第106話 限りなく黒に近い灰色
夕食を食べてから、
俺はベッドに横になった。
そして。
ぼんやりと天井を見つめながら、
一色のことを考えた。
ボス猿の遺書の発見者でもあり、
葉山の3、4年生の頃の担任。
2人の死に接点のある人物。
断定はできないものの、
その立場は、
限りなく黒に近い灰色だった。
灰色はグレー。
グレーは鼠色。
鼠色は灰色。
灰色はグレー。
そんなことを考えていると、
満腹感と布団の温もりに、
瞼が次第に重くなってきた。
そして。
俺は深い闇に落ちていった。
真っ暗な場所で目が覚めた。
起き上がろうとして、
俺は自分がすでに
立っていることに気付いた。
・・おかしい。
俺は部屋のベッドで
横になっていたはずだ。
手を動かそうとしたら、
指先が固いナニカに触れた。
足を前に踏み出そうとしたら、
膝が固いナニカにぶつかった。
そこでようやく。
俺は自分が何か狭い箱のようなモノに
閉じ込められていることに気付いた。
その時。
すぐ目の前の、
やや高い位置に、
横に走った数本の切れ目が見えた。
そこから微かに、
光が差し込んでいた。
俺はつま先立ちになって、
目一杯背伸びをした。
辛うじて一番下の切れ目から
外を覗くことができた。
綺麗に並んだ机と、
その向こうに黒板が見えた。
ここは・・。
どうやら。
俺は教室の後ろにある
掃除用具入れの中に、
閉じ込められているようだ。
脱出しようと、
正面の壁を押したものの、
不思議とぴくりとも動かなかった。
何度か叩いたが、
薄い金属の壁は
甲高い音を響かせるだけだった。
その時。
教室のドアが開く音がした。
続いて足音が1つ。
そして。
狭い視界の中に男が映った。
大きな男だった。
男の顔は見えなかった。
男は黒板の前で立ち止まった。
その直後。
また誰かが
教室へ入ってくる足音がした。
すぐに。
その人物が視界に入ってきた。
奥川だった。
何で奥川が?
その疑問が解けないうちに、
つま先が限界を迎えた。
俺は踵をつけると、
外の2人に聞こえないように、
ゆっくりと深呼吸をした。
この時。
俺はなぜか
2人に気付かれてはいけないと思った。
「やめて!」
ふいに奥川の声と、
机がガタガタと揺れる音が聞こえた。
俺はふたたび背伸びをした。
細い切れ目から
俺の目に飛び込んできたのは、
教卓の上に押し倒されている
奥川の姿だった。
「嫌だっ!
何するのよ!」
奥川の悲鳴が、
静かな教室に響き渡った。
男は無言で奥川を押さえつけていた。
「いやぁぁぁ」
という叫び声と共に、
ビリビリという服の破れる音がした。
奥川の服が裂けて、
漆黒のブラジャーが露わになった。
男の手がそれにかかった。
そして。
強引に引き下ろされ、
乳房が露わになった。
「やめろー!」
俺は腹の底から声を出した。
しかし。
俺の叫びは声にならなかった。
物音を立てようと正面の壁を叩いた。
高い金属音が狭い空間に木霊した。
男の手が奥川のスカートを剥ぎ取った。
俺はもう一度、
思い切り正面の壁を殴った。
金属音が虚しく響いた。
「誰かー!
助けてー!」
奥川の叫び声を無視して、
男は黙々と作業を続けていた。
男の手が
奥川の最後の砦である下着を
引き裂いた。
「やめてー!」
いつの間にか。
男は下半身を露出させていた。
固く屹立したモノが
俺の目に飛び込んできた。
「やめろおおおおおおお!!」
俺は腹の底から声を出そうとした。
しかし。
言葉にならなかった。
男が強引に奥川の中へ
押入っていくのが見えた。
「いやああああぁぁぁ!」
奥川の叫び声に涙声が混じった。
男の腰遣いが速くなるにつれて、
奥川の体から
力が抜けていくのがわかった。
叫び声は嗚咽に変わっていた。
男の荒い息遣いがここまで届いた。
男は奥川の乳房を乱暴に掴んだまま、
さらに激しく腰を動かした。
次の瞬間。
絶頂に達した男が雄たけびをあげた。
そして。
静寂が訪れた。
奥川のすすり泣く声が、
静まり返った教室に反響していた。
奥川の体から男が離れた。
ふいに。
男がゆっくりとこちらに顔を向けた。
その顔を見た瞬間、
俺は息を呑んだ。
その男は大吾だった。
大吾が、
恨めしそうな目で俺を見ていた。




