13 恋と逆襲のためのSP<カルメン>
「私来年はブラームスの協奏曲を使おうと思うの」
昼休み、突然悠佳がそんなことを言い出した。
「ブラームス? 好きなのか?」
「べ、別に好きじゃないんだからねっ!」
「いや、それ俺のネタ」
俺らのなかで、ツンデレごっこが何気なく流行っている。
「私が、弟くん大好きだってことを世界の皆に分からせてあげようと思って」
何気自慢げに言う悠佳(何故)。
俺が理事ならこんな奴を特別強化選手にはしない!
「まったく。意味が分から……っ! まさか! 」
「ブラームスの協奏曲<コンチェルト>」
「略してブラコン!」
ブラームスに失礼過ぎる。
いや、まさか……。
ブラームスは、百五十年以上も前からブラコンが萌え属性であることを悟っていたのか!
恐るべしっ。
ちなみに音楽で〝ブラコン〟と言った場合、ブラームスのヴァイオリン協奏曲(たまにピアノ協奏曲)を指す。
「この会話をブラームスが聞いていたら、きっと悲しむな」
「〝聞く〟ではなく、〝読む〟では?」
悠佳の冷静なツッコミは、直死の魔眼を持っているとしか思えないほどの威力を発揮した。
ただでさえ危ない世界観に止めを刺すな。
「メタ的発言は止めろ!」
「なに、アニメ化かドラマCD化の予定があるのかな?」
もちろんそんなもの無い。
「って言うか、お前。マジでブラコンだよな」
「真琴くんだって、ブラコンじゃない」
言っておくがそんなことは無い。
「そもそも弟が居ない」
「趣味。ブラコン──ブラジャー・コンプリート」
「ブラジャーを集める趣味は無い!」
「週間、ブラジャー・コンプリート、創刊」
「初回号は300円!」
「the顎酢茶煮♪」
きっちり♪<おんぷ>まで発音する悠佳。
ちなみに、本当であれば、〝the〟の後の〝顎〟は〝ago〟なので、本来〝ジ〟と発音するが、今回は特例として〝ディ〟と発音して欲しい。
「定価は1000円」
「初回号は愛湖原智花のDカップブラジャー」
「俺が買わなければっ! 他の男には渡せんっ」
気が付けば、俺は変態キャラになっていた。
いや、断言する。
「男なら、階段を昇る女子の太ももが気になってしかるべきだ。男というのはそう言う者なのだ」
「うわ……怖っ。男怖っ」
「怖がるのは怪談だけにしてくれよ」
そんな風に、いつものような生産性の無い会話を続けていると、俺はふと、あることに気が付いた。
「……おい。お前顔赤いけど、どうしたんだ?」
「え?」
真剣な顔で聞いたからか、吾紅夜は一瞬たじろぐ。
けれど、すぐ笑い顔に戻った。
「うん……。弟くんのこと考えてたら……身体が熱くなってきた」
「この娘<こ>変態っ!」
と、その場は、そんな感じで会話を終えた。
……のだが。




