第72話 (コンフィの章)見ないでくださいまし
今回は、コンフィにとって大きな転機となるお話です。
強さとは何か。
誇りとは何か。
そして、仲間とは何か。
少し苦しい展開になりますが、
最後まで見届けていただけたら嬉しいです。
••✼••校外訓練••✼••
・⋯━☞學園正門前☜━⋯・
「ま! えーまー本日は校外訓練としてー!
現役騎士団の、ピオニー女騎士団からー
ま、協力を得ることができたー!」
「ええっ?!」
「「「「?!……ザワザワ……」」」」
いきなり、驚いた!
まさか、校外訓練の相手がピオニーとは……
「よりにもよって、ピオニーとは……」
「これは、難儀ですわぁ~~」
「どうしましたの? アンお姉様ん♡」
「どうしましたのー」
「ツンデレ萌女神令嬢アン様、どしたのー!」
「どしたのー」
「い、いえ……なんでもありませんわよ?」
「なんでもありませんわ」
「………………」
(心配気にコンフィを横目で見るヴェティーン)
コンフィは、言葉にならない、
不安に苛まれるのだった。
なぜなら、ピオニー女騎士団の団長は、
わたくしと同じ、元男性騎士。
しかも、女装剤を飲まされ、女の子になって、
今では、ピオニー女騎士団団長を務めている。
もし、彼が……いや、彼女が、
わたくしが、元男性騎士だった事を、
皆に話したりでもしたら?
もう、今までのような暮らしはできない。
もう、今までのように皆と仲良くできない。
もう、今までのように一緒に居られない。
コンフィは、体の芯から震えるのだった。
••✼••一の鐘と三分の二の刻••✼••
(午前10時頃)
・⋯━☞ピオニー女騎士団施設☜━⋯・
「これは、ビオラ女騎士団長殿!
本日は、お世話になります」
「いえいえ、こちらこそ!
せいぜい恥をかかぬよう頑張らせてもらいますよ」
「…………(汗)」
(先頭に立つので隠れられないコンフィ)
《あの、小柄な女の子が団長ですの?》
(ボソボソとコンフィに聞くリア)
《そ、そうですわ 今では聖騎士に一番近い
実力……だとも聞きますわ》
《そうなのですか!? アンお姉様ん♡よりも
弱く見えるのですが……》
《しっ! 聞こえますわよ?》
《いけない!……(汗)》
コンフィは、今でも聖騎士になる夢は、
まだ捨ててはいない。
だが、現職としての聖騎士なら、
アイヨス聖国に政略結婚として嫁いだが、
聖騎士は存在するため、
聖騎士になる夢は絶望的である。
でも、もし聖騎士としての資格はどうあれ、
一番近いと言われているのは、
ピオニー女騎士団のビオラ団長である。
彼女は、元グラムレス騎士団騎士団長を務め、
聖騎士を除いては、最強と言われていた。
その理由は、女の子になった今、
大魔女ラカと、凄腕鍛冶師ファブロの合作の
「魔法少女×魔法戦士軽装アーマー」
を持つので、それにより変身したなら、
間違いなく現時点で最強と言えるだろう。
でも、コンフィだって負けてはいない。
プチコンフィとの妖精融合にて、
魔法騎士に変身すれば、ビオラに匹敵する
と、自負している。
しかし、今コンフィが抱えている問題とは、
そんな事ではない。
コンフィの正体を知るビオラが、
コンフィの秘密を皆にバラさないかと、
ヒヤヒヤしているのだった。
なので、できる事ならば、
ピオニー女騎士団との訓練はしたくなかった。
「皆さん、こんにちは!
私がピオニー女騎士団団長のビオラです!」
「「「「こんにちは! ビオラ団長殿!」」」」
「聞くところによるとーーー……」
(コンフィをじぃーっと見つめるビオラ)
「……はっ?!」
(ビオラの視線に気づくコンフィ)
いやああああああああ~~~!!
