第5話:廃村での戦闘と出会い
小走りで森を抜け、火柱が上がっていた付近に近づいた。
木が焼けたような焦げ臭さや、熱した鉄のサビ臭さ。
...そして、人が燃えた時の脂っぽい異臭。
遠くからでもわかる程の火柱だったのに、周囲の火の気は落ち着いている。
先ほどの火柱はやはり魔法だったのだろう。
魔法による炎は、発動に使った魔素を消費したら消失する特性を持っている。
酸素で燃え広がる事はなく、空気中の魔素で強化されることはない。
だが、強力な術者が行使すると瞬間的な火力を出すことが可能だ。
あれだけの火柱、相応の実力者がここに居たってことか。
ここは村だったんだろう。
おそらく家だった瓦礫の山がそこら中にあるし、よく見たら荒れた畑もある。
村全体は燃やさず、滅ぼした住民たちだけ燃やしたってところか。
生活感を感じられる残骸、滅ぼされたのは火柱のタイミングで間違いない。
...何より、少し離れた瓦礫の山に犯人らしき人影が腰を掛けている。
視線を感じるし、相手にも気づかれていそうだ。
相手の実力が読めない以上、下手に逃げるのも危険だな。
まあ、冒険者として村を滅亡させるような脅威を放置する訳にもいかない。
背負っている鞄を降ろし、長剣の柄を左手で握りながら歩き出す。
どこから相手のテリトリーかわからない恐怖、苦手だ。
相手の姿がはっきりわかる所まで近づくが、今のところ殺気は感じない。
面長な顔に少し大きめの耳。
毛量は少なく、鋭い目つきが良く見える。
見たことのない灰色の衣服を纏っており、筋肉質な身体が見え隠れしている。
座っているので正確にはわからないが、身長は自分より高そうだ。
最大の特徴、それは緑色の肌と頭部から生えている二本の角だろう。
人族ではなさそうだが、こいつは魔族なんだろうか。
俺が以前遭遇した魔族はもっと化物らしい見た目をしていた。
間合いに入ったところで、コミュニケーションを試みる。
「よう、こんなところで何しているんだ。」
「別に、暇を潰していただけだ。お前は何者だ?」
「冒険者ウィルギスだ。あんたは?」
「俺はゴリッシュ。アバーラから来た。」
アバーラ、俺が目的地としている魔族の国の名前だ。
グランダ公国と隣接しており、境界では小競り合いが多発しているとか。
魔族の国から帰還した人族、って線はないだろうな。
「アバーラか。一応確認だが、あんた魔族であってるか?」
「そうだ。魔族に会うのは初めてか?」
「いや、数年前に戦ったことがあるよ。あんたと違って魔物に近い見た目をしていたがな。」
「なるほどな。"型落ち"には勝てる程度の強さか、楽しみだな。」
こいつは厄介だ。
敵対関係にもかかわらず殺気は見せないが、戦う気配は一切隠さない。
おそらく戦闘そのものを楽しむタイプで、実力も伴っている。
...命乞いはするだけ無駄だな。
ゴリッシュは立ち上がり、首を曲げて音を鳴らした。
瓦礫の山から飛び降り、ゆっくりと歩き出す。
「一応の確認だが、この村の惨状はお前の仕業か?」
「ああ、道中にあったからついでに滅ぼしておいた。」
「道中?...お前、ラース・センテに攻め入りでもするつもりか?」
「当然だろう?人族は殲滅するべき存在だからな。」
「ははっ、やっぱり魔族は魔族か。悪いが俺で満足してくれ。」
