているだけだった。

 

 コンフィに会える事を期待していただけに、

 目当ての少女が別人だったのが、

 ショックだったのだろう。

 

 シェンブリィ王子は、一応はもしやと思い、

 コンフィの匂いを感じるか試していたが、

 アルコールや油っぽい料理などの

 キツイ臭いが邪魔をしていて、

 コンフィの匂いどころか、

 甘味の匂いすらわからない。


 流石にこんな環境では、シェンブリィ王子でも

 コンフィの匂いを嗅ぎ分けることが、

 できなかったのだった。



「みんなー! 美味しい?」


「「「「美味しいー!!」」」」

「「「「もっとちょーだぁーい!!」」」」


「はいはーい! じゅんばーん!」


「「「「ワイワイガヤガヤ~~~!」」」」



 この甘味披露会(?)は、

 ピッコロが引っ込むまで続いた。



「さぁーて、帰るか!」

「だぁな!」

「ピッコロちゃんが居ないんじゃあな~」

「「「「ザワザワ……」」」」


「「「「……(汗)」」」」



 ピッコロの姿が見えなくなっただけで、

 店の中は今までと変わらない賑わいとなった。

 飲み屋ベリタスは昔から結構流行っていた。

 

 それはそうと、今回のお披露目甘味は、

 大成功だった。



 ・⋯━☞店の奥☜━⋯・


「大成功だったわね!」


「はぁい! これできっとスライム餅は、

 大ヒット商品になりますわ!」

 ポン! シュウゥウゥ~~~

「ふぅ~~~」



 ピッコロは、融合を解いて、

 プチコンフィと分離する。


 そして、

 クロフィが付与魔法をかけてくれた

 服の袖に腕を通す。


 すると、少し体が小さくなり、

 コンフィは、市井のいつものミーシャとなる。

 セーラー服に、紺色のプリーツスカートの。

 この服には、クロフィの、

 変身魔法が付与されている。

 少しだけ、体を退行させる事ができるのだ。

 見た目は、肉体年齢10歳くらいだろうか。


 ミーシャとは、市井でのコンフィの名だ。

 


「プチコンフィ、お疲れ様!」


「いえいえ でも、疲れましたわぁ~」


「ご苦労様! ほら! アンタの分よ!」


「あ! スライム餅ね?

 いただきまーす! おいひぃ~~~♡」


「うふふふふ♪」



 そんな、いつもの一時だったが、

 空気が一変する事になる。

 それは、ミーシャも理解していたこと。

 そう。いつかは、こんな日がくると……



 コンコン!

「「「!!……」」」


「ミーシャ ちょっといいかい?」


「あ、はい! どうぞ?」


「君にお客さんなんだが……」

 (パンデゥワンがばつが悪そうな表情をする)


「……コクリ」

 (ミーシャは、無言で頷く)



 ミーシャは、胸に手を当て、

 気持ちを落ち着かせようとする。

 内心、心臓がバクバクだった。

 だが、こんな時のために、

 交わす言葉は、何度も幾つも、

 イメトレして、考えていた。


 部屋へ入って来たのは、

 シェンブリィ王子1人だけだった。

 おそらく、先ずはシェンブリィ王子だけが、

 対応することにしたのだろう。



 コトッ!……

「やあ! 忙しい時に申し訳ないね」


「いえ、お初にお目に掛かります

 シェンブリィ第一王子様……

 私は、飲み屋ベリタスの女給、

 ミーシャと、いいます」

 (普通の営業的なお辞儀)


「うむ 僕の事はよく知ってるようだね?」


「それはもちろん!

 この国一の有名人ですからね

 知らない人の方が少ないのでは?」


「あははっ!

 なかなか物怖じしない性格なようだね!