お願いだから、話を振らないでぇ~~~!!
とは思うものの、願いは神に届かず……
(出鱈女神だしね?)
「アザミ女騎士団、コンフィ団長!」
「?!……あ、はい なんでしょうか?
ビオラ団長殿……(汗)」
「何この子? 何この子?」
「久しぶりだな! 元気でやってるか!」
「「「「!!……」」」」
「!……ぐぬぬぬぬぅ~~~……
お陰……ざま”で……ばい”」
「何なのこの子? 何なのこの子?」
「ほお? 妖精が居るんだ?」
「「「「?!……」」」」
なんと!
ビオラにも、妖精が見えるらしい。
やはり、魔法も使える剣士だからか?
「え? ああ、はい
あの、妖精が見えますの?」
「あれ? わたくしが見えてますの?」
「ああ! 見えるとも!
俺には、魔法の才もあるんでな!」
「そう……なの……ですね……」
「貴女、本当にわたくしが見えてますの?」
「ああ、見えてるぞぉ! こっちへおいで?」
「ふふん? はぃーい!」
「あっ!! プチコンフィ?!」
プチコンフィは、喜んでビオラのもとへ飛ぶ。
しかし、お陰でコンフィの事については、
今は聞かれずに済んだ。
グッジョブ! プチコンフィ!!
なんて思ったのもつかの間……
「ほほお! 可愛いなぁ? ふんふん!
本当にそっくりだな? なあ、コンフィ?」
「∑(◎_◎;) ドキィ!!……」
「「「「…………」」」」
「あの、ビオラ団長殿!
はやく、訓練しませんか?
時間がもったいないですわ!」
「お! そうだったな! すまんすまん!」
「ふぅーーー~~~……(汗)」
グッジョブ! リアちゃん♡ もう大好き♡
後で、お礼のチューしてあげますからね!
しかし、一難去ってまた一難。
・⋯━☞訓練場☜━⋯・
コンフィのアザミ女騎士団たちは、
ピオニーとの対戦を模した、︎︎
「形」に入っていた。
形とは、予め順序と戦法や方法などが
決まっており、形に合わせて
徐々に早めていき、攻撃、防御、交わし、
などを練習する方法だ。
空手などでもよく行われる練習法である。
「「「「はっ! はっ! はっ! はっ!」」」」
「ほら、リーズ! 遅れていますわよ!」
「はっ! コンフィ団長!」
「ファティー! 打ち込む時に、
目を瞑る癖が出ていますわよ!」
「はっ! コンフィ団長!」
このまま、訓練が終わればいいのに……
なんて願いも虚しく……
「ふふふ なかなか、やるじゃないか?」
「え?!……ああ、それはどうも……」
「なあ、どうだ!
ひとつ、俺と模擬戦でもしてみないか?」
「え?!……」
「こんな時くらいしか、アンタとやり合う
機会はまず無いからな!」
「!…………」
「「「「?!……ザワザワ……」」」」
ほらきたぁーーーーー!!
そっとしておいて欲しいのにーー!!
仕方ない。
これは、ライバルからの挑戦ですわ!
逃げる訳にはいきません!
「いいでしょう! 受けて立ちますわ!」
「「「「うおおおおおおーーー!!」」」」
「ま! わっはっはっは!
ま、面白い事を始めたな?
ま、なら私が審判を努めようではないか?」
「「お願いします!」」
こうして、コンフィはビオラとの、
模擬戦を行なう事になってしまった。
「獲物は、ウチ(ピオニー)から出す!
刃を潰してあるから安心しろよな!」
「問題ありませんわ!」
「装備は一応着けておけ!」
「ふむ、必要ありませんわ!」
「なんだと?」
「模擬戦でございましょ?」
「!……ふふふ そうだな!
なら、俺も装備は無しでやるかー!」
「あら、大丈夫なのですか?
