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黄昏は悲しき堕天使達のシュプール  作者: Mr.M
一章 Reunion 4月

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第2話 あっくん

「・・あっくん」

その声に俺は振り向いた。

窓から中を覗くと、

教室には誰もいなかった。

「・・あっくん」

ふたたび声がした。

今度はどこか遠くから聞こえてきた。

俺は周囲を見回した。

いつの間にか。

周りには濃い霧が立ち込めていた。

すぐ目の前の景色でさえ、

霧に遮られて、

はっきりと見えなかった。

校庭から聞こえていた

子供達の声が止んでいた。

「・・あっくん」

また声がした。

その時。

声の主が女であることに気付いた。

そして。

その声は俺の記憶を刺激した。

懐かしい声だった。

「・・あっくん、朝よ。

 早くしないと遅刻するわよ」

俺はその声が

母に似ていることに気付いた。

それに。

「あっくん」という愛称。

俺をそう呼ぶ人間は少ない。

両親を除けば、

小学6年生の頃のクラスメイトだけだ。

小学6年生になる春、

俺は父親の仕事の都合で転校した。

新しい学校と

新しいクラスメイト。

そんな中で、

気が付けば俺はクラスメイトから

「あっくん」

と呼ばれるようになっていた。

夢か。

ぼんやりとした頭でそう思った。

『遅刻』

その言葉は

今の俺には無縁だったからだ。

「・・あっくん、

 起きなさい」

母に似た女の声が

しつこく俺を呼んでいた。

霧が先ほどよりも濃くなって、

俺の体は完全に霧に飲み込まれていた。

足掻こうとしても体が動かなかった。

霧が口や鼻から俺の中に侵入してきた。

しかし。

不思議と息苦しさはなかった。

「・・あっくん、

 早く起きなさい!」

女の声は若干苛立っていた。

「遅刻してもお母さんは知りませんよ」

ついに声の主が母を騙った。

「あっくん、

 今朝はお母さんも忙しいんだから、

 後は自分で用意するのよ」

記憶の中の母の声が

目覚ましのアラームのように

俺の意識を刺激した。

俺を取り囲んでいた霧が晴れ、

視界が明るくなった。

そして。

俺は目を開けた。

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