↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怠慢なラスボスに転生した俺、敵国に亡命して成り上がる  作者: WING
第5部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/37

27話:氷の姫君Ⅱ

 お城って、なんでああも威圧感あるの?


 門をくぐった瞬間、俺の胃が「またかよ……」って悲鳴あげていた。

 ちなみにリリアはというと、何度か来ているはずなのに目を輝かせてキョロキョロしていた。


 おい、遊園地じゃないぞココ。そういうのはせめて王様の前だけでもやめとけ。頼む、ほんと頼む。


 で、俺たちはそのまま、玉座の間へと案内された。

 あー、懐かしい。あの玉座、地味に座り心地悪いんだよな。腰が変になる。


 ――って、おいおいおい、何ノスタルジー感じてんだ俺。


「よく来てくれた、アルクス大尉。勇者の育成、よく努めてくれた」


 ――うわあああ来たぁあああ! 二度目の謁見ぃぃぃ!


「い、いえ……まだまだ未熟者ですが、精進しております」


 謙遜! ここはとにかく謙遜ッ! うっかり調子乗ったこと言うと面倒ごとに繋がり兼ねない!

 日本人たるもの、何事においても謙遜すべき。


「ふむ……だが、報告を見た。第三師団の訓練成果、目覚ましいものがあるというではないか」


 うぐっ、師団長が余計なとこでアピールしてるうぅぅぅう!

 ああもう、余計なフラグ立てないでほしい!


「……それは、日々の師団長の指導の賜物かと」


 なあ、師団長、こっち見てニヤつくのやめてもらっていいですか? 怖いから。


 すると、王はリリアへと視線が向けられる。


「どうしてリリア殿が一緒なのだ?」

「それは私からご説明いたします。彼女は――」


 師団長は、リリアがいる理由を説明する。

 程なくして、王はリリアを見た。


「リリア殿。相手は魔物などではなく、人なのだ。覚悟はできているのか?」


 王の言葉に、リリアはビクッと肩を震わせるも、真っすぐと目を見つめて返す。


「はい。覚悟はできています。それに、見過ごすことなんてできませんから」


 国王はしばし無言でリリアを見つめていたが、やがてゆっくりと頷いた。


「そうか。ありがとう。期待しておる」

「は、はいっ!」


 よし、このまま平穏に終われ、この場の空気よ、頼む!


 ――コン……。


 扉が開かれた瞬間、部屋にひときわ冷たい空気が流れ込む。

 その空気を支配するように現れたのは、氷のような気配を纏い、見る者の目を一瞬で引きつける存在。


 ――システィア=エルヴァーリア、王国の第一王女。


 長く、しなやかな青い髪が、まるで夜空を流れる星河のように、静かに背中まで伸びている。

 その髪の一本一本が、光を受けて微かに輝き、どこか神秘的な印象を与える。

 彼女が歩くたびに、その髪が優雅に揺れ、氷のような冷徹さとは裏腹に、どこか儚さを感じさせる。


 金色の瞳は、鋭く、しかしどこか悲しげな深さを湛えていた。

 その瞳が俺を捉えると、まるで全てを見透かされているような感覚に襲われ、思わず息を呑む。

 彼女の美しさは、ただの外見にとどまらず、その存在そのものが圧倒的で、俺の心を揺さぶる。

 彼女が口を開くと、その声は冷徹でありながらも、どこか儚げで優雅だった。


「お呼びでしょうか、父上」


 氷の姫君。公式が推してくるガチヒロイン。

 その姿を見るだけで、胃がキュッてなる俺。うん、今キレイにひっくり返った。


「ああ。丁度よいところに来た。話していた護衛の件だが、彼が、しばらくそなたの護衛を務めることになる、アルクス大尉だ。噂くらいはシスティアも知っているだろう?」


 紹介、来た。

 しかも、「俺が護衛を務める」って……事後報告かよ!


 ……え? 俺って王族の間にも噂流れているの?

 うっそだろ?


 システィアは一瞬だけ、じっと俺を見た。

 あの視線。懐かしすぎるぞ、この感覚。帝国にいた時にも感じた、全てを見透かすような黄金の瞳。

 頼む、俺が帝国の皇子だってバレないでくれよ!


「……初めまして、アルクス大尉。以後、よろしくお願いします」


 そう言って、丁寧に一礼された。


 えっ。


 えっ……え? 反応、薄くない?


 てっきり「貴方は……あの時の……」とか来ると思ってたのに!?

 もしかして、覚えてない? 記憶力設定、盛られてたんじゃなかったの!?


 いや、待て待て。それで油断してヘマしたら、一番ヤバいやつだ。

 絶対この姫、後で「最初から気づいていました」って言ってくるタイプだから!


「……こちらこそ、光栄です、王女殿下」


 冷や汗を隠しつつ、俺は精一杯の礼を返した。


「それと、もう一人」


 王の視線が、リリアに向けられる。


「彼女も、そなたの護衛に加わることになっておる。先日の宴でも顔を合わせておるな」

「はい。覚えております」


 ――なにこの差!?