わたくしは、構いませんのよ?
まあ、弱い者イジメみたいで、
少々気が引けますが……」
「へん! 相変わらず減らず口は健在だな!」
「ふっふっふっ……」
「へっへっへっ……」
「ま! ダメだ!」
「「ええっ?!」」
「ま、模擬戦とはいえ、全力で戦え!
だから、装備は着けておけ!」
「「……はい」」
ヴェティーンの指示で、装備は着けて、
行うこととなった。
まあ、事故は避けたいからな。
互いに睨み合うコンフィとビオラ。
かつて、ビオラからのピオニー女騎士団への
入団の誘いを断ったことがある。
それは、彼、元グラムレスは、
コンフィ、元ドゥークよりも若くして、
団長になった事に、悔しい思いをしたものだ。
だが、今は違う!
コンフィだって今は団をまとめる団長である。
ここで、無様に負けたくはない。
しかし、聖騎士に一番近いと言われるビオラに
どこまで自分の力量が通じるのか?
避けたい気持ちと、やりたい気持ちと、
ドゥークの頃よりも強くなったと自負する
今の自分の実力を試してみたい気持ちが、
グチャグチャだが、気持ちは高ぶっている。
こんなに興奮したのは、久々だ!
ワイバーンと対峙した時よりも興奮していた。
・⋯━☞野外訓練場☜━⋯・
模擬戦は、互いに思い切りやろう!
って事で野外の訓練場で行われることになる。
「「「「ワイワイガヤガヤ~~~」」」」
「さあ! 御着替二本勝負!(約1時間)
試合続行不能な負傷をした場合、
そして、︎︎゛参った︎︎゛と宣言した場合は、
負けとする! 両者、構え!」
「……ふん!」
身長140cmの小柄な体に、
軽装アーマーを装備した、刀のビオラ。
「……ふぅ!」
身長162cmに、ドレスアーマーを装備した、
大剣のコンフィ。
片方は、
次期聖騎士と謳われ、
もう片方は、
魔王討伐隊に真っ先に選ばれた猛者。
これほど面白い対戦は、
滅多にお目にかかれないというもの。
この場に居る全員が、コンフィとビオラの、
勝敗のゆくへを見逃さまいと見入った。
「ま、では~~~始めっ!!」
ダダッ!!
「っつえええいっ!!」
(真正面から大剣を振り下ろすコンフィ)
ブォン!
「うおっ?!」
(刀で大剣を受け止めるビオラ)
ガツーン!
「んぐゔっ!··········重っ!」
ギチギチギチギチ……
「んん……流石に一撃では沈みませんか」
先手に出たのはコンフィだった。
コンフィが頭上から大剣を振り下ろすが、
ビオラは刀を盾に両腕で受け止める!
ビオラの足下では、土が円形にひび割れ、
めくれ上がっている。
コンフィの一振の重さが視覚的にわかる。
コンフィは、渾身の一撃とは言わないが、
それでも小柄な体のビオラが、コンフィの太刀
を完璧に受け止めたのは流石だ。
「流石に魔王討伐隊に選ばれるだけの事はある
だが、言い出しっぺが、易々とやられる
訳にはいかないのでね!」
「そうですか ならば、わたくしも
本気でいきましょうか!」
「当たり前だ! 俺はアンタの本気を
見てみたい!
不屈の副団長と言われたアンタのな!」
「不屈の副団長……か 昔のことですわ!
今のわたくしは、コンフィ団長ですわ!」
ギャイン!!
「くっ!!」
ビオラは、刀を斜めにして、
コンフィの大剣を滑らせ、しゃがみこみ、
体勢を崩したコンフィの横腹に向け刀を振る!
「はっ!」
ブン!ガキィン!
「おっ?!」
コンフィは、片手で大剣を振り、
ビオラの刀をなぎ払う!
