プロローグ
新作です。
11万字書き溜めしました(疲れた)
プロローグ、エピローグを含めて全37話となります。
楽しんでいただければ幸いです!
目が覚めた瞬間、俺の頭の中はパニック一色だった。
見知らぬ天井。それだけならば、病院だと察することが出来たのかもしれない。
しかし問題は、病院にしては柔らかすぎるベッドと、天蓋付きの豪華すぎる寝台、そして鏡に映る金髪碧眼の美少年。
「え、だれ?」
言っとくけど、俺はおっさんで、こんなにも美少年な訳がない。
いや、正確には元・日本のしがない社畜、二十五歳。気づけばトラックに撥ねられて、目覚めたらこのザマだ。
そう。俺は理解したくなかったのだ。
目が覚めた瞬間、脳内に自然にインストールされたこの記憶に。
自分の名前が【アーク・ノイアス】であることに。
つまり、これは転生だ。異世界転生。
それだけなら、まあ最近よくある話で済ませることもできたかもしれない。
だが問題は、その転生先。
怠慢なラスボスこと、ノイアス帝国の第一皇子アーク・ノイアス。
あのクソゲーと名高いRPG『Regalia of Fate』の、ラストでぽっと出してくるクセに弱すぎて話題にすらならなかった、あの残念ラスボスじゃねぇかッ!!
ここで軽く『Regalia of Fate』の世界を説明しておこう。
このゲーム、ファンタジーRPGで、ストーリーはまあ王道――帝国と王国が争っている中、勇者が現れて世界を救うってヤツだ。
で、俺が転生したラスボス「アーク=ノイアス」は、帝国の第一皇子にして、魔力適正はチート級。
本来なら超絶強くなるはずだった。……が、怠慢な性格のせいで一切努力せず、勇者にあっさり倒されるっていう、なんとも残念なボス。
プレイヤーからは「ラスボスの風上にも置けない」って罵倒されてた。
悲しいことに、俺もその一人だった。
で、今、その本人に転生してしまったワケだ。
つまり、努力しないと勇者にぶっ飛ばされてゲームオーバー確定。
「……いや、ふざけんなよマジで」
まさか、自分が転生先ガチャで“ハズレ”を引くとは。
よりにもよって、ゲーム中でもプレイヤーにネタにされてた奴だぞ?
RTA勢からは「ラスボスくん、初手から寝てるから三ターンで沈む」とまで言われていた。
──そのキャラに俺、なってます。
この身体の記憶はあるので、現在は八歳。十数後、俺は――
「このままだと、主人公に殺される……」
俺はベッドの上で小さく震えていた。
普通の異世界転生なら、のんびりファンタジーライフとかチートで無双とかあるかもしれないが、これは違う。ゲームの世界なのだ。
原作の通りにいけば、俺は十年後、勇者にあっさり斬られてエンディングだ。
「いやいやいや、そんなの冗談じゃねぇ!」
なまじゲームをやり込んでいたせいで、自分の未来がはっきりわかってしまうのがつらい。
俺は死にたくない。むしろ、生きていたい。できれば、ぬるく、楽しく、そこそこ安定した生活をしたい。この皇子という立場も、王位継承権も手放したい。
それにはどうすればいいか。
──破滅ルートを全力で回避するしかない。
ってことで、俺はまず子供の頃からコツコツ鍛錬を始めた。
見つからないように夜中にこっそり体を鍛え、図書室の奥で魔導書を読み漁る日々。
使用人の目を盗んで、森の中で魔物と軽くスパーリング。
剣術、魔術、筋トレ、瞑想、馬術、礼儀作法、ついでに料理まで。
将来のスローライフのために、生活スキルも手を抜かない徹底ぶり。
しかも、こちとらラスボス。
ポテンシャルは本当にエグい。公式が「ポテンシャルだけはチート級」とお墨付きをもらっているのだ。ゆえに、ガチでやったら、トレーニング用の剣が三日で折れた。
魔力もチート級ゆえにヤバい。火の玉一発で屋敷の裏山が一つ蒸発し、ちょっとした事件になった。
「ちょっと……控えめにやらないとマズいな……」
本気出しすぎると正体がバレる。
気づけば、俺は「変に静かな子」として有名になっていた。
違うんだ。目立ちたくないんだ。隠密スキル全振りなんだよ!
