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異世界に落ちたら愛を知った  作者: 青井空


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26/26

希望

あれから。


昨日も、今日も、何度も戦いに行ったけれど、誰ひとり大きな怪我もなく、無事に帰ってこれた。そのことが、まず一番嬉しい。


戦いの前には、みんなで円陣を組んで声を合わせる。


「油断すんなよ!!」

「おぉ!!」


バーツの低い声がまとめてくれると、どこか心が落ち着く。今日の草原も、虫が散発的に出てくる。だけど油断はしない。


ウーさんは、今日も跳ねていた。


「ぴょんっと飛んで、ぐさぁっ! ぴょんぐさっ!」


新調した小ぶりの槍を手に、軽やかに跳ねて敵の目や関節を的確に突く。


「あぁ〜、これやこれや〜! この軽さが俺の命やねん!」


笑いながらも、その目は鋭い。小さい身体の分、急所を突く技術は誰より高い。小さな兎が虫の大顎を受け止めて吹き飛ばす瞬間、ちょっと目を疑った。嘘でしょ?


「見たかぁ! 跳ねる脚力は伊達ちゃうんやでぇ!」


一方、ドンダさんはドスンと構えていた。新調した大槍は本人の体の半分以上の長さと太さがあり、もう、まるで木だ。


「んしょっ!!」


その一振りで、蟻が三匹、一気に吹っ飛んだ。技術じゃない、力! を体現している感じだった。


「すごいけど、それ、絶対真似できない……」


横のリックさんが引き気味につぶやく。


サムさんはとにかく鮮やかだった。跳ねるようにステップを刻みながら敵の後ろに一瞬で回り込み、背を取って一閃。


「俺がやる――ドンダ、あとは頼んだ」


虎の模様が踊るように揺れて、気づけば二体目を仕留めていた。


「ふっ、俺、優雅すぎねぇか?」

「……うるさい」


ジャンさんがぼそっと返す。ジャンさんは一歩も引かず、前線の壁だ。二体の虫を同時に相手にしていても、表情は変わらない。


「来いよ。俺は、倒すだけだ」


冷静に、誰より敵の動きを読み、確実に止めていく。


「ジャンの一撃は、無駄がありませんね」

「褒めてるのか?」

「もちろん、褒めてますよ」


ブルーさんはチーム全体を見ていた。一歩下がった位置から仲間をカバーし、気づいたら援護に入っている。


「後ろは私が!」

「サム、左側です」


警戒と支援を同時にこなす姿に、皆が信頼を寄せていた。


そしてリックさん。一番繊細で、一番周りを見ている。虫の位置を瞬時に読み取って、的確に仲間へ指示を出す。


「ウーは、左の敵から」

「ドンダ、前に出すぎない。一歩下がれ」

「バーツは……止められないね」


そして、バーツ。


彼は相変わらず、ど真ん中を貫いていた。ルル剣を肩にかけて魔法陣を発動させると、周囲一メートルが灼熱の炎に包まれる。


「……燃えろ。邪魔だ」


炎を引き連れて突進する姿は、まるで戦場の中心そのものだった。


「ひゃぁ! かっこいい!!」とウーさんが跳ねながら言っていたけど、私も内心では完全に同意していた。


その剣の爆発的な威力に引き寄せられてか、他のオスたちが日に日に興味を示し始めていた。


「俺も、あの棒がほしい」

「どうやってあんな火が出るんだ……」

「魔石って……俺でも使えるのか?」


気づけば、参加希望者がぽつりぽつりと現れはじめた。新しい仲間が増えて、戦いの輪が広がっていく。希望がある戦いが、こんなに嬉しいなんて知らなかった。


 






























 


仲間が、誰一人、欠けることなく帰ってくる。そんな日が、毎日続くなんてな。信じられねぇ。


地獄みてぇな戦場で、俺たちは生きていた。命なんざ、風に舞う埃みてぇに、軽く吹っ飛ぶ。


胴を食いちぎられりゃ、手足が残っていたって意味はねぇ。逆に胴だけ残っても、足を持ってかれりゃ、生きていても地獄だ。


動けなきゃ、食えねぇ。食えなきゃ、借りる。借りが積もりゃ、最後は"重要任務"ってやつに行くしかねぇ。


――重要任務? クソが。笑わせんな。ただの囮だ。餌だ。


動けねぇオスを虫の群れに投げ込んで、食うのに夢中になっているところへ上から魔法を落とす。そういう仕組みだ。


わかってるから、動けなくなったヤツは、自分で自分を終わらせる。生きたまま喰われるより、マシだからな。


だからだ。皆で、無事に、手も、足も、命も、希望も、持って帰ってこれる日が来るなんて、考えたこともなかった。


なあ、俺のツガイ。


おまえは、もう長いこと凍えていたせいで、何も感じなくなっちまっていた俺に温もりをくれた。けどよ。まさか希望までくれるなんてな。


……まったく。

これ以上、どうやって惚れりゃいいんだよ。

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