そしてそのまま、ビオラが刀を持ち直す前に、
体をクルリとスピンさせて、ビオラの肩に向け
大剣を振るが、ビオラは小柄な体を活かして
俊敏に身を交わし、後ろへジャンプして、
間合いを取った!
ブォン!
シュシュッ!
……シュタッ!
「ふう! やっべぇ!!」
「……やりますわね?
今のは当たったと思ったのですが……」
「ふふふ 流石は、俺なんかよりも
長年騎士やってただけ慣れはあるな?
戦法が豊富だわな!」
「お黙りなさい! それ以上、わたくしの
昔の事を掘り出す物言いは、おやめなさい!」
「は? なんだアンタ、皆に話してないのか?」
「くっ!…………それが何か?」
「別に言えばいいじゃねぇか?
アイツらも、そんな事など、
気にする奴らじゃねえだろう?」
「貴女に、何がわかりますの!!」
ダダッ!
ガキィン!
「くうっ!」
コンフィは、これ以上ビオラに、
下手な事を喋らせまいと、連続的に攻撃する!
もう、半分切れかけていた。
「つええいっ!」
ブゥン!ガン!
「ぬわっ!」
「ってぇい!」
ブン!ガギィン!
「うっ!」
「つえい!!」
ブン!ガツン!
「ちょまっ!」
「つやあっ!!」
ブン!カキィン!
「うわっと!」
「っつえええいっ!!」
ブォン!ガァン!!
「ぐわっ!!」
コンフィの親の仇みたいな大剣の大振り!
それでも的確に急所を狙っての連続攻撃だ。
ビオラは、まともにコンフィの大剣を受けては
たまったものではないので小さい体を活かした
身を交わしながらの大剣の軌道を交わすのみ。
しかし、ビオラもやられっぱなしではない!
ビオラが、また後ろへジャンプして、
コンフィから間合いを取ると、
一瞬でその雰囲気が変わった!
「うぃやあっ!!」
ブォン!
シュパッ!……タタッ!
「ぬっ?!……」
「はぁ……はぁ……ふぅ~~~なかなか!
ならば、これならどうだ!!」
ブォン!……ウォンオン~~~……
「?!……こ、これは?!」
ビオラは、刀を横一文字に構え、
一瞬力む姿勢になると、
体にオーラを纏い、ひとつ格を上げたのだ!
「な、何なんですかそれは?!」
「俺の奥義だよ!
魔法戦士化……とでも言っておこうか?」
「魔法戦士?!
それって伝説の戦士の事ではないですか!」
「ふっふっ~~~ん! そーなのだぁ!」
「なんて事ですか……(汗)」
そう。
「伝説の魔法戦士」
とは、何代か前の魔王戦で現れた、
剣も拳も使うといわれている 。
聖騎士でもなく、剣士でもなく、
それでいて得物は何でも使えるという、
もう反則張りなジョブである。
とにかく腕力がバカが付くほと強くなり、
当時の魔王は、かつての魔法戦士に、
為す術なく降参したと言う。
「へえ~~~よく知ってたね?
流石は、元副団長様だな!」
「ぬっ! それを言うなっつーのぉ!!」
ダダッ!
「へへっ! こいっ!!」
「っつえええいっ!!」
ブォン!
ブォン!
ブォオォン!
「わっ! たっ! おりゃあ!!
キャイィ~~~ン……
シュルルルルル…………
「あっ?!……」
コンフィは、大剣を弾き飛ばされてしまう!
…………ガランガラン!
「くっ……」
コンフィの大剣は、手の届かない場所へ
飛ばされてしまった!
絶体絶命!!
そして……
「はっ?!」
ドスッ!!
「ん”っ!!」
と、そこへビオラの拳がコンフィの鳩尾に
容赦なくくい込んだ!
