1-3. 急襲(6)
壁は魔法で粉砕して進むので、ほどなくして“目的地”に着いた。
外にいるLv2~3程度の働きバチよりは多少強い蜂エネミーに遭遇したが、Lv10を超えるような蜂はおらず、結果として主は無傷だ。
しかし、無残な姿となったBとDを見て、主は嘆き泣き崩れている。
カラスはどうすればいいかわからなかった。
深く悲しむ主になんと声をかければよいかわからないというわけではなく、主の悲しみ自体理解できなかった。
カラスに限らず多くの眷属の認識として、眷属は使い捨ての道具であったし、ましてや戦力にもならないLv1のフットマンが何人死のうが、また新しく眷属を産めばいいだけだ。
とはいえカラス自身が眷属を産めるわけではないので、簡単に言うわけにもいかないが。
カラスにはなにも出来そうにないので、代わりに周りの偵察を行う。
ほどなくして『女王は押さえた、攻撃もやめるよう眷属に命令させた』というろくろからの伝達<コール>があった。
カラスが主の方を見ると、よんよんと主が会話をしているようだった。
よんよんの言葉に主は涙をぬぐって立ち上がる。
「カラスちゃんも迷惑かけてごめんね・・・帰ろっか」
主の言葉にカラスは首を縦に振る。
主の腕には大事そうに2つの蜘蛛の死体が抱かれていた。
「確保した敵の女王はいかがいたしましょうか」
カラスのその言葉に、主はうつむき顔をゆがませた。
「薄ちゃんに・・・楽しんでって伝えて」
絞り出すように、主は言う。
その表情からは、残酷なことは本来好まない人柄がうかがえた。
薄墨が弱者をなぶり殺すのが好きだというのはカラスもよく知っている。
「出来るだけ・・・すぐには殺さないで」
カラスは、その言葉をそのまま、伝達<コール>で薄墨に伝えた。