「だったら楽しませろ、人族よ。」
ゴリッシュは足を肩幅に開き、右足を半歩引いて両拳を構えた。
先ほどまで抑えていた殺気が漏れ出している。
こちらも長剣を抜き、両手で柄を握って構える。
お互いの間合いまであと少しの距離、緊張感が走る。
対人戦では"先に動く方が格下"だと教わった。
間合いの読み合いに耐えきれない、功を急ぐ愚か者だと。
初めての相手と戦う際はこの教えをずっと守っていた。
俺の能力じゃ初手で仕留めきるのは難しく、カウンターへの対抗手段もあまりない。
だが、俺はこの教えを破ることにした。
目の前で空気が渦を巻きながら魔族の左腕に集まっているからだ。
正確には可視化されるほど密度が濃くなった空気中の魔素、と言ったところか。
あれが一気に放出される事は考えたくない、下手したら周囲が吹き飛ぶぞ。
魔法を阻止するためにゴリッシュの方に走る。
発動条件は知らないが、切り傷で魔素巡回を乱す方法を試してみよう。
剣の射程範囲まで近づいた所で、剣を右手に握り替えた。
右腕を水平に大きく開き、薙ぎ払うようにゴリッシュの左腕を斬りつける。
走行の勢いと遠心力による火力の高い一撃。
...と見せかけ、腕を振り切る直前で左足に力を込める。
膝のクッションを利用して逆方向に回転し、そのまま水平にゴリッシュの右腕を斬りつけた。
カウンターの為に蹴り上げたゴリッシュの左足が空を蹴り、代わりに右腕を刃が捉える。
そのまま振り切ろうとするが、深く食い込む前にゴリッシュが飛び下がり、剣は空を斬った。
不意打ちに成功したが傷は浅い、深手を負わせたかったが、想定より身体能力が高いな。
ゴリッシュは再び構え、左手を開いてこちらに向ける。
拳を握って力んだ後、再び素早く開いた。
次の瞬間、左手が光ったのを見て咄嗟に左側に飛び込んだ。
先ほどまで立っていた場所を火柱が焼き尽くし、遅れて熱を感じた。
あれがあいつの魔法、魔素を蓄積して炎として放出ってとこか。
蓄えたら一括放出なんだろうか、分割できるとなると勝ち目が薄いな。
攻撃チャンスは魔素の蓄積中だけだろう。
カウンターもあるから簡単ではないが、勝ち筋はあそこだな。
ゴリッシュは再びこちらに左手を向け、拳を握る。
まじか、分割可能なタイプかよ!
魔法攻撃に警戒し、重心を落として回避の準備をする。
だが、この構えはブラフでゴリッシュは腕を降ろして距離を詰めてきた。
両拳を握ったまま腕を大きく開き、頭を潰すように中心に腕を閉じる。
左右に逃げ場はなく、重心を落としているので後ろにも行けない。
回避ではなく弾くことに専念することにした。
タイミングを見計らい、頭のすぐ横にゴリッシュの腕が来たタイミングで両腕を上げる。
ゴリッシュの腕を下から叩くことで攻撃を防ぎつつ相手のバランスを崩す。
相手がよろけたのを見逃さず、右斜めに剣を振りかぶり、左手を添えて両腕で斬り下ろした。
ゴリッシュの胴体から血が噴出する。
傷は決して浅くはないが致命傷には程遠い、ここで仕留めたい。
剣の柄を強く握り、突き刺すために身体を左に少し捻じった。
が、ゴリッシュはそんな俺に背を向けて走り出した。
なんだ?傷が深いから諦めて逃げた?
...違うな、そんな甘い相手ではない。
あっ!魔法行使のための距離を稼いでやがるな!