「ん”ん”……んんん……くっ……」
ガクン!……
「「「「アンお姉様あー!!」」」」
コンフィは、膝をついてしまった。
この時点で、コンフィの負けを意味する。
「くふっ……かはっ!……負けましたわ」
「へっへっへっ……な!」
「まっ! 勝者、ビオラ!」
「「「「うおおおおおおおーーー!!」」」」
「そんな……アンお姉様んが負けるなんて」
「ツンデレ萌女神令嬢アン様ぁ! ふぇん(泣)」
コンフィは、負けてしまった。
そして、もう騎士としても終わったと思った。
なぜなら、現役とはいえ、歳下のビオラに
負けてしまったのだ。
女騎士団長としても、終わったと思った。
他の女騎士団長に負けた女団長になど、
誰がついて来ると言うのか、と。
コンフィは、膝つき、両手も地についたまま
微塵とも動くことはなかった。
ライバルと認めた相手に負けたのだ。
どこに、上げる顔があるというのか。
するとそこへ、アザミ女騎士団たちが、
駆け寄って来る。
バタバタバタバタッ!
「「「「コンフィ団長!!」」」」
「アンお姉様ん♡!!」
「ツンデレ萌女神令嬢アン様あ!」
「リア··········メーべ··········そして皆様··········
わたくし……負けてしまいましたわ……
申し訳ありません……不甲斐ないわたくしで」
「「「「………………」」」」
コンフィは、プルプル震えていた。
皆の顔を見るのが怖かった。
ポタッ!……ポタッ!……
コンフィの目から涙が落ちる。
悔し涙が、こんなにも無味だとは……
吐く言葉が見つからない。
できる事なら、この場から消え去りたい。
でも、リアとメーべは、
そんなコンフィに優しい言葉をかけてくれる。
「よく、頑張りましたわ!」
「そうですなのぉー!」
「っへ…………うっ…………」
(言葉が出ないコンフィ)
「「「「アンお姉様! アンお姉様ぁ!!」」」」
「?!……皆さん……ごめんなさい……」
「謝る事などなにもありませんわ!」
「なにもありませんわ!」
「そうなのー!
ツンデレ萌女神令嬢アン様は、
よく、がむばったなのー!」
「がむばったなのー!」
「「「「アンお姉様! アンお姉様!」」」」
「………………」
「……」
もはやコンフィには、皆の言葉が、
届かなかった。
気休め? 哀れみ? 社交辞令?
そんなものなど、要らない……
隠れる場所があるなら隠れたかった。
こんな無様な姿を晒すくらいなら、
ビオラに殺られた方がマシだった。
「見ないでくださいまし!!」
「「「「?!………………」」」」
「ま、アンビジョーネ嬢……」
コンフィのこの言葉ひとつで、
周囲の全てが止まった。
八つ当たりだとは分かってる。
それでも、やるせなかった。
もし、もう1人自分が居たなら、
この首を落として欲しいとさえ思った。
それくらい、今の自分には、
存在価値など皆無だった。
コンフィは、ゆらりと立ち上がると、
なにも言葉を発せずに歩きだす。
トッ……トッ……トッ……
「ま、おい! どこへ行く?!」
「………………」
「……」
コンフィは、なにも言わない。
プチコンフィも、なにも言わなかった。
コンフィの気持ちが伝わったのだろうか。
すると、そこへビオラが……
「おい! どこへ行くつもりだアンタ?」
「!……貴女に話す筋合いはありませんわ」
「そんなつれないことを言うなよ?
同じ、呪の薬の被害者じゃねぇか?」
「!!……」
ビクッ!……
「「「「?!……」」」」
「俺たちは、男騎士から女になって心機一転!
共に人生やり直し組だろ?
これからも、仲良くしよーぜ! な?」
「………………(震)」
ガクガクブルブル……
もう、今のビオラの言葉で、
ここに居る者たち全員には分かったはず。
コンフィも、ビオラと同様に、
女装剤によって、男から女にされた
被害者なのだと……
終わった……
「……皆様、申し訳ありません」
「アンお姉様ん♡?」
「コンママ?」
「ツンデレ萌女神令嬢アン様? どしたなの?」
「どしたなのー?」
「わたくしは……もう……
アザミ女騎士団団長ではありません」
「「「「ええっ?!」」」」
「なんで?! アンお姉様ん♡!!
