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立ち上がり、Androidをポケットに押し込んだ瞬間、私は自分が桜新町駅のホームに立っていることに気づいた。降りた記憶はない。


全身の筋肉を硬直させて身構えた。

ここからまたあの飛行音が聞こえてきたらと思うと、未経験の格闘技の構えを四方八方に向けたくなる。


……5分が経過した。頭はまだ割られていない。


私は安堵のあまり、その場に座り込んだ。周囲の視線などどうでもよかった。


ここからどう行動すればいいのかがわからない。

とりあえず朝の会議には出られない。状況が状況だけに連絡なしでもいい気がしたが、理由に「私用のため」、そして「体調不良」と書き加えて有給申請を出した。全て事実だが、妙な申請になってしまった。


このまま自宅へ帰ることも頭をよぎった。

なんとなく、桜新町を境界線として渋谷から遠ざかれば安全なのではないか、という仮説が自分の中で浮かんでいたからだ。


試すのは恐ろしい。覚悟が決まるまで、この安堵の地「桜新町」を歩いてみよう。


それにしても、なんだこの悩みは。斬新すぎる。どこに相談すればいいというのだ。

道行く気の良さそうな人に、「あの……桜新町より先の渋谷方面の駅で降りると、高校生にiPhoneで頭をカチ割られるんです。助けてください!」とでも言ってみるか?

夏の暑さで頭がやられたと思われるか、下手をすれば通報されるのがオチだ。


「座り込んで、どうされましたか? 気分でも悪いですか?」


駅員さんが優しく、けれど暗に邪魔だと言いたげに声をかけてきた。


「すみません、立ちくらみで……」


しょうもない嘘を吐いて立ち上がり、移動を開始した。


どうしてこんなことになったのか。本能のままに足を動かしていると、南口の階段を上がっていた。

地上に出ると目の前にコンビニがあり、その前にはサザエさんの銅像が立っていた。


ちょっと古いタッチのサザエさんだな、などと考えていると、Androidの通知音が鳴った。

開くのが怖い。恐る恐る画面を見る。


マップアプリが、とある神社を示していた。

近くにある「桜神宮」という神社だった。


神頼みでもしてこいと言うつもりか?

行くわけがない。気味が悪すぎる。

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