剣を右手で握り、急いで追いかけた。
あいつの魔法は止まって魔素の蓄積をしないと使えないと思われる。
そのかわり、魔素の蓄積量には上限がなく、蓄積するほど強くなるのだろう。
距離をとって小規模魔法を連発されたら分が悪い。
一回でもくらって隙ができたら最後、大規模蓄積による攻撃で詰みだな。
ダメージ影響もあるはずなのに、残念ながら走力は相手の方が上だ。
大きく離されることはないが、ジリジリと差が開いていく。
流石は魔族、血を流していても基礎身体能力では敵わないな。
...仕方ない、俺も奥の手を使うとするか。
俺は魔法の行使は不可能だが、魔素をコントロールすることは可能だ。
体内を巡る魔素を特定の部位に集中させ、活動エネルギーとして一気に消費させる。
効率のいい瞬間的なエネルギー消費による"爆発的な運動能力の向上"が最大の特徴だ。
しかし、肉体の酷使による体への負担は非常に大きく、使いどころが重要となる。
このような魔法を使えない者による魔素の活用は、スキルと総称される。
走る速度を若干落とし、体内の魔素を腰から下に集中させる。
そして下半身の主要な筋肉で魔素を一気に消費させ、瞬間的な加速を生み出した。
"瞬間加速"
ゴリッシュを追い越してしょうめんを抜け、火柱が上がっていた付近に近づいた。
木が焼けたような焦げ臭さや、熱した鉄のサビ臭さ。
...そして、人が燃えた時の脂っぽい異臭。
遠くからでもわかる程の火柱だったのに、周囲の火の気は落ち着いている。
先ほどの火柱はやはり魔法だったのだろう。
魔法による炎は、発動に使った魔素を消費したら消失する特性を持っている。
酸素で燃え広がる事はなく、空気中の魔素で強化されることはない。
だが、強力な術者が行使すると瞬間的な火力を出すことが可能だ。
あれだけの火柱、相応の実力者がここに居たってことか。
ここは村だったんだろう。
おそらく家だったものの瓦礫の山がそこら中にあるし、よく見たら荒れた畑もある。
村全体は燃やさず、滅ぼした住民たちだけ燃やしたってところか。
生活感を感じられる残骸、滅ぼされたのは火柱のタイミングで間違いない。
...何より、少し離れた瓦礫の山に犯人らしき人影が腰を掛けている。
視線を感じるし、相手にも気づかれていそうだ。
相手の実力が読めない以上、下手に逃げるのも危険だな。
まあ、冒険者として村を滅亡させるような脅威を放置する訳にもいかない。
背負っている鞄を降ろし、長剣の柄を左手で握りながら歩き出す。
どこから相手のテリトリーかわからない恐怖、苦手だ。
相手の姿がはっきりわかる所まで近づくが、今のところ殺気は感じない。
面長な顔に少し大きめの耳。
毛量は少なく、鋭い目つきが良く見える。
見たことのない灰色の衣服を纏っており、筋肉質な身体が見え隠れしている。
座っているので正確にはわからないが、身長は自分より高そうだ。
最大の特徴、それは緑色の肌と頭部から生えている二本の角だろう。
人族ではなさそうだが、こいつは魔族なんだろうか。
俺が以前遭遇した魔族はもっと化物らしい見た目をしていた。
間合いに入ったところで、コミュニケーションを試みる。
「よう、こんなところで何しているんだ。」
「別に、暇を潰していただけだ。お前は何者だ?」
「冒険者ウィルギスだ。あんたは?」
「俺はゴリッシュ。アバーラから来た。」
アバーラ、俺が目的地としている魔族の国の名前だ。
グランダ公国と隣接しており、境界では小競り合いが多発しているとか。
魔族の国から帰還した人族、って線はないだろうな。
「アバーラか。一応確認だが、あんた魔族であってるか?」
「そうだ。魔族に会うのは初めてか?」
「いや、数年前に戦ったことがあるよ。あんたと違って魔物に近い見た目をしていたがな。」
「なるほどな。"型落ち"には勝てる程度の強さか、楽しみだな。」
こいつは厄介だ。
