出会い
少し重ためですが、読んで下さると幸いです。
再び目を覚ますと、ヘルはベッドの上にいた。
胃の中ではないことから、これまでの悲惨なこと全てが長い悪夢かと思われたが、見たところ寝かされていた部屋に一切見覚えは無く、まだ断定できない。
夢か現実か判別できずに困惑していると、看病してくれたであろう少年が、彼女の目覚めに気付いた。
「あ、目が覚めたんですね。よかった」
「ここは……?」
「ここは煉獄の辺境、三途の川のほとりにある僕の家です」
「そう……ありがとう。えっと……」
「羅王です。話は伺っています。元女神のヘルさん、ですよね?」
自分を看てくれた親切な魔族の少年の口から、自分の名が出たことにヘルは驚いた。
「どうして私のことを?」
ヘルの質問に、羅王はすぐ答えようとしたが、それより先に部屋の扉が開き、ガタイのいい1人の男が入ってきた。
「俺様が話したんだ。助けてやったついでにな」
そう答えた男の出で立ちを見たヘルは、ロキから聞かされた特徴から、この男がアバドンだとすぐにわかった。
そのことを言われるとアバドンは肯定し、今は自分が大魔神だということや、ヘルのことを一部始終見ていたと語った。その態度は常に上からで、傲岸不遜とは彼のためにあるような言葉だと、ヘルは、内心思った。
「ま、俺様に感謝することだ。俺様が偶然あそこを通りかかり、お前に好奇心を抱いてなきゃ、今頃あの蛇のエサになってただろうからな」
そう言われてヘルは礼を述べたが、全てが現実だとはっきりと理解したことで、ヨルムンガンドのことが頭に浮かび、アバドンに兄がどうなったか尋ねた。
アバドンは最初、なんのことだかわからなかったが、彼女と蛇が兄弟だと知ると納得した。
「そいつは悪いことしたな」
「まさか……」
「安心しな。死んじゃあいねぇよ。蛇の割にはなかなか骨がある奴だったから、数発殴って地平線の彼方まで飛ばしてやっただけだ。もっとも、重傷は確実だろうけどな」
アバドンの言葉を聞いて、ヨルムンガンドの身を案じたヘルは、居ても立ってもいられず、彼を救いに行こうとしたが、壊死した足が動くわけがなく、ベッドから転げ落ちた。
「無茶ですよ! そんな足じゃ」
「うっ……どうして?」
「魔界に突入した時の後遺症だろうな。一応毒抜きついでに医者に診てもらったが、そこだけは一生治らねぇんだとよ」
アバドンの口から宣告された内容にヘルは落胆し、同時に己の選択に後悔した。
天使や神の目をエンジェルアイ、魔族の目はデビルアイといいます。