ビオラ団長に負けたくらいで?!
そんな事など、ありえませんわ!!」
「そーなのー!
ビオラ団長は、変身したなの!
でもツンデレ萌女神令嬢アン様は、
変身してなんてないなのー!
負けても仕方ないなのー!!」
「いいえっ!! そこでは、ないのです!」
「「「「!……」」」」
そう。
そこではない。
負けたから、アザミ女騎士団では、
居られなくなったのではない。
元、男騎士だった事を知られてしまった。
どう思われているだろうか?
気持ち悪いとか思われているだろうか?
オッサンが、女の子の格好をして、
女騎士の真似事をして、不格好だよな。
こんなオヤジに叱られたりして、
さぞ嫌だっただろうな。
負の念がとめどなく溢れてくる。
その時、プチコンフィが叫んだ!
「コンママ! やめてっ!!」
「「「「えっ?!」」」」
「どうしましたの?! プチコンフィ!」
「コンママから、魔物が生まれちゃう!」
「「「「ええっ?!」」」」
魔物とは、人の負の念の魔力から生まれる。
だがそれは、負の念の魔力溜まりからだ。
コンフィ1人の念だけで、
魔物なんて生まれるのだろうか?
いや、もう、今となっては、
そんな事など、どうでもいい。
わたくしはもう、ここを去るのだから……
「プチコンフィ? どこまでも、
一緒に付いて来てくれますか?」
「え? えと……はい もちろん!」
「「「「ええー?! ワイワイガヤガヤ」」」」
「アンお姉様ん♡! どうしてですの?!
なぜ?! どこへ行くと……」
「リア?……いえ、フリージアさん?
今まで、貴女を欺てごめんなさいね?」
「へえ?……なにを……」
「メーべさん? どうか、フリージアさんを
よろしくお願いしますわね?
この子、よく無茶をしますから、
誰かが見ていてあげないと……」
「それは、うん! そうするなの!
でもなぜ? そんな事を言うですなの?」
「ふふ……わたくしは、もう、
アザミ女騎士団団長としては居られません
貴女たちを、欺ていたのですから……」
「……なんでですなの? なんで?!
なんでツンデレ萌女神令嬢アン様は、
そんなに苦しい顔をするですなの?!」
「!……はぁ~はい! とても苦しいです
もう、苦しくて辛くて……
だから、皆さんの傍から離れないと……」
「どおーしてぇ!! アンお姉様ぁ!!
負けたからって、なんでぇー!!」
「そおーですなお!! 負けたのは、
変身してないからなのー!!
あんなの負けたうちに入らないなのー!」
「ま、落ち着けお前たち!
ま、なあ、アンビジョーネ嬢よ、
ま、考え直せ! な?
お前がいなきゃ、アザミ女騎士団は、
ま、アザミ女騎士団ではなくなるぞ?」
「うぅん! そんな事はありませんわ
アザミ女騎士団には、
フリージアさんが居ますから!」
「いやぁーよぉ!! アンお姉様がいなきゃ
アザミ女騎士団なんて、
アザミ女騎士団じゃない!!」
「「「「そうですぅ! アンお姉様ぁ!!」」」」
「っあー! 本当に幸せでした
願わくば、この幸せが、ずっとずうーっと
続けばいいなと、思っていましたが、
やはり、物事には始まりがあれば、
終わりが必ずあるものですね……」
「「「「?!…………」」」」
「さよなら!!」
タタタッ!
「「「「ああっ!!」」」」
「まっ! おい、お前たち何してる!
アンビジョーネ嬢を追えっ!!」
「「「「はっ!!」」」」
バタバタバタバタッ!