そして、準備は着々と進む。
そして十二歳。
帝国の教育機関――名ばかりの「戦争準備塾(俺呼称)」にぶち込まれた。
戦術? 政治? 戦闘訓練? 全部やらされた。普通なら泣く。
でも俺は違う。知ってるからな、ゲームの設定。
この教育機関の数年後、俺は「何も学んでないクズ皇子」として無能認定される。
それじゃあまりにバッドエンド直行なので――
「ふふん……中間試験で全教科トップ取っちゃいましたっ☆」
結果、「完璧すぎて逆に怪しい」と教官からマークされる。
違う、頑張って努力しただけなんです。てか俺の人生かかってんですよ。
で、十五歳のある日。
ついに来た。例の帝国の暗部に気づくタイミング。
原作では明かされなかったが、裏設定で「帝国は魔王と手を組んでいる」んだ。
俺の父親である皇帝、ガチで大陸統一狙ってる。
しかも、自分の息子(俺)を「戦争に負けた時の自分の身代わり」にしようとしてるっていうじゃない。
「はい、亡命決定~~~~!!!」
こうして俺は帝国からの逃亡を計画。
偽の身分証と、魔力抑制の魔道具を作り上げ、夜中に脱走。
目的地は、ノイアス帝国の敵国であるエルヴァーリア王国。
原作では勇者たちの拠点であり、正義側の国だ。
そのうえ、国としてもそこそこ寛容で、身分と出身地を隠せばなんとか潜り込める可能性が高い。
あとは、身分を偽って王国軍にでも入って、地道に功績積んで……
最終的には静かな田舎で、野菜育てて暮らしたい。
「いける。いけるぞこれ……!」
俺は未来を信じ、身を隠しつつ国境を越える。
◇ ◇ ◇
「――名前は?」
「アーク……じゃなくて、えーと……アルクスです」
俺は身分を隠して、エルヴァーリア王国の兵士に志願した。
どうして兵士なのかだって?
だって、安定した収入が得られるからだ。
「魔力適正のランクは?」
魔力適正とは、この世界における戦闘力の指標。SS~Eまでランクがあり、その者の強さを示唆する。
「魔力適正? BですB! 全然大したことないです!」
「い、いや。Bでもかなり高い方だぞ? まあいい。それで、出身地は?」
「出身地? 辺境の寒村です!」
「辺境からわざわざ兵士に志願しにきたのか?」
まずい、疑っているのか⁉
「その日暮らしなもので、誰かは出稼ぎに行かないとなので」
「その年で苦労しているんだな。大したものだ」
「は、はははっ」
もう一人が俺の顔をジッと見る。
「お前、皇子みたいに顔が整っているな」
俺の容姿は魔道具で黒髪黒目に変えているが、元が整い過ぎていたのでそれは誤魔化せない。
「皇子? ははっ、そんな貴族みたいな顔してます?」
「ああ。羨ましいよ。もういいぞ」
「ありがとうございます!」
……こうして俺は、過去を完全に隠し、第二の人生――いや、生存ルートに突入したわけだ。
だが、世の中そんなに甘くない。
入隊して数週間、周囲からこんな声が上がるようになった。
「アルクスさん、あの怪物一人で倒したって本当ですか?」
「訓練で教官より強くない?」
ちょっと待て。ちょっと本気出しただけだぞ⁉
ステータスの一割も使ってないのに、なんでバレそうになってんの⁉
――俺は心の中で絶叫した。
「いや、お願いだから平和に暮らさせてくれ!!」
でもまあ、ここから先も、もっと色々と面倒なことに巻き込まれるのは知ってる。
だって、原作知ってるからな……主人公が勇者になるのも、魔王が動き出すのも、ノイアス帝国が宣戦布告してくるのも全部。
けれど、俺は決めている。
もう怠慢なラスボスじゃない。破滅エンドはごめんだ。
なら、どうするか?
――努力して、最強になって生き延びるしかないだろ。
よし、今日も筋トレだ。隠れてな!
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