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黄昏は悲しき堕天使達のシュプール  作者: Mr.M
三章 Remnant 6月

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37/136

第37話 重なり合う影

それから数日後の放課後。

俺は3人を校舎の屋上に呼び出した。

屋上の扉は普段は施錠されておらず、

誰でも屋上に出ることができた。

しかし。

施錠されていないとはいえ、

古く重い鉄の扉は、

大人でも開けるのに多少苦労した。

それもあってか。

屋上を利用する生徒は

それほど多くはなかった。

低学年の子供達は、

わざわざ

屋上まで上がってくることはなく、

ここへ来るのはせいぜい

5、6年生の子供達だけだった。

屋上には。

安全のため背の高いフェンスが

設置されていて、

そのフェンスを乗り越えない限り、

転落することはない。

俺が屋上の扉を開けた時、

翔太と洋と茜の3人は

お互いをけん制するように、

微妙な距離を空けて立っていた。

そして。

屋上には俺達以外に誰もいなかった。


「こんなところに呼び出して、

 どうしたんだよ?」

俺に気付いた洋が真っ先に口を開いた。

「大事な話って何・・?」

翔太はキョロキョロと視線を泳がせて、

洋と茜の様子を窺っていた。

「私。

 今日はピアノのお稽古があるから、

 早く帰らないといけないの」

伏し目がちにそう呟いた茜は、

どこからどうみても

あどけない少女だった。

「一度、

 皆で話をしておいた方が

 いいと思ったんだ」

俺は3人の顔を順に見回した。

「話すって何を?」

3人の声が重なった。

「とりあえず座ろうか」

俺達は輪になって、

コンクリートの地面に腰を下ろした。


「大吾が死んでから。

 皆、

 バラバラだっただろ?」

俺は単刀直入に切り出した。

子供相手に下手な芝居や駆け引きを

するのは悪手だ。

子供は大人が考えている以上に

敏感で聡い。

「だ、だって・・」

「そんなこと言われても・・。

 なぁ・・」

「私もそうだけど。

 翔太さんも洋さんも。

 あの日のことは忘れたいのよ。

 ね?」

茜の言葉に2人が小さく頷いた。

「確かに。

 あれは悲惨な事故で、

 俺も蒸し返したくはない」

俺はあえて「事故」という単語を

強調した。

「だろ?

 だったらこの話は止めようぜ」

洋が抗議した。

「俺が言いたいのはさ。

 大吾がいなくても、

 俺達の関係は今まで通りだろ?

 っていうことさ」

俺の言葉に3人は黙った。

翔太は膝を抱えて俯いていた。

洋はただ漠然と宙を見ていた。

茜はそんな2人の様子を

交互に見比べていた。

3人はしばらく口を開かなかった。


「・・さすがに。

 ここで煙草吸ったらまずいよな?」

やがて。

洋が冗談めかして言った。

「一応。

 鞄の中に入ってるけどね」

「私は駄目。

 ピアノの先生にバレちゃうわ」

翔太と茜が軽い調子で応えた。

そして。

3人は顔を見合わせた。

「ははは」

「ひひひ」

「ふふふ」

それから3人は照れたように笑った。

過去のわだかまりを捨て、

すぐに気持ちを切り替えられるのは、

子供の良い所だ。

「俺達は今まで通り仲間だろ?」

俺はもう一度念を押した。

「もちろん!」

「当たり前だろ」

「今まで通り仲良くしましょ」

すぐに答えが返ってきた。


それから。

俺達はしばらく屋上で話をした。

やがて。

茜のピアノのレッスンの時間が近づき、

彼女は先に帰っていった。

洋が

「煙草が吸いたいぜ」

と言うと、

翔太も大きく頷いた。

俺達は学校を出て、

『Paradise Garden 中之島』

へ向かった。

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