怪しまれる
気分は進まないが、充と食事をする事になった。
高英と違って、こいつは会話が成立しない訳では無いんだよなぁ……信用できないってだけで。
俊和さんみたいに話してみれば、印象が変わったりするだろうか……?
「光貴ちゃんってお肉好きなのぅ? お肉しか取ってないじゃん」
「そういうお前は野菜しか取ってねぇな」
「うん、僕ベジタリアンなんだよぅ?」
好んで野菜ばかり食うって理解できねぇわ。
今後体力付けて行かないといけない訳だし、とりあえず肉を食って置かなきゃな。
「――――うわっ……アンタそいつと同じタイプだったんだ……」
「あ、琴葉ちゃんやっほぅ。琴葉ちゃんも一緒に食べるぅ?」
「なんだ同じタイプって……」
琴葉が凄く嫌そうな目で充を見ている。
そして同じ目で俺まで見てきやがった、結構傷付いた。
「見た目が女っぽいとは思ってたけど、充ってホモなのか……? 俺にそっちの気は無いぞ」
「僕もそっちの気は無いよぅ? 普通に女の子が好きだけどぅ?」
「普通……?」
琴葉の表情を見るに充が好きなのは普通じゃないらしい。
充を普通だと思った事は全くないが、少し気になるな。
「……こいつ、アバスレ共の誘いを全部断るし、自分から女性に頼む事も無ければ、男同士って訳でも無いから、結構まともな奴なのかなって思ってた時があったの」
「なんで過去形なのぅ? 僕ってかなりまともじゃなぁい?」
「アンタの性癖のどの辺がまともなの……?」
「性癖……?」
「別に変なもんじゃないよぅ? 僕は血まみれの女の子にしか興奮できないだけ」
「……うわっ…………」
リアルサイコパスじゃねぇか……やっぱコイツ信用できねぇわ。
「えぇ、なんでぇ? 生暖かい血に触れてると生きてるって感じしなぁい? 興奮しなぁい?」
「しねぇよ、ドン引きだわ。犯罪者予備軍じゃねぇか……」
「高英は分かってくれるんだどなぁ……じゃあ光貴ちゃんはどういう性癖なのぅ?」
「あいつもかよ……俺はノーマルだよ」
「ノーマル……?」
琴葉が疑わしそうな目で俺を見て来る、変な趣味は持ってねぇよ。
「俺は純粋に巨乳が好きだ」
「……サイテ―……」
「僕は体型や見た目で判断したりしないよぅ?」
「いや、お前は前提条件が終わってんだよ」
血まみれの見た目だけでも十分なのに、血の温かさって、リアルに流してる奴じゃねぇか。
ドン引きだわ。
「琴葉ちゃんの性癖はぁ?」
「それ、セクハラだから」
「好きな男性のタイプはぁ?」
「その質問に答えて私に得が有るの?」
「僕たちは答えたのにぃ、琴葉ちゃんだけ言わないのは不公平じゃなぁい?」
「そっちが勝手に答えたんじゃない……はぁ……――男は嫌い、女はもっと嫌い。だから、タイプなんて無い、見るべきは性格で、判断基準はまともかどうかよ――」
……女子高生とは思えないぐらいに深い回答だった。
どんな環境で、どんな境遇で育てばそんな回答になるのだろうか。
「ふぅん? もしかして琴葉ちゃんも隆司ちゃん推しぃ? 隆司ちゃん大人気だよねぇ、女性にも男性にもぅ」
「隆司さんは比較的まともな人だと思うけど、恋愛感情は無いよ。それにあの人、葵さん一筋でしょ」
「葵ちゃんにしか手を出さず、居なくなった後は誰にも手を出してないからねぇ。選り取り見取りなのに真面目だよねぇ」
葵さんって確か……琴葉が言ってたまともな女性で、出所した人……
「あ、光貴ちゃんは知らないよねぇ。葵ちゃんはねぇ、隆司ちゃんに愛されて幸せ感じ過ぎちゃって出所しちゃったんだよぅ」
……志保さんが言ってた出所する事があった実例って、隆司さんの思い人だったのか。