敵対関係にもかかわらず殺気は見せないが、戦う気配は一切隠さない。
おそらく戦闘そのものを楽しむタイプで、実力も伴っている。
...命乞いはするだけ無駄だな。
ゴリッシュは立ち上がり、首を曲げて音を鳴らした。
瓦礫の山から飛び降り、ゆっくりと歩き出す。
「一応の確認だが、この村の惨状はお前の仕業か?」
「ああ、道中にあったからついでに滅ぼしておいた。」
「道中?...お前、ラース・センテに攻め入りでもするつもりか?」
「当然だろう?人族は殲滅するべき存在だからな。」
「ははっ、やっぱり魔族は魔族か。悪いが俺で満足してくれ。」
「だったら楽しませろ、人族よ。」
ゴリッシュは足を肩幅に開き、右足を半歩引いて両拳を構えた。
先ほどまで抑えていた殺気が漏れ出している。
こちらも長剣を抜き、両手で柄を握って構える。
お互いの間合いまであと少しの距離、緊張感が走る。
対人戦では"先に動く方が格下"だと教わった。
間合いの読み合いに耐えきれない、功を急ぐ愚か者だと。
初めての相手と戦う際はこの教えをずっと守っていた。
俺の能力じゃ初手で仕留めきるのは難しく、カウンターへの対抗手段もあまりない。
だが、俺はこの教えを破ることにした。
目の前で空気が渦を巻きながら魔族の左腕に集まっているからだ。
正確には可視化されるほど密度が濃くなった空気中の魔素、と言ったところか。
あれが一気に放出される事は考えたくない、下手したら周囲が吹き飛ぶぞ。
魔法を阻止するためにゴリッシュの方に走る。
発動条件は知らないが、切り傷で魔素巡回を乱す方法を試してみよう。
剣の射程範囲まで近づいた所で、剣を右手に握り替えた。
右腕を水平に大きく開き、薙ぎ払うようにゴリッシュの左腕を斬りつける。
走行の勢いと遠心力による火力の高い一撃。
...と見せかけ、腕を振り切る直前で左足に力を込める。
膝のクッションを利用して逆方向に回転し、そのまま水平にゴリッシュの右腕を斬りつけた。
カウンターの為に蹴り上げたゴリッシュの左足が空を蹴り、代わりに右腕を刃が捉える。
そのまま振り切ろうとするが、深く食い込む前にゴリッシュが飛び下がり、剣は空を斬った。
不意打ちに成功したが傷は浅い、深手を負わせたかったが、想定より身体能力が高いな。
ゴリッシュは再び構え、左手を開いてこちらに向ける。
拳を握って力んだ後、再び素早く開いた。
次の瞬間、左手が光ったのを見て咄嗟に左側に飛び込んだ。
先ほどまで立っていた場所を火柱が焼き尽くし、遅れて熱を感じた。
あれがあいつの魔法、魔素を蓄積して炎として放出ってとこか。
蓄えたら一括放出なんだろうか、分割できるとなると勝ち目が薄いな。
攻撃チャンスは魔素の蓄積中だけだろう。
カウンターもあるから簡単ではないが、勝ち筋はあそこだな。
ゴリッシュは再びこちらに左手を向け、拳を握る。
まじか、分割可能なタイプかよ!
魔法攻撃に警戒し、重心を落として回避の準備をする。
だが、この構えはブラフでゴリッシュは腕を降ろして距離を詰めてきた。
両拳を握ったまま腕を大きく開き、頭を潰すように中心に腕を閉じる。
左右に逃げ場はなく、重心を落としているので後ろにも行けない。
回避ではなく弾くことに専念することにした。
タイミングを見計らい、頭のすぐ横にゴリッシュの腕が来たタイミングで両腕を上げる。
ゴリッシュの腕を下から叩くことで攻撃を防ぎつつ相手のバランスを崩す。
相手がよろけたのを見逃さず、右斜めに剣を振りかぶり、左手を添えて両腕で斬り下ろした。
ゴリッシュの胴体から血が噴出する。
傷は決して浅くはないが致命傷には至らない、このまま追撃で仕留めきりたい。
剣の柄を強く握り、突き刺すために身体を左に少し捻じった。
が、ゴリッシュはそんな俺に背を向けて走り出した。
なんだ?傷が深いから諦めて逃げた?
...違うな、そんな甘い相手ではない。
あっ!魔法行使のための距離を稼いでやがるな!