「「「「わあああああーーー!!」」」」
ドドドドドドドドッ……
「うお! すんげぇ! まるで地震だぜ!」
などと、この災いの発端でもあるビオラは、
なんとも呑気の事を言っていたが……
「なあ、ヴェティーンさんよ?」
「ま、なんだ?」
「アザミ女騎士団の子たちは、
コンフィが元ストローム騎士団の
副団長だったって知ってんだろ?」
「あん? ま、そりゃあ、もちろんだ!
ま、學園に入学するときに、聞いたはずだ!」
「はあ……なら、なんでアイツ……
コンフィのヤツは、必死になって隠すんだ?」
「あん? ああ~~~な!
ま、アンビジョーネ嬢だけが知らないんだ」
「は? なんだそれ?」
「ま、だから、なにも知らないのは、
アンビジョーネ嬢だけなんだよ!」
「ちょっ! おいおい! まさか、
コンフィが元ドゥークってオッサンって
ことは、もう皆知ってるんだろ?
それを、知らないのが、コンフィだけ?」
「まっ! そーゆーことだな!」
「っはぁ~~~?!
それ、言ってやれよぉ~~~!!
いくらなんでも、あれは可哀想だろ!!」
「ま、そーかもな? ま、まさか、
こんな事になるとはな!」
「おいおい……マジかよ……(汗)」
なんと!
コンフィが元ストローム騎士団副団長の
ドゥークという名のオッサンだったのは、
アザミ女騎士団の全員が既に知っていた?!
この事について、何も知らないのは、
コンフィだけだった……
何度も言うが、コンフィだけが、
知らなかったぁ!?
おお……哀れなコンフィ。
秘密を知られてしまったと思い込んで、
皆の前から去ってしまったではないか!
どうするの?! この始末……(汗)
••✼••御着替一つ••✼••
(約30分後)
・⋯━☞野外訓練場付近の森の中☜━⋯・
コンフィは1人、いや、プチコンフィと2人、
巨木の根っこの間に隠れるように、
座り込んでいた。
「はぁ…はぁ…はぁ……」
「コンママ、大丈夫ですの?」
「え、ええ、大丈夫ですわ……」
「ふぅん……模擬戦、残念でしたわね?」
「ああ、いえ、仕方ありませんわ
あれが、今のわたくしの実力なのでしょう」
「これから、どうしますの?」
「!……どうしましょうか?
もう、アザミ女騎士団を辞めたのなら、
実家にも帰れませんしね……」
「だとしたなら、もうお母様とも……」
「!!……お母様…………お母様…………」
「ああっ! ごめんなさい!
わたくし、泣かせるつもりでは……」
「ええううう……すん……すん……お母様……」
どうして、こんな事になってしまったのか。
自分が情けなくて、不甲斐なくて、
辛くて、悲しくて、苦しくて、
もう母とも会えないと思うと、
余計に悲しくなってしまう。
すると、なにやら下っ腹に何かがある?
いや、何かが動いている。
ちょうど、おパンツの上あたりに。
プチコンフィが?!
いや、プチコンフィは、ここに居る。
なら、おパンツの中でうごめくものは?
「え? ええ? なになになに?!」
「ええっ?! どうしましたの? コンママ!」
「なにか……なにかが、わたくしの、
おパンツの中に……!」
「はぁい?! おパンツの中に?!」
「え、ええ……なんでしょうか?」
コンフィは、スカートを捲って、
おパンツを少し下へズラしてみた。
すると……
スポーン!
「きゃあ?!」
「ひゃあ?!」
「ああんもぉ! 早く出してよね!!」
「「はぁい?」」
「貴女! わたくしのママでしょ?
名前は、コンフィだから~~~」
「コンママですわ!
って、貴女は誰ですの?!」
「?!……貴女、妖精ね?
ふぅ~ん へぇ~?」
「な、なんですか?!
って、貴女は何者ですか!!
