端末家族
にぎやかな駅前を抜け、久しぶりに実家へ向かう。
いつもなら出迎えてくれる愛犬が、今日は見当たらず、不思議に思い母に尋ねると、一昔前の携帯型の育成ゲームに似た端末を見せてくる。
「今は、これで育ててるの」
話がかみ合わない。
愛犬の話をしているのになぜゲームの話になるのか。
母が説明しながら操作をすると、聞き慣れた愛犬の鳴き声がする。
「この中に移してから、本当に楽になったのよ」
「そろそろご飯の時間ね」
目の前でゲームをするように端末を操作している。
頭が真っ白になる。
子犬の頃から一緒に暮らしてきた愛犬が、この中にいる。
ただ呆然と、端末を見つめていた。
母はさらに、
「とても簡単にお世話できるのよ」
と、トイレの世話やご飯をあげる操作を嬉しそうに説明してくれるが、
頭が追い付かず、言葉を理解することさえ拒んでしまう。
なおも続く説明に耐えられず、逃げるように実家を後にした。
電車に揺られながら、端末の中の愛犬を思い出しては、その度に鳴き声が聞こえる気がした。
自宅に戻り、リビングに妻の姿を見つけると、思わず息が漏れた。
「どうしたの?」
聞き慣れた妻の声に、ようやく体の力が抜けた。
ソファーへ座り込み、そばに寄ってきた猫を撫でる。
そのとき、娘の鳴き声がした。
妻が立ち上がり、娘の部屋へ向かう。
娘の顔も見たくなり、妻の後を追い、
部屋をのぞくと、妻は端末を操作していた。