 そう……まるで、ある悪役令嬢なように……」


「!……」

 ピクッ!……



 シェンブリィ王子のその言葉に、

 ミーシャは、ピクリと肩が動いてしまう。

 分かってはいたが、ここまでハッキリと、

 「お前はコンフィだ」

 と、言われたような態度をされると、

 流石に動揺してしまう。


 続けてシェンブリィ王子は話す。



「このクッキーは、君が作ったものだね?」


「!……それが何か?」


「実は、このクッキーからはね、

 僕の婚約し……」


「大変申し訳ありませんが!」


「?!……」



 ミーシャは、シェンブリィ王子に、

 全てを話させまいと、

 シェンブリィ王子の言葉に被り気味に、

 予め考えていた事を話し始める。



「私は、たとえ相手が王族だろうとも、

 たとえ神様であろうとも、

 特別な対応はする気などはありません!」


「!……あはは、まあ、待ってくれないか?

 僕は、ただ……」


「ですから、特別に誰かのためだけに、

 甘味を作る気などはありません!」


「い、いや、そうじゃないんだよ?

 あのね? この……」


「そのクッキーが欲しいのでしたら、

 毎日お昼すぎに、このベリタスへ、

 買いに来てもらえますか?」


「!?……いやぁ……」


「それと、数には限りがありますので、

 早い者勝ちとなります!」


「…………」


「あ、5日間は甘味は作っていますが、

 2日間は、私はお休みをいただいていますので

 私が居ない時は、諦めてくださいね?」


「……そうか 戻る気は無い……んだね」


「はて、何の事ですか?」


「いや、うん それなら、それで、

 仕方がない事だとは思う……でもね?」


「?……」


「皆、君の事は何でも知っているんだよ?

 だから、君が隠す事なんて何も無いんだ」


「!!…………」


「でも! 僕は、諦めないからね?」


「…………」


「それに、あのたちだってそうだよ?」


「………………」


「ずっと、君の帰りを待ってるから……」


「……………………」


「じゃあ、今夜はもう遅いから、

 僕たちはこれで失礼するよ?」


「……は…はい」


「また、来るからね」


 トットットッ……


「…………………………」



 シェンブリィ王子は、部屋から出て行った。

 ミーシャは、ポツンと立ちすくむ。

 そして、がクリと項垂れ、言葉を失う。


 言えなかった……


 謝罪の言葉も、何一つ……

 シェンブリィ王子は、

 ミーシャの正体を、いや、

 コンフィの正体を知っている風な事を言った。

 そして、他の皆もそうだと。


 でも、確信は持てなかった。

 なぜならコンフィは、

 魔王討伐隊のパーティーとしての責務がある。

 そのために皆は、自分を必要としているのだ

 と思っているからだ。


 コンフィ自身ではなく……


 でも今のコンフィは、

 もう騎士ではないと思っている。

 それに、自分よりも強い猛者なんて、

 いくらでも居るとも。


 わたくしが出ていく事なんてない。


 そう自分に言い聞かせるように、

 自分に向けて、皆に真実を話さない理由を

 ぶつけているだけに過ぎないとも分かってる。


 でも、怖い……


 秘密を知られるのが怖い……

 嫌われるのが怖い……

 冷たくされるのが怖い……

 皆が今までと態度が変わるのが怖い……

 無視されるのが怖い……

 居場所が無くなるのが怖い……


 だから、ミーシャは言えなかった。



「ねえ、どうせ逃げるのなら、

 全てを話して謝罪してから、

 逃げるんじゃなかったの?」


「!……そうだったのですが……

 やっぱり、怖くて……」


「…………」


「はぁっ……先は長そうね?」


「「…………」」



 ミーシャは、何も言えなかった。

 ここでまた逃げるか、留まるのか。

 せっかく、今の暮らしに慣れてきて、

 楽しくなってきたというのに。



 パフッ……バスッ!

「ふう~~~……」



 ミーシャは、ベッドに身を投げ、

 大の字になって仰向けになり天井を見つめる。

 頭の中がぐちゃぐちゃで、考えが纏まらない。



「はあ……どうしましょうか」


「「……」」



 ミーシャ、ふと目を閉じるのだった……



 ・⋯━☞繁華街通り☜━⋯・


 トットット……

「シェン?」


「「……」」


「……ふぅ 間違いないね」


「やっぱり!!」

「やっぱりなのー!!」


「だと思ったぜ!」


「え? アロガンス公爵子息?」


「分かってたのなら、なぜ言わないなの

 この脳筋愚息クソ野郎なの!!」

 (アロガンスの脇腹にパンチするメーべ)

 ドスッ!


