幕間:本能という愛好(後)
お茶会の後にはアーネス君達と別れ、濃ちゃんたちとお城を一通り見学。
豪華なシャンデリアや荘厳な内装を堪能していたらすっかり日が高く登って、帰途についたのは正午前になってしまった。
「アーリアちゃん達のことが気になるんすか?」
薄ちゃんが不思議そうに私の顔を覗き込む。
お城の見学でテンションを上げてなんとか気を紛らわせてたから、隠し通せると思っていたのに。
もう、薄ちゃんは私がプチ落ち込みしているのにすぐ気づくんだから。
そうです。
私はアーリアちゃん達の話を聞いて、とあることが気になって、テンションがダダ下がりしています。
「薄ちゃん、アーリアちゃんと仲良くしてあげてね。二人には・・・ここでも幸せになってほしいんだ」
私は“心の底でつっかえていること”がばれないように、アーリアちゃんの境遇を不憫に思っている振りをしておいた。
「みょんみょん様が気になるってことなら、俺っちも頑張るんすけど」
薄ちゃんの返事は歯切れが悪い。
薄ちゃんとしては私が落ち込んでいるのが腑に落ちないんだろう。
・・・正解なんですけども。
「他の子・・・例えばななんちゃんは・・・あの二人のこと、何か言ってた?」
「ななんっすか・・・?ななんは・・・2匹のINT(知力)を褒めてたっすね・・・?」
「お前っ、ななんのあれは皮肉だからな?」
薄ちゃんの言葉に濃ちゃんは思わず吹き出す。
ただ、私にあまり言いたくはなかったらしい。私の視線に対して濃ちゃんは少し気まずそうに声をおとした。
「えっとですね、ななんはその・・・あの猿たちを“餌に感謝し祈りをささげる賢い家畜”やら“首輪を勲章と称える高尚な知能”などと評してました」
「ななんちゃんらしいね」
私は安心して微笑む。
ななんちゃんも言及しなかったのであれば、みんなにとって私の懸念はどうでもいいことなののだろう。
「暑いし早くホームに帰ろ」
私は歩みを速めた。
ずっとふんわりと感じていた不安が、私の意識からこびりついて離れない。
それは、“NPC達は本当に幸せなのか”、そういう話。
ポンゴさんは家畜としての鎖を勲章と教えられ、それを誇りとしていた。
NPC達は眷属として主に絶対服従する運命の元に生まれ、それを誇りとしている。
その生き方に、根本的な違いはあるのだろうか。
でも、そんなこと彼らに問えるわけがない。
彼らが生まれからして不幸だと言っているようなものだ。
「もう騙されないんすから、フレスベルグが死んでアーリアちゃんは幸せだと思うんす」
私が難しい顔をして歩いているせいで、みんな私を心配している。
薄ちゃんなんかは、泣き出しそうな顔をしている。
「そうね。みんな幸せ、私はそういうのがいいの。ありがとね、薄ちゃん」
「俺は今、幸せです」
すかさず濃ちゃんがかぶせてくる。
私が欲しい言葉をすぐにくれるとこ、濃ちゃんは本当に頼りになる男だよね。
「ありがと、濃ちゃん」
「みょんみょん様は・・・考えなくていいことを、考えてしまっただけです」
濃ちゃんは、ポンゴさん達にまで心を砕くなって言いたいんだろうけど。
でも本当に、本当に、きっと私は考えなくていいことを考えているだけなんだろう。
ポンゴさん達はフレスベルグさんの言葉を疑わないことで、ずっと幸せだった。
私のNPC達は、生まれ持った本能から、私に仕えることでずっと幸せなんだ。
それは私が、おいしい紅茶を飲んで幸せだと感じるのと、きっと同じ。
「みょんみょん様、今日の昼ご飯もちろの最高傑作らしいっすよ?なんとっふたひとが苦労して取って来た木の実がついに使われるらしいっす!」
「ふたひとのしたり顔見ながら昼飯か~・・・肉がまずくなりそうだな」
「兄貴は草ばっかり入った偽物肉ばっかり食ってるからっすwww」
濃ちゃんと薄ちゃんの楽しそうな会話。
私は・・・彼らの確かな幸せを無用に疑ってしまっているだけ。
そう、どことなく感じるこの孤独も・・・きっとありもしないまがいものなんだ。
ということで、次回5章、完結編です。5章でみょんみょんは彼らの真の主になることが出来るのか。みょんみょんの成長を期待してください~。今回はちょっと柄にもないシリアス進行でしたが、5章も今まで通りみょんみょんは基本ネアカでお気楽です!春ごろには・・・春ごろにはっ!