どうしてコンママのおパンツの中に、
入っていましたの?! この羨ましい!」
「ちょっと、プチコンフィったら(汗)」
コンフィのおパンツの中から出てきたのは、
プチコンフィにソックリな妖精?
みたいだが、なんだか黒い肌?
南国生まれの妖精みたいな?
いやいや、南国生まれの妖精が黒いなんて
知らないですけれども……(汗)
「おパンツの中に入ったのではなくて!
コンママのお腹の中から出てきましたの!」
「「ええええええええーーーーー?!」」
「ああーもぉ! うるさいですわねぇ!」
プチコンフィにソックリな黒い肌の妖精は、
コンフィのお腹の中から出てきたと言った!
そんなの、聞いた事がない!
しかし、プチコンフィに比べると、
少々気が荒そうな?
「………………あ、あの~貴女は?」
(おそるおそる聞くコンフィ)
「わたくしは、
コンママの黒い魔力から生まれた妖精!」
「「うえええええええーーー?!」」
黒い肌の妖精は、コンフィの黒い魔力から
生まれたとハッキリと言った!
黒い魔力というのは、まさか負の念の魔力?
メーべの定義したものでは、
「負の魔力」
と、今は呼ばれている。
では、魔物になるのでは?
「ああー!! もぉ! うるさいってば!」
「だから、貴女なんなのよ!!
コンママの黒い魔力から生まれたってなに?」
「黒い魔力とは、負の魔力?
ま、まさか、魔物?」
「違いますぅー!
わたくしが魔物に見えますかー?」
「なんか、ムカつくわねこの子……(怒)」
「でも、妖精には違いありませんわ!
コンママの、︎︎゛丹田︎︎゛と呼ばれるところから
生まれたのですわ!」
「「丹田?!」」
「丹田」とは、地球の東洋では、
「気」を溜める場所と言われている。
女性なら、ちょうど子宮のあたりである。
もしかして、この黒い妖精は、
コンフィの子宮の中に溜められた魔力から
生まれたとでも言うのだろうか?
「ちょっ、ちょっと待ってください!
で、では、貴女はわたくしの……赤ちゃん?」
「!……うぅ~~~ん そうとも言えるし~
違うとも言えるし~~~わかんない!」
「「ミ(ノ_ _)ノ_ _)ノ=3 ドテッ」」
「でもね! わたくしは、間違いなく、
コンママから生まれた妖精なのですわ!」
「「………………(汗)」」
とにかく、コンフィから生まれたのは、
間違いなさそうではある。
しかし、コンフィの黒い魔力から生まれた?
だとしたなら、魔物に近いのでは?
とにかく、見捨てるわけにもいかず……
「わかりましたわ!
わたくしは、貴女を受け入れますわ!」
(なんでも受け入れるコンフィ)
「当然ですわ! そうでなきゃ困りますわ!
だって、わたくしのママなのですから!」
「ふぅん……では、お名前は?」
(なんだか面白くないプチコンフィ)
「そうですわねぇ~~~
貴女がプチコンフィなら、わたくしは~~~
プチ黒コンフィ!」
「「プチ黒コンフィ?!」」
「そ! 縮めて、クロフィ!」
「「クロフィ?!」」
「プチコンでもいいですわよ?」
「「︎︎゛黒︎︎゛は、どこに行ったの?!」」
「じゃあ、やっぱり、クロフィで!」
「「………………はぁい(汗)」」
また、よく分からないのが増えましたわね……
ゆく宛もないのに、どうすればよいのか?
第72話、いかがでしたでしょうか?
コンフィの中で積み重なっていた不安や恐れが、
一気に表に出てしまう回となりました。
そしてまさかの新存在「クロフィ」登場……!
今後どう関わってくるのか、作者自身も楽しみです。
次回、コンフィはどうなるのか。
ぜひ引き続きよろしくお願いいたします。