剣を右手で握り、急いで追いかけた。
あいつの魔法は止まって魔素の蓄積をしないと使えないと思われる。
そのかわり、魔素の蓄積量には上限がなく、蓄積するほど強くなるのだろう。
距離をとって小規模魔法を連発されたら分が悪い。
一回でもくらって隙ができたら最後、大規模蓄積による攻撃で詰みだな。
ダメージ影響もあるはずなのに、残念ながら走力は相手の方が上だ。
大きく離されることはないが、ジリジリと差が開いていく。
流石は魔族、血を流していても基礎身体能力では敵わないな。
...仕方ない、俺も奥の手を使うとするか。
俺は魔法の行使は不可能だが、魔素をコントロールすることは可能だ。
体内を巡る魔素を特定の部位に集中させ、活動エネルギーとして一気に消費させる。
効率のいい瞬間的なエネルギー消費による"爆発的な運動能力の向上"が最大の特徴だ。
しかし、肉体の酷使による体への負担は非常に大きく、使いどころが重要となる。
このような魔法を使えない者による魔素の活用は、スキルと総称される。
走る速度を若干落とし、体内の魔素を腰から下に集中させる。
そして下半身の主要な筋肉で魔素を一気に消費させ、瞬間的な加速を生み出した。
"瞬間加速"
ゴリッシュを追い越し、体を反転させ剣を突きだした。
急な加速に対応できなかったのか、ゴリッシュはそのまま剣に突っ込んだ。
ゴリッシュの腹を剣が貫く、そのまま腹を掻っ切るために剣を下に強く引いた。
しかしこの動きは読まれており、腹筋で剣が固定されピクリとも動かない。
純粋な筋力か、相手もスキルを使ったのだろうか。
近距離で魔法を発動されても困るので、ゴリッシュの腹を足裏で強く蹴り飛ばす。
ゴリッシュは後ろに飛び転がり、剣は傷口を広げることなく腹から抜けた。
ゴリッシュはうめき声をあげながら這いつくばっている。
動きを止めるのに十分なダメージは与えられたようだ、あと少しだな。
止めを刺すために歩き出すが、スキルによる肉体の酷使で激痛が走り一瞬足を止めてしまった。
その時、近くの瓦礫の山が崩れ、中から女性が這い出てきた。
生き残り!?いや、今はタイミングが悪い!
最悪の想定通り、ゴリッシュは這いつくばりながら女性に左手を向けた。
魔素を集中させ魔法の放出準備をしている。
少しでも人族を殺しておきたいのだろうが、おかげで隙だらけだ。
だが、ここで止めを優先したら女性の救出は間に合わないだろう。
女性の救出、ゴリッシュへの止め、どちらを優先させる?。
この距離だとそもそも救出は間に合わない可能性が高そうだ。
だが、止めを優先させれば確実な勝利を勝ち取ることができる。
...ああっ!くそがっ!
心を冷たく閉ざそうとした時、女性と目が合った。
額と肩から出血し、目には涙を浮かべている。
声は届いていない。だけど、口の動きはわかる。
"た す け て"
合理性を追い求めた全ての思考を捨てた。
助けを求めている人を切り捨てて手にいれる勝利に何の価値がある?
俺は冒険者だ、命をかけて他人を助ける仕事だろうが!
魔素を再び下半身に集中させ、瞬間加速を発動する。
走りながらゴリッシュの左手が光るのを横目で見た。
女性の所に駆け付け、腕を掴んで引っ張り、抱きかかえながら前方に大きく飛んだ。
後方を火柱が通過する、ギリギリ間に合った。
すぐに起き上がり、ゴリッシュの方に向かう。
...が、全身を激痛が駆け抜け、足に力が入らず膝から崩れ落ちてしまった。
スキルを連続で使用したのは初めてだ、こんなに負荷がかかるとは。
ゴリッシュは最後の力を使ったのか、地面にうつ伏せたまま動かない。
肩がかすかに上下しているからまだ息はあるようだ、止めを刺さないと。
剣を支えにしながらなんとかゴリッシュの所まで近づく。
痛みに耐えながら剣を両手で構え、ゴリッシュの首を切り落とした。
念のため腕と足を切り落とし、心臓にも剣を突き刺しておく。
勝利の余韻を味わう前に、女性の所に向かった。
「大丈夫か...?とりあえず木陰で傷を見よう。」
「あ、ありがとう...ございます...。」
震える女性を連れて木陰に向かい、横に寝かせる。
薬や包帯を使うために鞄を取りに向かった。
激痛を超えて全身が燃えるように熱い、気を抜いたら意識が飛びそうだ。
なんとか意識を保ったまま鞄を取ってこれたので、女性の治療を始める。
傷口を水で洗い、薬を塗って包帯を巻いた。
切り傷はどれも浅く、骨折はなさそうだ。
家の中で襲撃に合ったのだろう、直接攻撃は受けずに済んだようだ。
女性の手当てが終わった後、急に全身に力が入らなくなり仰向けに倒れた。
足先から頭にかけて白く染まっていくような、意識が遠のく感覚に襲われた。
あー、次があるならスキルの連続行使はやめた方が良さそうだな。
女性が何か言っているような気がするが、耳も聞こえなくなっているみたいだな。
そのまま目を閉じる、思考が途絶え目の前が一気に黒く染まった。




