短話「ロイド・ブレイズ」
ロイド・ブレイズという人間がいる。
彼は金髪で金瞳。
金髪で金の瞳は魔法の才に優れているという何よりもその証だ。
そしてここ、ケイアン王国において金髪金瞳は王族の血縁者であるということであり、子供の頃からエリート街道まっしぐらが決まったようなものだ。
誰もが特別と認め、誰もが自分と同列視することすらなく、ただ羨望の目を向ける。
国内でも最もエリートとされるトウハ学園で最強と称される男となって、史上最年少で光神隊に所属するようになってもそれはある種当然で、当たり前のこと。
ロイドはそれに関して特に何かを思うわけでもないが、なにも努力をせずに今にいたったわけではない。むしろ彼ほどの努力家は他に類を見ないほどだろう。
豊富な才能と決して折れない強い意志。そして、何よりも過去に一度として自分への妥協、甘えを許さなかった自負。
それを誇りとしてきた彼だが、最近はそんな自分へと疑問を持つようになっていた。
友人はいるがライバルと呼べるような人間はいない。今やロイドが勝てないと思うような人間は光神隊のトップクラス数人ほどだ。
そのトップの彼らも魔法を使えば全く勝てないというほどのレベルではない。
このまま毎日のように努力を続けて、それでケイアン王国最強の兵士になったとして、一体どうなるのか。
それを思った時からロイドはフと考えるようになる。
――僕はいったいなにがしたいのだろうか。
そんな疑念が頭から離れなくなったのだ。
日々の鍛錬に学園生活。それだけでなく幼馴染のシルクの護衛という任務。時折現れる国にとって有害で、かつ強力な魔物の討伐任務。
毎日がロイドにとって甘いといえるものではなかったが、それでもいつしか日々が単なる習慣ように感じられるようになってしまっていた。
習慣だから鍛錬を欠かさない。習慣だからシルクを守る。そんな、良くも悪くも張り合いのない日々。
強くなるための鍛錬から、弱くならないための慣習となってしまった毎日を送っていることを自覚する日々。
完全に天井にぶち当たってしまったロイドは、それでも悔しいと思うことすらなかった。
――ああ、僕はこれ以上強くなれないのかもしれない。
その日々はロイドにそう思わせるほどにつまらなく、またどうしようもないものだった。
が。
そんな日々が、ある日から一変する。それは惰性の日々に終わりを迎える、王の言葉。
「これから特別任務を言い渡す。メンバーはシルクとライという四神隊に属する黒髪の人間だ」
「は?」
この時のロイドの間抜け顔は、王曰く笑いを堪えるのに大変だったと言わしめるほどだ。
とにかく同じ年齢の人間に、しかも都市伝説といわれていた四神隊の存在を知ったロイドの衝撃はそれはもう凄まじいものだった。
シルク曰くきっとロイドより強い。その言葉にロイドはただただ体が打ち震えていた。
四神隊という存在から鑑みてシルクの言葉にきっと間違いはないのだろう。そう考えたロイドはその人物へと不意うちをしかけた。
その結果は敗北。しかも相手に本気を出させることもなく。
――この、僕が?
それはロイドに悔しさを覚えさせる以上に、嬉しさを感じさせるものだった。
「これからよろしく頼むよ!」
この時のロイドの笑顔はかつてなく輝いていたことだろう。
そして、それからロイドはまた充実した日々を迎えることになる。
まるで幼少の頃に光神隊に所属することを憧れた時のように。
天性の魔法の素質を持つ王族の少女。その幼馴染として、友人としても胸を張って隣にいられるようにいようと気合を入れた時のように。
――強く……もっと強く!
ロイドは日々を送る。
新たな友人を目標として。




