表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中島戦記  作者: 大きな鯨
10/11

精霊使いになった日

 俺は今、城下で行われているお祭りに来ている。

 ニナさんに連れ出され、食べ歩きの最中だ。



「ナカジマ! あれも食べよう!」



 ニナさんは、僕の腕をグイグイと引っ張り、美味しそうな物を見つけては買い漁っている。


『どんだけ食うんだよ……』


 これでもう十軒目だ。

 この人の胃袋はどうなっているのだろうか?



「ナカジマ! あそこに美味そうな肉がある! 確保だ!」


「いやいや、ニナさんどんだけ食うんですか! これ以上は控えた方が良いですよ!」



 ニナさんは、愛らしいキョトンとした態度で俺を見る。

 まるで、幼女が言動を理解出来ない時にする様な、そんな仕草で、僕のハートを打ち砕きにかかる。

 なんでもお願いを聞いてしまいそうだ。



「ナカジマは何を勘違いしているんだ? これは命令だぞ?」



 浮かれ切った僕の心を射止めた矢には、爆弾が仕込まれていたようだ。

 僕の砕け散ったハートは、浮遊する埃のようにスルーされる。



「イエス、マスター……」


「んじゃ、宜しくね!」



 そう言って、ニナさんは小銭を僕に手渡す。

 その時触れた、手の温もりだけが、僕の救いだった。



「すいません。この串焼きください!」


「あいよ!」



 店主から渡された串焼きは、大き目にカットされた肉と、香味野菜が交互に配置れてる。

 ネギマの様だが、サイズ的には牛串だ。

 それを、ちょっと焦げ目がつくまで焼いた、ザ屋台料理といった感じ。

 肉の荒々しい香りと、独特な香味野菜の香りが絶妙にマッチし、間違いなく美味いとわかる。



「ニナさん。買ってきましたよ……」


「あひあほー。ほんほはあっひね!」



 いつのまにか、両手に食べ物を持ち、食いながらも次の食い物に狙いを定めている。



「あの……本当に、そんなに食べて大丈夫なんですか?」



 これは、冗談ではなく、本気で心配になってきた。

 もう、ほとんどフードファイターだ。



「んっ、ゴク。ふう……大丈夫に決まってるでしょ? グズグズしてると売り切れるわよ! 黙って買ってきなさい!」


「……はい」



 僕が思い描いていた、女性とのお祭りデートはこんな感じではなかった。

 もっと、手が触れては恥じらう様な……少女漫画の様な初々しさを夢見ていたのに……。

 僕の初デートは、デートとは程遠い、食い倒れ観光の使い走りとして終わってしまった。



「あー、美味しかったー! 満足、満足!」



 お祭りに来たのだから、そこは普通、「楽しかった」じゃないだろうか?

 僕は、ニナさんの斜め後ろを歩きながら、心の中で、小さく突っ込む。



「そうそう、明日は今日楽しんだ分、授業はハードにいくからね!」


「え? ……はい、宜しくお願いします」


「じゃあ今日は、明日のために、ゆっくり寝て、しっかり疲れを癒しなさい。じゃあね!」


「はい。ありがとうございました」



 屈託のない眩しい笑顔が憎らしいニナさんを見送り、使い走りでヘトヘトになった体を癒すため、僕は、与えられた宿舎に戻る。



 ***



「あ、ナカジマさん!」



 宿舎に戻ると、清掃メイドのマナちゃんが話し掛けてきた。

 ニナさんの様な美貌は無いが、笑顔が可愛い元気な子だ。

 この宿舎の清掃を担当している。

 僕が最初にここへきた時、メイド暴行容疑のかかった囚人だったにもかかわらず、マナちゃんはとっても優しく対応してくれた。

 不安しかなかった異世界生活に、希望の光を与えてくれたマナちゃんは、僕の心の天使だ。



「あ! マナちゃん、ただいま」


「おかえりなさい……ませ!」


「ん? どうしたの?」



 いつもは敬語なんて使わないのに、今日はどうしたのだろうか?

 取ってつけた様な言動に違和感を覚える。



「あの、精霊使い様になったんですよね! ナカジマさ……様が、こんなに凄い人だったなんて、びっくりしました!」



 そう言えば、今日、精霊使いになったんだった。

 この世界では、随分と精霊使いと言うだけで、もてはやされている様なのだが、いまいち実感が湧かない。



「ああ、自分でも驚いたよ。精霊使いが増えたってだけで、国を上げてのお祭り騒ぎなんだもん。

 もしかして、精霊使いって、結構凄いの?」



 ちょっと調子に乗っているみたいな感じになってしまったが、こんなことを聞けるのはマナちゃんしかいない。

 ニナさんに、いくら凄い事だと言われても、いまいちピンと来なかった。

 っていうか、あんまりニナさんの言動を信じていないだけなのかもしれない。



「あの……ナカジマ様。精霊使い様ですよ? 本当に知らないんですか?」



 マナちゃんの視線が痛い……。

 異世界転移とか言ったら、もっと怪しまれてしまいそうなので言えないが、この反応を見るに、カトリックに生きる者が、ローマ法王を知らないってくらいな感じなのだろうか?

 だけど、知らないものは知らない。

 ここは聞かぬは一生の恥として、なんとしてもマナちゃんから聞き出さねばならないだろう。



「本当に知らない! ……ごめんなさい」



 堂々と言い放ち、白々しくも、大真面目にシュンとする。

 マナちゃんの優しさを弄んでいる様で心苦しいが、マナちゃんなら大丈夫だろう。



「あ……いえ、そんな……。私をからかっていると思ったんです。こちらこそ、疑ってしまって……ごめんなさい」



『ヤバイな……これは非常にヤバイ。本当にマナちゃん可愛い。なにこの純粋無垢な感じ。守ってあげたいランキング、特別優秀賞もんですわ』


 ゲスな思惑で、都合のいい扱いをした自分を棚上げにして、マナちゃんの可愛さに見惚れていた。



「あ……あの。ナカジマ様?」


「ん? ああ、ごめん。マナちゃんが可愛くてつい見惚れてた。全然気にしてないから、精霊使いについて教えて!」


「あぁあ……はい!」



 マナちゃんは慌てふためくと、顔を紅く染め、下を向きながら返事をする。


 ……どうしよう、可愛いが止まらない!

 これから教えてもらう立場でありながら、マナちゃんの説明をちゃんと聞けるかとても不安だった。


あれだけ感想を、感想を! と前話でせびったので、もしかしたら……とドキドキしていました。

GW中、今日こそは! 今日こそは! と覗いていましたが……。


皆さま、僕は読んでいただけているだけでも幸せですので、どうか、これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