第6話
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「つまり、話をまとめると……」
「アイツの思い通りに動かない駒を私達で用意しとかなきゃいけないって訳よ」
俺は例の部屋に監禁されている間考えていた事を。
赤嶺は、会議中に怪訝に思った事を。
互いに報告し合った。
結論としては。
北野が何かを企んでいるであろう事は察せるが、それが何かはさっぱりわからない。
……と、まぁ、何とも言い難い結論である。
「一条と……あと数人なら、アイツの言いなりにさせないようにはできるけど……青葉は?」
「……んー……」
1つ、いや2つ……心当たりがある。
……ある、が。
「……」
……あまり使いたい手ではない。
「……2つ程、生存者のグループを知ってるが」
俺の発言に、赤嶺が目を細める。
「ふーん……異能者の集団?」
「1つは違う……が、もう1つは異能者のみの集団だ」
……例のショッピングモールの連中、そして、俺のマンションにいる人達……だ。
「……なら、すぐに会いに行かなきゃ」
「ああ、場所は説明するから」
俺はあいにく監禁状態だ。
行動は出来そうにない。
「何言ってんの?青葉が直接案内すりゃ良いじゃん」
は?
……そんな事を、赤嶺が言った時だった。
唐突に、屋上の扉がガチャリと開き、1人の男が現れた。
服の上からわかる程に鍛えられた肉体、それと対照的に爽やかですっきりとした顔立ち。
生徒会長の北野 大地だ。
北野は俺と赤嶺にツカツカと近寄り。
「……どうだったかい?赤嶺さん」
そう、言葉を発した。
「あ、はい。反逆というか何というか……そういう意思は無いようです」
「そうか。ごめんね、こんな役を押し付けて……それに、青葉 茂君、だったかな?」
妙に演劇がかった仕草で俺に話を振る北野。
「……はい、そうです」
「許してくれ……この状況では、和を乱す事は全滅を意味するんだ……心配はいくらしてもし過ぎる事はない」
……おい、こんな話聞いてないぞ、と赤嶺を睨む。
「……いやいや、ごめんごめん……青葉君はそういう事しない人って信じてたから」
……あんな話をした後、よくもまぁそんなぬけぬけと……
呆れて思わず溜息が出かかるが、今はそんな時ではない。
「…まぁ、生徒会長さんの言い分もよくわかるし……しょうがないよ」
「ははは!そう言ってくれると僕も助かるよ………あ、そうだ。赤嶺さんがいなくなっている間に細かい部分が決定されてね……ちょうど青葉君もいるし、この場で学園脱出作戦について説明してもいいかい?」
……学園脱出作戦……ねぇ。
「……私がいない間に、ですか?」
赤嶺の眉がピクリと動く。
あぁ、やばい怒ってる怒ってる。
「あ、そうか……ごめん、ごめん……まぁでも、ちょっとした変更だから、作戦の大筋には関係してこないよ」
……どうも引っかかる。
いくら些細な変更とはいえ、危険の高い前線組筆頭が不在のままやっていい事では無いだろう。
「……まぁ、まぁ……とりあえず作戦を聞いてから、ね?」
……ある程度聞いてはいるが、一応もう1度聞いておこう。
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作戦の大筋はこうだ。
まず、前線組が軍人ゾンビとの交戦に入る。
それを支援する後方火力組……コイツらはフレンドリーファイアを避けるために少数精鋭となっている。
そして重要なのは、門の開閉担当のグループ。
かなりの大人数での脱出だ。
門を開けなければ、関係者用の小さな入り口では限度がある。
最後尾に人知れずゾンビが近付いており、人口密度の高い場所で血みどろの戦い……なんてのは絶対に避けなければならない。
この門の開閉担当は機械の故障を直せる錬金術師の異能者、そして機械を内部から弄る事のできる血の操縦士というレアな異能者。
そして護衛の戦闘系異能者数人である。
この開閉担当は門を開き、全員の脱出を確認した後、それ以上異能ゾンビが外に出ないよう門を再び閉めなければならない。
そして門を閉じた後は関係者用の入り口から脱出する。
絶対に死ぬ事の許されない、責任が重大なグループである。
以上が、北野の語った作戦の大筋。
……プラス俺の考察である。
ちなみに、俺は今、監禁部屋(と言っても既に拘束具は無い)で休憩中である。
そのまま日光浴と洒落込んでも良かったのだが……何せ、その作戦決行が2日後だというのだ。
赤嶺とは後で合流、及び2つの生存者グループの救出の作戦を練っている。
「まぁ、早いなら早いで好都合ではあるが」
それだけ北野が何かを吹き込む時間が無くなるという事だ。
早々に俺達側につかせてしまわなければ。
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俺が熱心にマチェットを研いでいると、ドアがノックされた。
「はい」
「私だけど……入るよ?」
「ああ」
そう言うなり赤嶺が部屋に入ってくる。
「……何それ」
「マチェットだよ、マチェット……銃刀法に引っかからない、サバイバルマニア御用達の品」
「……ふーん」
ちなみに、兵装は何処かの誰かさんに吹き飛ばされて紛失しました。
「で?準備は出来たの?」
俺のその問いかけの返答代わりだろうか。
赤嶺は己の真っ赤な大剣を床にカンカン、と打ち付けた。
「コレがありゃ大丈夫」
……ふ、ふぅー……イケメンですね赤嶺さん……
「……緊急時の食料は?」
「ほら、缶詰」
そう言うと上着の裏のポケットをガラガラと鳴らす。
「……えと、缶を開けるための……」
「いや私、素手で開けれるから」
……そう……
自分の弱さを改めて認識させられ、溜息を吐きつつも立ち上がる。
「じゃあ、行こうか」
「そうね」
……まぁいい。
俺は弱い……だけど。
隣に立つ、心強い仲間を見ながら、俺は強く頷く。
「1人じゃない」
「どうかした?」
やっべ、声に出てたわ。めっちゃ恥ずかしいんだけど。
「……まぁ、私がいれば百人力よ」
俺の言葉の意味を察したのかドヤ顔で胸を張る赤嶺。
「……頼りにしてるわ」
それに苦笑しつつ答える。
……たまには、人に頼るのも良いものだ。
何も、独りで抱え込む必要は無い。
柄にも無く、そんな事を思いながら。
ガチャリと。
俺達は一歩を踏み出した。
あと1話+閑話休題で次の章へと移ります。
……さて、書き溜め増やさねば……