 俺のことは名前すら出さずにスルーしてたのに!? え、俺、影薄いの? もしかして、俺だけ立ち絵がないタイプのモブ? ラスボスなのにそんな設定、納得いかないんですけど!?


 と、心の中で暴れている俺を尻目に、リリアが元気よく頭を下げた。


「改めまして、システィア王女殿下。リリアです。ご一緒させていただくこと、光栄です!」


 うん。態度が完全に小学校の遠足で班長任されたときのテンション。

 いい子だなー。……いや、ほんと、いい子すぎて胃が痛くなる。

 システィアはリリアをじっと見て、ほんのわずかに、目元を和らげた。


「……頼もしい方がそばにいてくれるのは、ありがたいことです。よろしくお願いします、リリア」


 あ、これ、俺のときより優しい声だった。完全に気のせいじゃない。

 やっぱ俺、嫌われてる説あるな。なに、あのときの謎の「自由ですね」発言、俺への嫌味だったの?


 俺が内心で地味に傷を抉られていると、王が場を締めた。


「アルクス大尉、リリア殿にシスティアの護衛を命ずる。くれぐれも、不足なきように」

「「はっ!」」


 俺とリリア、息ぴったりで敬礼。


「護衛は明日からお願いしよう。兵舎からでは何分遠い。城内に部屋を用意しておこう」


 ……城内生活、決定。

 うわぁぁぁあああああああああ。

 いやいやいやいや。ちょっと待って!? 今、さらっと流されたけど、めちゃくちゃ重いから!?


 なに「部屋を用意しておこう」って。軽っ! お城って、そんなノリで住める場所じゃないから! 俺、元だけどノイアス帝国の皇子だよ!? 亡命者だけどね!


 心臓に悪いどころか、もはや心臓に罰ゲーム。

 ついでに胃も追加でダメージ食らっている。なんなら胃と肝臓で綱引き始まってる。

 リリアはというと、横で小さく「はいっ……!」とか言っていた。うん、明らかに緊張している。


 さすがにお城常駐となると、空気が違うんだろう。だが、俺のほうが1.5倍はキてる自信ある。なにせ、帝国の皇子って身バレしたら詰むんで。

 最悪、拷問行きだろう。


 まあ、拷問される前に帝国の内情を曝け出すがな!


 そんなこんなで翌日。

 リリアと一緒に、兵舎から荷物をまとめて王城へ移動。

 途中、第三師団の連中が「頑張れよ!」って手を振ってくれたけど、内心では「俺の胃に黙祷」って感じだった。


 で、城の中に案内された俺たちは、それぞれの部屋に通されたんだが――


「え、これ……俺の部屋!?」


 広い。無駄に広い。豪華。なんか……カーテンとかフワッフワしてる。

 あの兵舎の、ベッドの下から謎の靴下が出てきてたあの部屋とは天地の差。


 リリアも隣の部屋に通されて、「すご……天井にシャンデリアって、本当にあるんだ……」って感動してた。

 いや、それよりも感動すべきは、風呂場に金ピカのアヒルがあったことだろ。誰だよ置いたの。

 でもまぁ、これくらいなら……って思ってた、その矢先。


「アルクス大尉。王女殿下がお待ちです。こちらへ」


 ……は?


「え、あの、何がこちらへなんですかね? 今お待ちって言いました? 待たれてるの、俺!?」

「はい。王女殿下の部屋へ、同行を」


 ま っ て 。


 なんで俺、護衛初日にいきなり王女の部屋に直行なの!?

 てっきり控室とか詰所でいいのかと思ってた! なんでピンポイントに主室行き!? 

 心の準備が、胃の準備がまだ……!


 案内役の近衛騎士、無言で歩き出した。


 で――案内されてきました、王女の部屋前。


 ここが……氷の姫君の住処……!


 やばい、空気が冷たい! 気温じゃない、雰囲気の冷たさ! 精神が凍える!


「アルクス大尉、どうぞ」


 帰っていいですか? はい、ダメですよね。

 扉が開く。


「……失礼、いたします……」


 入った瞬間、視界に広がるのは、格式と品に満ちた空間。そして、窓際で本を読んでいたシスティア王女の姿。

 あっ、絵になる。背景にしても溶け込むってどういうことだ。


「ようこそ、アルクス大尉。リリア様」


 そのまま振り返って、涼やかな声でそう言われた。


「今日からよろしくお願いします」


 あ、今、胃の奥で「終わった……」って声がした。


 王女の部屋に出勤とか、どんなホラーより怖いんですけど!?


「……よ、よろしくお願いいたします」

「よろしくお願いします!」


 リリアは元気である。うん、さすが主人公。


 こうして俺の護衛任務が始まった。


 頼む、誰か俺に胃薬と、ついでに身代わりの護衛寄越してくれ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。