第5話
予約投稿のし忘れです。
遅れて申し訳ありません。
「……そっか」
なるべく平静を装い返事をする。
だが、俺の内心の動揺や落胆を感じ取ったのだろうか。
赤嶺は何も言わずに出て行った。
「……それにしても」
治癒系の異能だろうか。
身体の傷が完治……とまでは言えずとも、今からでも歩ける程度には回復している。
「……優秀なリーダー、か……あの赤嶺をしてそう言わせるつーのなら、相当だな」
仮初でも、死ぬまでそうだと気が付かなければ、それも一つの幸せだ。
……やはり、あの男が生きているのだろうか。
生徒会長、不死身の北野 大地。
この状況でアンデッドがリーダーというのはなかなかキツい冗談だが……
恐らく、奴なら生き残っているはずだし、リーダーをやれる程の手腕、カリスマ性も持っている。
……だが、俺は知っている。
奴の異能は元々、肉体再生……珍しくもない、弱い部類に入る異能だった事を。
なら何故、どうやって不死身へと至ったのか。
……奴は自分の異能に気が付いた日から。
自分を破壊し続けた。
超回復、という現象を知っているだろうか。
筋肉等を疲弊させ、次に回復する時には少しだけその筋肉が強くなる……簡単に言えばそんな現象だ。
奴はそれを狙い、破壊し続け、肉体再生はソレに比例し少しずつながら、速度が上がっていった。
セルフスプラッタショー、薬漬け……
死ぬギリギリの事を何度も繰り返した。
そしてある日、人間としてあるべきタガが……リミッターが……外れた。
本来は無かった肉体強化、そして史上類を見ない程の肉体再生能力。
奴の異能は既に変質していた。
そう、不死身へと。
「……完全にやべぇ奴だろ……」
これらは、俺の異能の専門研究員だった人が教えてくれた情報だ。
世界から栄養失調をなくすんだ、と意気込んでいたが……
「……役に立てなくて申し訳なかったな」
この場所は、なんの異能も持っていない人間が生き残るには厳しすぎる。
……死んだ、と考えるのが妥当であろう。
……ならば、生前の思いくらいは大切にしてやりたい。
あの人は
「アイツにだけは関わるな、か……」
そう、言っていた。
……だが今の俺には何のアクションも起こせない。
せいぜいが寝るくらいか。
そう判断した俺はゆっくりと瞼を閉じ、睡魔がやってくるのを待った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
結局、俺は一睡も出来なかった。
いや、今の所出来そうにない、といった方が正しいか。
瞼を閉じつつ、俺は、学園の出入口での……対軍人ゾンビ戦について想像を巡らせていた。
……まず、大規模な戦闘となる事は間違いない。
元々いた軍人ゾンビだけではない。
その戦闘音を聞きつけあらゆるゾンビが駆けつける。
あっという間に、死臭にまみれた地獄のような戦場が出来上がる。
……そして、戦闘には勝っても負けても、大量の異能ゾンビが外へなだれ込む事となる。
そもそも、勝てる確率は低い上に、勝てても半数以上は死ぬだろう。
ゾンビは死ぬまで動き、こちらは一噛みでもされようものなら感染確定。
これだけでも分が悪い。
だが、恐らく戦っていればゾンビに四方を囲まれる事は珍しく無いだろう。
大規模戦闘など行ってしまえば、付近どころか学園中のゾンビが集まってもおかしくない。
いくら異能者とはいえそんな状況で落ち着いていられる者は少ないだろう。
そんな絶望的な未来を想像し、暗澹たる気持ちに沈んでいると。
コン、コン、と。
ドアをノックする音。
「……赤嶺さん?」
「はぁ?何言ってんの」
そんな文句と共に誰かが入室してきた。
……
「誰だよ」
「……一条」
……はて。どなたでしょう……
俺が真剣に記憶の海を探索していると。
「……ほら、赤嶺ちゃんといつも一緒にいるでしょ?私」
……あぁ。
……赤嶺の取り巻きの方ですか。
「赤嶺ちゃんは今回の作戦の前線組筆頭だから色々忙しいの。……てか、どう?」
……?
「……どう、とは」
意図が掴めずに困惑している俺に、一条はツカツカと詰め寄り、俺の顔が覗き込める位置にまでやってくる。
「……ふーん、まぁ顔色は大丈夫そう、か」
……そこで俺はようやく。
「超自然治癒の異能……」
読んで字のごとく、自然治癒力を促進させ、骨折等であっても数日で治してしまう異能である。
「そうそう。知ってんじゃん……あんたがそこまで治ってんの、私のお陰だから」
そう言い、俺に対しドヤ顔をする一条。
「まぁ今晩寝れば拘束具は外してもいいかもねー……感染もして無さそうだし」
「……そうか……」
「じゃ、私は私で用事あるんでー」
そう言うと一条は部屋を出て行った。
……再び一人となった部屋で、俺は考え事を再開した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ガチャリ、とドアが開けられる音、そして拘束が緩む感覚で俺は目を覚ました。
「……ん……?」
「あ、おはよう」
「お、おはようございます……」
どうも慣れない姿勢で寝たせいか体の節々が痛く、頭が冴えてくるのも遅い。
ひとしきり目を擦り、伸びをすると。
「じゃ、もっかい拘束するから」
ヒョイ、と抱えられる感覚と、椅子に座らされる感覚。
そして、ガチャリと、手足が再び拘束された。
「……え?」
ようやく目が冴えてきた俺はようやく状況確認を始める。
「……案外、朝は弱い感じなのかな?」
いや年中無休で最弱です。
そんな冗談を言おうと正面を向くと。
赤嶺さんと、目が合った。
「……え?」
本日何度目かもわからぬ戸惑いの声をあげる俺を余所に、椅子がカラカラと動き始める。
「能力の都合上、日光浴びなきゃいけなかったはずだよね?許可下りさせるの大変だったんだよ?」
……いや、ありがたいけどさ………
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
屋上は、よく日光に照らされていた。
「……あ゛あー……生き返る」
やはり俺は日光を浴びなきゃ生きてる気がしない。
「……わざわざ私が、さ……こんな事の許可取ったのはさ」
そこで唐突に赤嶺が話し始める。
てか“こんな事”言うなや。俺にとっちゃかなり重要なんだぞ。
「……話したい事があったんだよね」
話したい事、ね。
「……腹を割って話そうって事?」
「まぁ、そうかな」
……腹を割って、ねぇ……
「……なら、その妙な仮面をつけるのはやめて欲しい、かな」
仮面、というのは、何も本当に仮面をつけているわけではなく。
その偽っているであろう口調や仕草……そして。
「……ふーん、やっぱわかってんだ?……じゃあ、いいよ。本当に腹割って話してあげる」
そんな事を言いながら、挑戦的な顔で俺を覗き込んできた赤嶺さん。
……ああ……さっきの発言取り消してぇ……
…だが、決まったからには、俺も腹を割って話そう。
「……そうだな、どうも互いにリーダーについて不信感があるようだし、な」
俺がそう言うと、赤嶺さんは獰猛に片頬を釣り上げた。
……女子がしていい表情じゃないですよ。
…………というか、腹を割る(物理)とかじゃないよね?




