精霊使いの特典
「精霊使い様は、一つの国に二人もいれば、強国として見なされるほど貴重な称号なんです。
どんな大軍が来たって、やっつけてしまう、とっても強力な魔法を使うことができます!」
マナちゃんらしい説明で、とても微笑ましかった。
とにかく、貴重で、すごい! って事なんだろう。
「それから、どんな位の低い人でも、その国に忠誠を誓えば、爵位がもらえるんです! 下層の平民だとしても、それは変わりません!」
「爵位? 貴族になれるってこと?」
「そうです! でも、まずは、国の為に戦果を上げることが条件になりますかね」
「じゃあ、戦果をあげて、忠誠を誓ったら、自動的に、爵位が与えられてしまうってこと?」
「そうです!」
戦果を上げて、忠誠を誓うつもりだったが、貴族になるつもりはなかった。
あんな面倒な職業? はごめんだ。
異世界に飛ばされたからといっても、世界を救う勇者になるつもりは無い。
悠々自適なスローライフも嫌だ。
悩ましいラブロマンスは期待したいところだが、希望としては、誰かに雇われて、給料稼いで、そこそこ裕福な生活していければいいと思っている。
「マジかー」
「貴族様になれるんですよ? 嬉しく無いんですか?」
「……マナちゃんは貴族になりたいの?」
「え? ……いやいや、私なんかじゃ勤まりませんよ」
マナちゃんは、慌てた様に手を振って否定する。
「でしょ? 俺も同じだよ。誰かの面倒みるなんて、まっぴらごめんさ!」
「ふふふ。ナカジマ様は面白い方ですね!」
「でしょ? こうやって、マナちゃんと笑いながら話しだってできなくなるかもしれない。
そんなことになったら、僕の人生における損失は計り知れないね!」
「ふふ。ありがとうございます!」
もう、可愛くて、可愛くて、どうしようもないな!
「ところでマナちゃん。……もし、どこでも自由に働く場所を選べるって言われたら、誰の元で働きたいと思う?」
『マナちゃんが選ぶ貴族であれば、割と信頼が置けるだろう。
そして、入念な身辺調査を行なって、問題なければ、取り入る隙がないか探る。
貴族になる前に、どこかの貴族に雇われてしまえばいいのだ!』
「え? そんな……選べません! 今のお仕事ができるだけでも幸せですので……」
「あー、そうだよね。ごめん。じゃあ、マナちゃんから見て、優しそうな貴族の人っているかな?」
「皆さんお優しいですよ?」
『クソ! ガードが硬い……。もしかしたら、ノーガードかもしれないところが憎らしいが。
マナちゃんの性格が良すぎて、聴きたいことが聞けない!』
こんな噂話的なものは、井戸端会議で散々話題に上がっているだろうに!
他のメイド達が、全員こんな性格ということはないだろう。
であれば……
「じゃ、じゃあ、他のメイドのみんなから、評判が良い人って、誰かな?
なんか、優しくされたとか、うるさいこと言わないとか、怒らないとか、そんな感じの人って、いるかな?」
「そうですね……他のメイドの皆さんは、シモン伯爵のことは、好意的に捉えている様ですね。
ナカジマ様がおっしゃっているような話も、割と多かったと思います」
「シモン伯爵……どんな人?」
「そうですね。とにかく、怒ったりはしないですし、誰に声をかける時もお優しいです。
そして、いざ戦争になれば、勇猛果敢に戦果をあげる素晴らしい方です!」
「それは……凄いね! そんなに凄いなら、みんなそこで雇われたいって思うんじゃない?」
さっきした質問で、即答されてもおかしくないほど、雇われたいランキング上位ランカーだと思うのだが。
「いえ……その……」
マナちゃんが、言いにくそうにモジモジとしている。
今までのプラス面を、吹き飛ばすような問題があるのかもしれない。
調べていけば、わかるのだろうが、マナちゃんに聞ければ、それに越したことはない。
ここはひとつ、マナちゃんにはもう少しお付き合い願おう。
「どうしたの? 誰だって、ひとつや、ふたつ、欠点はあるもんさ!
それを言いふらしたり、馬鹿にしたりはしないよ。
ただ、その人を知る上で、嫌なことに目を背けちゃいけないと思うんだ。
だから、どんなことでもいい。教えてくれないかな?」
まあまあの誘い文句だっただろう。
悪口を言うわけでは無い。その人を知るためには、どんな情報も価値はある。
なんて、どっちかといえば、負の情報の方が大事なのだが。
優しいマナちゃんには、悪口を言え、なんてこと言っても辛いだろう。
あくまで、交友関係を良いものにしたいから、って大義名分を掲げることが大事なのだ。
「そう……ですね。あの……シモン伯爵は、お金に関して、ちょっとというか、だいぶ大雑把な面がありまして……」
「例えば?」
「お給金が、支払われなかったこともあるそうです。
また、逆に、使い切れないくらいお給金を支給されたこともあるみたいなんですが……」
「金勘定が、得意ではないってこと?」
「いえ、「金は天下の回りもの!」っていうのが口癖で、あればあるだけ使ってしまうらしいです」
「それは……なんとも気前の良い話だね」
「はい。ですので、安定を求めた場合、シモン伯爵に仕えるのは、皆さん躊躇ってしまうのです」
「なるほどね……」
マナちゃんから聞いた、シモン伯爵という人物。
どうにも、江戸っ子気質の粋な人生を送っている親分らしい。
でも、これはこれで、好都合かもしれない。
いや、むしろ、これ以上ないくらいの良物件だ。
俺は、そうそうに会わなければならない、と、そっと狙いを定めた。
江戸っ子貴族!
既出かな?