「ぶはっ! ちょっ、なんだよおい!

 ベルドランデ嬢、まだ根に持ってるのか?」


「そんな事、今はどうでもいいなのー!!」

 (アロガンスの脇腹をつねるメーべ)

 グ二ッ!


「いててててっ! つねんなって!

 悪かった! 俺が悪かったから、

 もう何度も謝ってんだからさぁ、

 一々突っかかってくるなよ……(汗)」


「ふうーっ! ふうーっ! ふうーっ!(怒)」


「「「……(汗)」」」



 この2人に、いったい何があったのか?

 それはまた、別のお話……。



「それよりシェン!

 やっぱり、あのが、

 アンビジョーネ嬢に間違いないんだろう?」


「ああ 僕がアンの甘く優しい匂いを

 間違える事なんて有り得ないからね!」


「わたくしも、感じましたわ!

 アンお姉様ん♡の芳醇な甘い香りが!!」


「私もなのー!

 ツンデレ萌女神令嬢アン様の萌萌臭は、

 絶対に間違ったりしないなのー!!」


「ふむ 上手く化けたようだが、

 僕たちの嗅覚は騙されはしない」


「わたくし、迎えに行きますわ!!」

 ダダダッ!

「待つんだライナー嬢!」

 ガシッ!

「なっ?! 何をしますの?! 離して!」



 シェンブリィ王子は、ミーシャを連れ戻しに、

 また飲み屋ベリタスへ行こうとするリアを、

 引き止める。



「待つんだ!」


「どうしてですの?! やっと! やっと、

 見つけたのに! こんなに近くに居るのに!」


「ダメだって! 僕たちの気持ちばかりを、

 アンに押し付けたって、アンはまた、

 逃げる事になるんだよ? わかるだろ?」


「どうして?! こんなに愛しているのに!!」


「私も愛してあるなのー!」


「だからさぁ、それは、

 ライナー嬢とベルドランデ嬢の気持ちだろ?

 アンビジョーネ嬢の気持ちも汲まずに、

 ただ押し付けるだけじゃあ、避けられるのに

 決まってるだろう!」


「あうぅ……アンお姉様ん♡……すんすん(涙)」


「じゃあ、どうすればいいですなの?

 ツンデレ萌女神令嬢アン様だから、

 プチメーべで視覚転送も使えないなの……」



 そうなのだ。

 相手が妖精が見えない場合なら、

 妖精を向かわさて視覚転送で、相手側の様子を

 遠隔監視できるのだが、相手はミーシャだ。

 ミーシャはコンフィであり、

 コンフィにも妖精が見えるばかりか、

 2人も妖精が居るので、逆にバレバレである。


 為す術無し……


 そう思って、4人とも立ち尽くしていたが、

 とうとうリアは、我慢ができなくなってしまう。



「んんんんもおーー無理いーー!!」


「「「ええっ?!」」」


「わたくし、このアンお姉様ん♡無しでは

 生きていけませんわ!!」

 バタバタバタバタッ!!


「「「なっ?!」」」


「アンお姉様♡ああああーーーーー!!!」

 バタバタバタバタ……

「「ライナー嬢おーーー!!」」

「リア姉様あーーー!!」

 バタバタバタバタ……


「待ってぇーリアママぁ~~~(汗)」

 パタパタパタパタッ……


「チッ! ああもお! バカめ!!」


「なんて事を!!

 今、アンの心が壊れてしまったら、

 取り返しがつかないというのにぃ!!」



 リアは、走り出した!

 コンフィの甘い香りと温もりを求めて……

第78話、いかがでしたでしょうか?


コンフィは「最後にきちんと別れを」と決意したものの、

いざその場になると、やはり言葉は出てきませんでした。


そして一方で、シェンたちはすでに確信しています。


このすれ違いが、この先どう動くのか――

次回、大きく物語が動きます!


引き続き、よろしくお願いいたします!

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