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第一章 コンビニの勇者

神様のコタツ部屋と、中指立てての異世界転生

俺、力武義正りきたけ よしまさ、25歳。

五大商社の一つで、鉄鋼部門のエース……なんて呼ばれていたのは昨日の話。

今はちょっとした有給消化中で、深夜のファミレスでコーヒーを啜りながら経済新聞に目を通していた。

「ふぅ……」

ブラックコーヒーのおかげで、少し尿意を催した。

席を立ち、トイレのドアノブを引く。

ガチャッ。

「……は?」

開けた先は、便器でも洗面台でもなかった。

四畳半ほどの畳の部屋。

中央にはコタツ。

そして、芋ジャージに健康サンダルを履いた女が、缶ビール片手にテレビを眺めていた。画面の中では、派手な衣装を着たイケメンアイドルが歌って踊っている。

「あ、ごめ~ん。くしゃみしたら、地球とアナスタシア世界が繋がっちゃったわ」

ジャージ女は、ティッシュで鼻をかみながら振り返った。

驚くほど整った顔立ちだが、醸し出すオーラが完全に休日のオッサンである。

「な、なんだ!? ここは?」

「ん? 私は女神ルチアナ。ってことでぇ……暴走トラックに轢かれそうになった猫を助けた義正君の善行に感動しました! この女神ルチアナが、アナスタシア世界に転生する機会を与えましょう!」

パンパカパーン、とルチアナが口でファンファーレを鳴らす。

「……ね、猫? トラック? おいおい、ババア。急になにを言ってやがる」

「ババアちゃう! 永遠の17歳よ!!」

ルチアナがバンッとコタツを叩く。

みかんが転がった。

「だいたい俺はファミレスで新聞読んでただけだ! トラックも猫も見てねぇよ!」

「細かいことは気にしないの! ほら、異世界モノのお約束ってやつだから!」

女神はズカズカと俺に歩み寄ると、どこから取り出したのか、商店街の福引きでよく見るガラポン(抽選器)をドンッと押し付けてきた。

「良いからガラポン回して! さっさとチート能力決めるわよ!」

「……チッ」

俺は苛立ちながら、胸ポケットから『赤マル』を取り出して火を点けようとしたが、女神の圧力に負けて仕方なくガラポンを回した。

ガラガラガラ……ポンッ。

出てきたのは、金色の玉。

「おっ! 金賞じゃない。アンタのユニークスキルは……『コンビニ』ね」

「……は? コンビニ?」

「そう。コンビニの店舗と、中の品物が自由に出せるスキルよ。良かったわね!」

女神はパチパチと拍手をしている。

俺の頭の中で、これまでの商社マンとしての苛烈なキャリアと、「いらっしゃいませー、温めますかー?」とレジを打つ自分の姿が交差した。

「ま、まさか……俺に、異世界でコンビニバイトをさせる気かあああ!?」

「店長かもしれないわよ?」

「ふざけんじゃねぇぇ!! 俺は最難関の国立大出て五大商社に入ったエリートだぞ! なんで異世界に行ってまで廃棄弁当の管理しなきゃならねぇんだ!!」

怒号を響かせる俺の足元が、急に光り始めた。

魔法陣だ。

「あ、転送始まるわ。良いから良いから。あっちの世界は剣と魔法で物騒だけど、せいぜい頑張ってね~。じゃあ、アナスタシア世界にいってらっしゃ~い」

「てめぇ……! ぜってぇ許さねぇからな、このクソニート女神!!」

俺は光に包まれながら、ルチアナに向けて思いきり中指を立てた。

「あ、推しの月人つきと君のライブ始まるから静かにしてー。キャー! 月人くぅぅん!!」

俺の罵声は、アイドルに夢中なジャージ女神に届くことはなく。

元エリート商社マン・力武義正の、理不尽極まりない異世界コンビニ生活が、ここに幕を開けたのだった。

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