第69話 情報の代償 (レイラ視点)
タイトルほど重い話じゃないです。
バカ話しです。
おかしい。
なにこの状況は?
「レイラちゃんおいしいね!」
「そうですね……」
「そっちのミントアイスも美味しそう」
「……食べますか?」
「えっ、いいの!?
やった!
じゃああたしのビーンズとグリーンリーフ味のダブルアイスも一口あげる!」
「いらないし!
ってかそれどんな味よ!?」
あっ、思わずタメ語になっちゃった。
王都にある塾に通ってから言葉遣いも直したのに。
今通う塾は王立学院の一般科に入学するための知識や立ち振舞いを学ぶ場だ。
わたしの家は貴族ではないし、大きなコネもないので入学試験の難易度が一番高くなる。
なので王都に来てから塾だけでなくパパからも文字や計算を教わっている。
いやだから!おかしいのよ!
なんでこの人がしょっちゅう私を遊びに誘うわけ!?
私は今、なぜかカイリの魔法の先生とデザートを食べに来てる。
村にいたころ、この人とは別に仲良くはなかったはず。
というか、どちらかというと私があまり好きじゃない。
この人が村に来たせいでカイリと遊ぶ時間がぐっと減ってしまったのだから。
そう、カイリだ!
「あの、カイリは?」
「ん?カイリなら今日は仕立て屋に行ってるよ」
「なっ!?」
あいつ!
この人と一週間前に会った時にカイリも王都に来てると聞いた。
なんかいろんな人から魔法やら剣やらを教わって毎日忙しいらしい。
相変わらずなところに呆れると共にほっとした所もある。
ただいくら忙しいと言っても時間をみては遊びに来てくれるだろうと思っていた。
でも一向に顔を出さない。
出すのはなぜかこの青い髪を束ねたエルフの女ばかり。
こちらからカイリのことを聞くのはシャクだからずっとなんでもないふりをしていたがさすがにムカついてきた。
それで聞いてみれば買い物とか!
拳を握ると親指の関節がポキッと鳴った。
「あ、そういえばカイリが“明日予定空いてる?”だって」
「それを早く言ってよ!」
もういいや、この人に敬語を使うのも馬鹿らしくなってきた。
「しょ、しょうがないから空けといてあげるって伝えといて!」
すると目の前の女はニヤニヤとしだした。
「そんな言い方だとあの子ちょっとアレだから“忙しいなら大丈夫だよ”とか言って訓練日にしちゃうよ~」
「うっ」
そうだ、カイリはその辺りバカなのだ。
人のことは気付くクセに、そこに自分が絡むととたんに鈍くなる。
「きっちり空けとくんだから絶対来なさいよ!って伝えて!」
その言葉を聞いて目の前の女が再びニヤニヤしだす。
「何文句でもある?」
「ないよー」
「フンッ……ねぇ、」
「?」
「カイリと今一番一緒にいるのって貴女でしょ?
あいつ…、その、好きな女の子いるとか、話したりしてない?」
た、たとえばわたしの名前を出したり……。
「んー、ちょっと言えないなぁ」
「なんでよ!?」
その反応はいるということ!?
「いや、だってあんまりレイラちゃんに協力したらククルちゃんに悪いし」
ククル……聞いたことのない名前だ。
「……誰よそれ?」
「レイラちゃんが引っ越した後にカイリが仲良くなった女の子」
「!?」
うそ?あのカイリがわたし以外に友達が……。
「その子のこと教えて」
「うーん、どうしよっかなぁ~」
イラッ
「貴女はそのククルって娘の肩を持つのね」
「いや、ククルちゃんがいない時にレイラちゃんにだけ協力するのは不公平だと思って。
そうだなぁ……お姉ちゃん」
「?」
「“貴女”でなく“ソフィアお姉ちゃん”って呼んでくれたら口が滑っちゃうかもなぁ。
だってお姉ちゃんは妹に甘いものだし」
「何を言ってるの?」
ふざけてるのだろうか?
「ん?呼び方を変えるだけでレイラちゃんが欲しい情報が手に入るって話しだよ。
カイリって子供らしくないからなぁ。
もしかしたらもう王都で新しい女友達いるかも……」
「くっ…………お……ちゃん」
「なに?きこなーい」
「っ……お姉ちゃん」
「もう一回はっきりと!」
「お姉ちゃん!」
「はい、キター!
お姉ちゃん入りました!
ああレイラちゃん可愛い!
なぁに?どうしたの?
お姉ちゃんに何でも聞いてね!
お姉ちゃんだよー!」
なんだろう……呼称を変えただけなのに大切な何かを穢された気がする。
「……約束よ!
で、どうなの!?」
「ククルちゃんとは別に何でもないよ。
カイリの方はね。
まああんな調子だから女の子は大変だよね」
ほっ
言い方からしてククルとかいう娘の方は気があるかも知れないけど、カイリだからね。
その娘の気持ちがわかる分、少し同情する。
“何でもない”その言葉に安堵していると続けてある言葉にひっかかる。
“ククルちゃんとは”?
「“とは”ってなによ?」
「んー、それは言えないよー。
それにさっきは“お姉ちゃん”だけだったしね。
おまけしたけど本当は“ソフィアお姉ちゃん”って呼んで欲しかったなぁ~」
「くっ」
同い年なら殴ってるのに!
あっ……別に年上でも殴ってもいいかも。
「な、レイラちゃん!?
目、目が怖いよ!
そんなに睨んでどうしたのかな?あはは……」
わたしが一歩踏み出したそのとき、
「じ、じゃあヒントあげちゃおうかなっ。
あーカイリは“ああいう女の子がタイプだったんだぁ”」
ピクッ
その言葉に思わず歩みを止め、目の前の女の顔を見ると焦りから徐々に余裕を取り戻していった。
ウソじゃないっぽい?
「誰?」
「レイラちゃん、あたしにモノを尋ねるときは?」
「くっ」
わたしは屈辱に堪えながらも再びあの言葉を口にした。




